仕事のアサインから雰囲気まで、育休明けの悩みはいろいろ
――国の施策を男女共同参画局局長の池永肇恵(としえ)さんから、企業の視点で林 恭子さんから、ワーママをとりまく環境の変化をお話しいただいた今回のイベント。実は小さなお子さんがいらっしゃるなど、様々な理由で来場できない25名の方がオンラインで参加されていました。
参加者からは、育休明けのワーキングマザーの質問が多数。
まず『育児休暇後、復職はするものの、仕事へのアサインが変わってしまうケースが多いと感じています。外資系ではどのように復帰後に働かれているのでしょうか?』という質問に対して、かつて外資系企業で働いていた林恭子さん(グロービス 経営管理本部長 マネジング・ディレクター。以下林さん)がお答えしました。
前回のお話は:「女性の」という言葉がなくなることが願い
お話のポイント
・復職時は、柔軟さと工夫で乗り切る
・年齢や性別、子どもの有無で括らず、ひとりひとりを尊重
見える化や工夫で柔軟に対応できる社会に
林さん「会社によってケースバイケースですが、どうしても時間的に制約が出ますよね。(かつて勤めていた外資系の)ボストンコンサルティンググループでは、ひとりに対して2本別々のプロジェクトをアサインするという方法が恒常的にありました。産休後の方はそのうち1本だけアサインし、稼働でいうと50%(プラス雑務があるので実際には60%ほど)で働くということを実践していました。
現在はその制度はないかもしれませんが、それ以外にも、ワーママでコンサルタントをやっていた先輩には、働く側とリーダーの間に立って第三者としてさまざまな問題解決をする、という仕事の仕方をしている方もいました。外資系だからということではなく、いろんな工夫の方法があると思います。
たとえば今、私が働くグロービスで取り入れている制度は、変形労働時間制と言って、月間でトータル時間数が決められた範囲内であれば、1日の勤務時間数も柔軟に変えられます。合わせてフレックス制度も取り入れていますので、事前に報告していれば早朝に出社して15時頃帰ることもできるし、お子さんが具合が悪いというときも、以前なら半日または1日の休みを取らなければならなかったのを、柔軟に時間を調整して働くことができます。すべては工夫次第かな、という気がしています」
――続いて、会場にいる参加者から池永さん、林さんへのご質問は『ワーママの昇格が絶望的なのですが、人事に働きかけるアイディアはないでしょうか?』となかなかシビアな問題。これに対して、ます池永肇恵さん(内閣府男女共同参画局長。以下池永さん)のご意見は…。
池永さん「昇格の条件(年数や業務内容)を、人事に改めて明らかにしてもらい、きちんと見える化することじゃないでしょうか。今まで当たり前に決められていたことでも、見直すべきことや代替えできる事項があるはずです。ワーママの昇格がなぜ遅いのか、そこに工夫の余地はないのか、人事に対してまたは担当する役員に、働きかける方法はあると思います。また、他社でうまくやっている例があれば、それを示して取り入れてもらうなども、効果的だと思います」
どんな立場でも「お互いさま」「おかげさま」
また、会場からは「出産で仕事を辞めることはほぼなくなってきたけれど、復帰するときの会社の雰囲気が気になる…」などの声も。
池永さん「独身の方や子どもをもたない方が、当たり前のように早く帰るママたちに対して複雑な思いを抱くこともあるでしょう。でもそれは、普段の人間関係だと思います。お互いに助け合う雰囲気、情報を共有する風土などを、まずは心がけてはいかがでしょう」
林さん「先日、あるワーキングウーマンのお話を聞く中で、考えさせられるコメントが出てきました。自分は女性で結婚もしてなくて子どももいないということに罪悪感を感じるというのです。職場で言われる『子どもがいない人は…』という言葉に、ハラスメントだと感じることもあると。
こんな居心地の悪さを解消するには、子どもがいるいないにかかわらず、ひとりずつみんな個性や違いを尊重する、ということだと思います。性別や年齢、子どもがいる・いないという括りではなく、それぞれを理解して、それぞれお陰さまだし、お互いさま。そういう雰囲気になるといいなと思います」
▲右/内閣府男女共同参画局長の池永肇恵(としえ)さん。1983年東大教養卒、1987年旧経済企画庁に入庁。2016年滋賀県副知事に。2018年7月より現職。
▲左/林 恭子さん グロービス 経営管理本部長 マネジング・ディレクター。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程前期修了(MBA)。米系電子機器メーカーのモトローラで、半導体、および携帯電話端末のOEMに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発、リテンション・プログラム開発、ウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ委員等、幅広く人材マネジメントを担当
――ワーキングママが働きやすい環境は、子どもがいる・いないにかかわらず、実はだれもが働きやすい環境でもあるということ。そこには、「ひとりひとりがみんな違って」「ひとりひとりを尊重する」という基本に立ち返ることが大切といえそうです。
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。12/28発売の『Domani』では働く女性10人にインタビュー。十人十色の生き方、ぜひ読んでください! ほかに、 Cancam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」、Oggi誌面では「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」など連載中。