ありがとうとか大好きとか、ちゃんと言って!
2015年は特に大変な年でした。5月次男が生まれて、家族5人の生活がスタート。産後1ヶ月でモデル復帰。そして初めての小学校受験。新生児のお世話をしながら長女の受験勉強に付き合い、長男の幼稚園への送り迎えや行事をこなし、そして自分の仕事も…。今、写真を見返しても、何をどうやりくりしていたのか思い出せません。
この頃から私はよく「ありがとうとか大好きとかちゃんと言って!」と夫に言うようになっていました。でも何度言ってもYESの返事はありません。私の伝え方やタイミングも悪かったのかも知れないけど、最終的には夫の機嫌が悪くなるだけ。「ペテン師みたいな口だけの男と、口下手だけど行動で示す男とどっちがいいんだよ」だそうで…。
私の30代はこうして終わっちゃうのかな…
慌ただしい毎日。トイレやお風呂を強い洗剤を使って入念に掃除をした後。部屋の隅々のホコリをいつもより綺麗に掃除して水拭きをした後。達成感もあるけど、なんだか虚しい。頑張ってるのに、誰も何にも言ってくれない。当たり前だと思われてるのかな…。
「このまま3人のお世話をして夫も帰ってこなくて私の30代はこうして終わっちゃうの!?」なんて急に思ったりして。そんな時に不満が大爆発してしまうんです。そしてまた「ありがとうとか大好きとかちゃんと言って!」を繰り返す。
子どもはかわいいんです。育児や家事をやりたくないわけじゃない。夫にやってもらいたいからそう言っているわけじゃない。とにかく言葉で労って欲しかった。「ありがとう、大好き」は「ママ」ではないひとりの女性への言葉だと思うんです。
「疲れた」と言う時も同じです。「そうなんだ、いつもありがとう」って、ただ言って欲しいだけ。なのに「だったら俺がやるよ」なんて言われて、「そんな風に言って欲しいわけじゃない」って喧嘩になる。原因を突き止めて解決してほしいわけじゃなくて、単純に同調して欲しいだけなんだけどな。
4年間言い続けてやっと根負けしてくれました
あまりにも私がこの類の話を続けるので、4年経った今、とうとう夫は根負けしたようで、以前よりだいぶ柔軟に優しい言葉をかけてくれるようになりました。「ごはんを食べる時いただきますって言ったり、終わったらごちそうさまって言うように親が子どもに教育するでしょ?それと同じで俺も教育されたんだよ」だそうです。まだまだ回数は少ないんですけどね(笑)。
でもベースをわかってもらえた事で私の気持ちはかなり前向きになったんです。夫が「紗弥、いつもありがとう」と言ってくれたときは、「えー、言ってくれてる!うれしい!!」って返しています。
言い合いを幾度となく見てきた子ども達は、こう言う会話を聞いて「パパ、ちゃんと言ってるじゃーん」「ママ達、仲良しだね」と半ば呆れながらからかってきます。ちょっと照れくさいけど、それでもいいんです。言葉で想いを伝える人になって欲しいから、これからもずっと言葉の持つ力を夫にも子どもにも伝えていきたいし、私も心掛けたいと思っています。
モデル
牧野紗弥
愛知県出身。小学館『Domani』を始め、数々のファッション誌で人気モデルとして抜群のセンスを発揮しながら、多方面で活躍中。キャンプやスキー、シュノーケリングなど、季節に合わせたイベントを企画し、3人の子供とアクティブに楽しむ一面も。今年は登山に挑戦する予定。自身の育児の経験や周囲の女性との交流の中で、どうしても女性の負担が大きくなってしまう状況について考えを深めつつ、家庭におけるジェンダー意識の改革のため、身を持って夫婦の在り方を模索中。