日本では「共同親権」が認められていない
結婚前に聞いていた妻の経歴は全部ウソ。虚言癖があり、さらには買い物依存症で4千万円近くの貯蓄を使い込まれているのに気づいてそれを指摘すると娘を連れて逃亡…。
前回のお話▶︎「年齢詐称の逆ギレ妻に娘を連れ去られ、泥沼裁判へ」親権の行方は?〜由伸さんの場合vol.2
そんなA子さんと約3年の裁判を経てようやく離婚が成立した由伸さん。結局、子供を連れ去った方が親権を取れるという日本の法律によって、娘の親権は妻のものに。
由伸さんの話によると、諸外国では認められている「共同親権」という制度は日本ではまだ認められていないそう。「共同親権」があると、例えば離婚後に片方が再婚したあとも、血の繋がっていない新しい親が我が子を虐待していないかどうかを監視したり、子供の居場所を把握したりすることが可能になるため、離婚後の子供の暮らしを見守ることができるといいます。
よ:僕はずっと、「正しいことを裁いてくれるのが裁判」だと思っていましたが、そうではなかった。日本の法律というのは性善説で成り立っているものだから、悪意ある者が悪いことをしようと思えばいくらでも逆手に取ることができるんです。そのことを、今回の裁判で思い知らされました。
―これが今回の取材でいちばん私の印象に残った言葉でした。
出会いも、共通のバックグラウンドが全くないマッチングアプリなどではなく、一応飲み仲間の紹介だったのに、こんなことが起こるなんて。
由伸さん(以下、よ):連れ去りって、裁判で相談したりしてもどうにもならないんですよね。今回の裁判には莫大な費用がかかったし、中には裁判費用で破産する人もいるそうです。それで結局親権も取れずに娘には1か月に1度しか会えないなんて、めちゃくちゃな話だと思いませんか。一体何のために時間とお金を使って裁判したのか…。
そして一旦裁判が始まってしまうと、お互いに有利になるための粗探しになり、引き下がるタイミングがわからなくなり夫婦仲が戻ることはまずないのだとか。
家族を失ない、働く意味を疑問に思う日も
仕事に使っていた車も貯金もすべて家でした奥さんが持って行ってしまったため、由伸さんはまた一から貯金を始めたそう。さらに由伸さんの娘さんは生まれつき持病があるため、何かあったときに医療を受けられるようにするため、そのための貯蓄も必要となってきます。
よ:家に帰ったとき、「なんのために働いているんだろう」と思うときがあります。だけど仕事には恵まれているからそれが気晴らしになってはいるし、周りの人たちにも恵まれているから、色々話を聞いてもらったりして、そこまでネガティブにならずには済んでいる感じですかね。
さかい(以下、さ):ようやく離婚できて、「恋愛したい」、という気持ちにはならないですか…?
よ:う〜ん。元々は女性に対してバリアはなかった方だけど、今はちょっと怖くなりましたね。疑ってしまうというか。信頼して結婚した相手に身ぐるみ剥がされてしまったから、こんな風になるならもう結婚したくないな、というのが今の気持ちです。
人懐っこい性格で、飲み会を企画するのが好きだった由伸さんだけど、「人間不信気味になって、自分からはあまり人を誘わなくなったかもしれない」とポツリ。
よ:妻に使われた貯金も裁判費用も、壮絶な勉強費代になりました。取材で僕が話したことは、実際に起きたことの100分の1以下だと思います。いろんなことが辛すぎて、脳がもう、記憶を消去しようとしているんですよね。
インタビュー・文
さかいもゆる
出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。——と思ったらアラフォーでバツイチになり、意図せず、ある意味全方位フリーダムなステイタスになる。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」ではアラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。