「女性の」という言葉がなくなる日が来るために
――前回は、女性の成長を妨げる考え方や、日本企業に根強い滅私奉公型の働き方の弊害がわかりました。グロービスの林 恭子さんは、「男性シニアリーダーが働く女性のためにやっていることと、実際に働く女性がいいと思っていることに、違いがある」と言います。本当に有効な施策とは、なんなのでしょうか。引き続き、林 恭子さんの話を中心にご紹介します。
お話のポイント
・女性活躍の施策には、現実とズレたものも多い
・30代以下の男性の価値観に変化が起こっている
・独断型ではなく配慮型のリーダーシップが求められる
ロールモデルの女性採用は解決にならない?
「『女性が活躍できるためには、どういう施策がいいと思うか』を聞いた結果があります。これが面白くて、男性上司がいいと思ってやっていることが、働く女性からはちっとも評価されていないということが、けっこうあるのです。では、女性が有効だと考えている施策で、男性が気づいていない『隠れた宝』には、どんなことがあるのでしょうか。
□ 決定的な瞬間の適切なコミュニケーション
□ 評価、昇格時などのアンコンシャスバイアスへの注意
□ 社内の女性リーダーの見える化、発信
□ 組織内外の女性ネットワーク構築の支援
□ 専門的能力の開発プログラム提供
□ 男性従業員の巻き込み
(参考:BCGグローバル・ジェンダー・ダイバーシティ調査2017)
『決定的な瞬間の適切なコミュニケーション』とは、たとえば『妊娠しました』と言ったときや育児休暇から戻ってきたとき、上司がどう対応するかです。男性シニアリーダーが考える施策として出た『ローモデルとなりえる女性管理職の採用』も、いないよりいたほうがいいですが、実はあまり現場では評価されていません。誰かがとってきて埋めたところで、その会社の抜本的な問題解決にはならないのです。それこそアリバイづくりで終わっているということを、働く女性のほうはちゃんと見ているのです」
女性に仕切られる抵抗が少ない30代以下の男性
――では、本当に働く女性に有効な手は何でしょうか。林さんからは、5つの「追い風として期待したいもの」が紹介されました。
「現在は、家事代行育児サービスがどんどん出てきていて、料金も安く使いやすくなっています。家事の負担をなくすためにも、うまく利用していくといいですね。
テクノロジーの進化も大きな追い風です。業務の効率化が進みますし、リモートワークもやりやすくなりますよ。勉強においても、テクノロジーが進化したことで、隙間時間でもどこでもオンラインで勉強できるようになりつつあります。
それから、30代以下の男性の価値観が大きく変わってきています。女性に仕切られることの抵抗がないですし、むしろ尻に敷かれたい人が増えている気がします。また、育児や家事に積極的に参加されていて、このあたりは40代以上の方と大きな違いといえるでしょう。
逆説的ではありますが、大介護時代がこれからやってくることが、働き方の見直しにつながるといいなと思っています。ミドルやシニアの人々も、介護との両立のために柔軟な働き方を導入しないわけにはいかなくなりますし、すでにリモートワークや時差Bizを使っている方も、さらに自分自身の働き方を見直すことになると思います。
5つめに、時代に求められているリーダーシップスタイルも変わっています。変化の激しい時代では、独断型のリーダーシップは難しく、より配慮型のリーダーシップが求められるでしょう。個人の違いをわかった上で、その人たちが力を発揮できる環境をつくっていってあげる、そういうリーダーシップが求められています。そして、これが得意なのは女性に多いかもしれません」
――林 恭子さんが使った資料の最後のページは、こんな言葉で締めくくられていました。
「女性の」活躍推進、という言葉がなくなる日が早く来ることを願っています
これに対して参加者からは、「ワーキングマザーではなくて“ワーキングペアレンツ”という呼び方でいい」「今の若い世代は変わってきている」などの声も。働く現場では、いち早く変化を感じ始めているようです。参加者のリアルな声と、それに対する池永さん・林さんのコメントは、次回ご報告します。
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。10/5発売・後藤真希エッセイ『今の私は』も担当したので、よろしければそちらも読んでくださいね。CanCam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」、Oggi誌面では「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」など連載中。