「図る」という言葉。一見シンプルに思えるかもしれませんが、ビジネスの現場では驚くほど幅広く、そして奥深い意味を持っています。この言葉を的確に使いこなせると、単なる意図の表明を超えて、戦略的思考や具体的な行動を相手に伝えることが可能になります。
そこで、この記事では、辞書的な意味から日常のビジネス会話、さらにはメールでの活用法まで「図る」の多彩な使い方を解説します。これを読めば、「図る」を活用した表現で、より洗練されたコミュニケーションを実現できるでしょう。
「図る」の正しい意味と解釈
ビジネスにおける「図る」とは、表向きの計画や意思決定を指すにとどまりません。戦略的思考と組織運営の巧みな技術が求められます。まずは、「図る」の意味について確認していきましょう。
「図る」の意味
「図る」の意味を辞書で確認しておきましょう。
1 (図る・謀る)
(ア)物事を考え合わせて判断する。見はからう。「時期を―・る」「敵情を―・る」
(イ)企てる。もくろむ。「自殺を―・る」
2 (図る)
(ア)くふうして努力する。「再起を―・る」「利益を―・る」
(イ)うまく処理する。とりはからう。「便宜を―・る」
一部引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「図る」という言葉は、一見シンプルながらも、状況や文脈によって多様な意味を持つことがわかりました。ビジネスシーンにおいては多義語であることを生かしつつ、具体的な行動や戦略を示す表現として活用されます。
ビジネスで使う「図る」が持つ意味は、主に「計画を立てて実行に移す」ことや「状況を判断して適切に対処する」といったニュアンスが含まれます。例えば、以下のような文脈で使われることが多いでしょう。
目標達成を図る
組織やプロジェクトが設定したゴールに向けて戦略を立案し、それを実行するプロセスを指します。
(例)「業績向上を図る」、「市場拡大を図る」
効率化を図る
現状の課題を分析し、業務プロセスや資源配分の改善を試みる際に用いられます。
(例)「作業効率化を図る」「コスト削減を図る」
便宜を図る
主に対人関係や取引先とのやり取りにおいて、相手の利益や都合を考慮して配慮を行う際に使います。この表現は、柔軟に対応する姿勢を示す場面で重宝されるでしょう。
使う際の注意点
「図る」を使う際に注意したいのは、言葉が抽象的になりがちだということです。例えば「コスト削減を図る」と口にするだけでは、その意図は伝わりにくいでしょう。「どの領域で削減するのか」「どのような手法で実現するのか」を具体的に示すことで、初めて効果的なコミュニケーションが成立します。ですから「図る」を使う際には、具体性を示しましょう。
「図る」の言い換え表現や類語は?
「図る」の言い換え表現や類語には、文脈や使い方に応じてさまざまな選択肢があります。以下に例を紹介していきましょう。
目標達成に関連する場合
「目標達成を図る」などの文脈では、次のような言い換えが考えられます。
- 計画する
- 企画する
- 推進する
- 目指す
- 取り組む
例: 「事業拡大を図る」→「事業拡大を目指す」「事業拡大を推進する」
効率化や改善に関連する場合
「効率化を図る」「改善を図る」といった表現では、以下が適切です。
- 促進する
- 工夫する
- 改善する
- 改革する
- 向上させる
例: 「業務効率化を図る」→「業務効率化を促進する」「業務効率を改善する」
配慮や調整に関連する場合
「便宜を図る」「適切な対応を図る」などのニュアンスには次の表現が合います。
- 取り計らう
- 配慮する
- 調整する
- うまく処理する
- 融通する
例: 「顧客の便宜を図る」→「顧客の便宜を取り計らう」
ビジネスシーンでの「図る」の使い方(口語)
「図る」を会話の中に取り入れるには、どうしたらいいでしょうか? 具体例を挙げながら、説明します。
「新たなサプライチェーンの見直しにより、運用コストの削減を図っています」
この例文では「運用コストの削減」という具体的なゴールを示し、そのために「新たなサプライチェーンの見直す」という具体策が取られています。
「従来の業務プロセスを再評価し、ボトルネックを特定することで効率化を図ります」
従来の業務プロセスを見直し、課題(ボトルネック)を特定することで、業務全体をより効率的にすることを目指している点がポイントです。
「新製品のローンチについては、適切な時期を図りましょう」
この例文での「図る」は単にタイミングを決めるだけでなく、市場動向や消費者ニーズ、競合状況などを考慮しながら、最も効果的なタイミングを模索するというニュアンスが含まれています。