手のひら返しとは
日本語のなかには比喩的な表現がたくさんありますが、「手のひら返し」もその一つです。間違った使い方をしないためにも、どのような意味があるのかを正確に知っておきましょう。
態度を急に変えること
手のひら返しの意味は「それまでの態度や評価を一変させること」です。
親身に接していた人が急に冷淡な態度になったり、評価の低い人が一転して高評価されるようになったりしたときは、「手のひらを返したような態度をとる」または「手のひら返しをしたように人が変わった」などと表現できます。
手のひら返しには「そのときの自分の都合や気分によって変わる」というネガティブなニュアンスが含まれているのが特徴です。
手のひらは「掌(たなごころ)」とも表記できます。昔から、大切な場所であると考えられており、「大切な部分をひっくり返すこと」はすなわち「態度が一変すること」でもあります。
人の態度以外には使わない
手のひら返しは、人の態度の変化のみに用いることができます。
例えば、「昨日は食欲がなかったが、今日は手のひら返しで元気になった」という表現はしません。スポーツの試合の流れが変わった際に「後半戦は手のひらを返したように優位になった」と表現するのも誤りです。
「昨日までは賛成してくれていたのに、手のひら返しで否定された」や「手柄をあげると、社長は手のひらを返したように機嫌がよくなった」など、あくまでも人間の態度に対して用います。
手のひら返しする人の心理や原因
評価や態度をころころ変える人は、周囲に「節操のない人」だと思われがちです。手のひら返しをする人には、どのような原因や心理が考えられるのでしょうか?
対面だと言えない
相手に対面で謝罪をしたとき「それはしょうがないね」と一度は受け入れたはずなのに、しばらくしてからメールで「納得できない、許せない」と本音をぶつけてくる人がいます。
デート中は機嫌がよく、楽しそうにしていたのに、別れて家に着いたとたんにダメ出しや文句を並べてくるのも「手のひらを返したような態度」といえるでしょう。
手のひら返しをする人は、面と向かって自分の気持ちが伝えられない「内気な人」である可能性があります。
対面では言えなかったことを、後になってメール・電話・LINEなどで伝えてくるため「態度や考えがころころ変わる人」に見えてしまうのです。
ステークホルダーの存在
手のひら返しをする人が、必ずしも自分の思いで変えているとは限りません。
取引などで「話はついたはずなのに、次の日になると話がふりだしに戻っている」という場合は、背後に「ステークホルダー」が存在している可能性を疑いましょう。
ステークホルダーとは、取引における「利害関係者」のことです。組織内であれば、社長や管理職層、身内であれば、親や年配者などが「黒幕」となって「ああしろ、こうしろ」と本人に入れ知恵をするのです。
本人にとっても何らかの利益があるため、相手の操り人形になることを拒まず、態度を一変させることがありえるのです。