人見知りから研修職のリーダーに。常に誠実であり続けることは”いずれ自分に返ってくる〟と実感しています
今月の妻:下村唱子さん
日本生命保険相互会社・渋谷支社 育成センター・支社育成センタートレーナー・45歳
人と関わることで成長できた恩は、そのぶん新人育成で返したい
キャリアを積み重ねるほど、人は謙虚であることが難しくなる。しかし、生命保険会社で教育・研修を担当して約20年の下村さんは、秘めた熱を感じさせつつも腰が低く、人あたりがやわらかい。信条は、常に誠実であること。
「自分の行いは、いずれ自分に返ってくるもの。たとえ仕事が順調なときでも“不誠実なことをすればそれも自分に返ってくる”と考え、どんなときも謙虚な姿勢で誠実に取り組むように心がけています」と話す。
昔から人見知りでおとなしい性格だった。保険会社の営業職だった母の背中を見て育ち、親しみをもって同じ道を志した。責任感の強さから仕事はいつも実直にこなし、それが営業成績に表われて複数回の社内表彰を受けた。成果の理由は意外なところにあった。 「雑談が得意ではないので、営業に行ったらひたすらお客さまの話をお聞きしていました。事前に話のネタを考えたり、お客さまをよく観察して、席にある雑誌や写真について質問することもありました。私のしゃべりのつたなさが一生懸命さとうつって、信頼感をもっていただけたのではないかと思います」
上層部は、彼女の営業会話の工夫やヒューマンスキルに学んでもらうべく、入社4年目で営業部長の補佐として中間管理職的なトレーナー職に抜擢。世代やバックボーン、国籍も異なる中途入社の営業職員育成を任された。 「ところがある日、部下に深刻な顔で呼び出されたんです。“私が営業に行っても「下村さんは?」と聞かれるばかり。もう訪問する自信がありません”と。部下のためによかれと思ったサポートが否定された気がして、ショックを受けたのを覚えています。世話を焼きすぎていたんですね。ある程度任せて、成功体験を積ませることが大切なんだと反省し、それがいい分岐点になりました」 厳しくも懐深い、ほどよい距離感で指導するようになってから、かつての研修生たちとゆるいつながりをもつように。気がねのない会食の場で、近況を報告しあっている。
「もし、トレーナー職になっていなかったら会社を辞めていたかもしれません。自信を失ったとき、私のもとを卒業した部下たちに励まされて力をもらいましたし、上司にもたくさん関わってもらいました。そのぶん、今後は研修講師としてより多くの知識を培い、より頼られるリーダーでありたいです」 どんなときも手を抜かない努力家のスタンスは、今回の取材・撮影準備でも徹底された。同僚女性によれば一定期間食事制限を行い、ヘアサロンやエステにも足を運んでいたとか。「不安を打ち消すにはやっぱり、愚直に頑張ることがいちばんだと思っています(笑)」
Profile
しもむら・しょうこ/1973年、千葉県生まれ。短大卒業後、現在の会社に営業職員として新卒入社。新人ながら複数回、社内表彰を受け、23歳でトレーニングリーダーに抜擢される。以降、教育・研修担当として約20年で計7部署を担当。31歳で結婚。40歳でCFP(R)資格を取得。今年、渋谷支社・育成センタートレーナーに任命され約130名の営業職員研修に携わる。今いちばんの楽しみは、月1回のゴルフラウンド。
Domani2018年9月号『女[独身]、妻[既婚子供なし]、母[子供あり]Catch! 働くいい女の「水曜14時』より
本誌撮影時スタッフ:撮影/真板由起(NOSTY) ヘア&メーク/今関梨華(P-cott) 構成/谷畑まゆみ