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2019.03.02

『入社時に、“定年までこの会社で勤めたい”と感じた気持ちは変わっていません』女・妻・母〜働く女性の心のドラマ〜【小川真理子さん・後編】

大日本印刷勤務・小川真理子さんの母としてのアフターストーリー後編。忙しくなったことで、お子さんたちとちゃんと向き合いきれていないのが気になるのだとか…。

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谷畑まゆみ
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「その後の女妻母たち」への追跡インタビュー。【母】小川真理子さん(39歳)の後編をお届けします。

【母】小川真理子さん(39歳)
大日本印刷(株)研究開発センター 研究管理本部

前回のお話>40歳を前に異動を決断。もう一度フルパワーで働きたかったんです

この先のキャリアを考え、40代を前に時短勤務をフルタイム勤務に戻した小川さん。現在は会社全体の研究開発を担う組織で働き、より視野の広い業務を担当。通勤時間も大幅に短縮されて、駅伝部に入部したり社内で人手不足の部署があると聞けば積極的に手を挙げるなど、ワークも自分時間もよりアクティブに。そのため、最近は娘たちにちゃんと向き合いきれていないのが気になるのだとか…。

ゴールがあると行動がぶれない。言葉にして自分に響かせるとさらに明確になる

 

好きな仕事から離れてでも、通勤時間が削減できる環境でのフルタイム勤務を選択。その一方で、お子さんたちと向き合う時間が減ってしまったとのことですが。

家に帰ったら極力仕事はしないようにしているんです。でも、パソコンを広げてこそいないものの、どうしても“あの案件はこうしたらいいかもしれない”などと頭の中を仕事が占めていたりして、そうした意味で子どもたちとちゃんと向き合う時間が減っているような気がしています。以前とは違って、近所に住む実家の母に託して残業する日もありますし。

娘は今年で長女が小学4年生、次女は小学1年生に。よくよく考えるとこれまでは“お世話をすることでいっぱいいっぱい”だったのが、その時間が彼女たちの成長とともに少しづつ減ってきたから“向き合う時間が減ってしまった”と感じるのかもしれません。

ときどき、「ママ今日はすごく疲れているから、ふたりでがんばって」と頼むと、「うん」とうなずいてたくさんお手伝いをしてくれるんです。そんな姿を目にすると“私ががんばっていることをわかってくれているのかな?”と思えたり、“ああ、今日はイライラしなくてすんだ!”とほっとしたり。娘たちの成長が心のエネルギーになっているんですね。今私が仕事重視でやっていけるのは、彼女たちの成長や実家の母のサポートなど、家族や周囲の協力がそろわないと実現できないのだと改めて実感します。

お子さんとの関係性も成長とともに変化していくのですね。本誌取材時におっしゃっていた“定年まで働きたい”気持ちに変わりはありませんか?

そのあたりは変わりません。女性社員のダイバーシティ研修の一環で、1泊2日でキャリアプランを考えるセミナーに参加したことがあるんです。企業と大学の産学官連携で、世代や国籍も異なる女性が30人ほど集まって一緒にワークショップを行ったんですね。

そこで「自分の未来を宣言しなさい」という課題が出て、それまで考えてもいなかったことを2日かけて無理やりしぼり出したんです。けっこうしんどかったです(笑)。でもいざその言葉をカードに書き出してみたら、“そうか。やっぱり私、そこに行くんだ”とするっと腹落ちできたんです。

それが小川さんがこの先にめざしたいものだったと。

はい。「新分野や新事業で成果を出したい」という言葉を研修中にみんなの前で宣言した瞬間、自分のゴールが明確になりました。その先にあるものは私にとっては“定年まで働くこと”なんだと。文字に書いて可視化して口に出してみたことで、すっと視界が開けたんです。言葉にして自分に言い聞かせることの大切がわかりました。

そのとき書いたカードは今もスマホケースに入れています。もう頭に入っているのであまり読み返しませんが、スマホを見るたびに“あのときの宣言がここに存在してる”と意識できるんです。人はゴールがあると行動がぶれなくなるっていいますよね。私も“もしぶれちゃってもまたここに戻ればいいんだ”と、迷いがなくなりました。

“思考整理のメモ”が注目を集めていますが、やはり“思っていることの可視化”は大切なんですね。ここから3年後の自分に向けて何かメッセージを送るとしたら、どんな言葉になりますか?

3年後というとお姉ちゃんはもう中学1年生になっていて、下の子は小学校4年生。そのときの自分にメッセージを送るとしたら「子どもと向き合い、子どもの成長を喜び、ともに成長できていますか? 仕事では新しいことにチャレンジできていますか?」という感じでしょうか。

これから娘たちも反抗期になったり、受験で悩むかもしれません。ふたりの変化に寄り添えるように、今からちゃんと向き合っておきたいなと思っています。夫とも今のうちに相談が必要ですね。

仕事では、3年後もやっぱり何か新しいことをしていたいです。現状を維持して継続させることも確かに大切ですが、私は社会や時代の変化に対応できるようなよりよい方法やアイディアを模索して、常にチャレンジを続けていたい。そのうえで、ちゃんと成果を出せる人になっていたらうれしいですね。

▲小川さんが研修中に“宣言”を書いたカード。「自分自身がなんとなく思っていることを言葉にすることの大切さに改めて気づきました」

本誌掲載:2015年Domani12月号「女の時間割。」
撮影時スタッフ:撮影/嶋野 旭 ヘア&メーク/菊地かずみ(P-cott) 構成/谷畑まゆみ

テキスト

谷畑まゆみ

フリーエディター・ライター。『Domani』連載「女の時間割。」、日本財団パラリンピックサポートセンターWEBマガジン連載「パラアスリートを支える女性たち」等、働く女性のライフストーリー・インタビュー企画を担当しています。

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