なぜケンカになるのか。相手の気持ちを想像する大切さを伝えていく
「子どもたちには、コミュニケーション能力がある人に育ってほしいなと思っているんです。どんなに成績が良くても、どんな職業についたとしても、これからは相手が何を考えているかを瞬時に察知して、それを行動に移せるスキルが重要になってくると思うからです。
たとえばもし、医師の資格が取れたとしても、患者さんとちゃんと向き合って話すことができなければいい診察はできませんよね。学力も大切ですが、今は人との向き合い方をしっかり学んでほしいので、日常生活でもできるだけ丁寧な対話をするように心がけているんです。
怒るときは、イライラする自分の感情はそっと横に置いて、“今、何でママが怒ったのかわかる? それはこういう理由だからなんだよ”とロジカルに説明します。おちびはまだわからないですけど、長男と長女で遊んでいてケンカになったら、反射的に「こらーっ!」と叱りつけるのではなく、ちょっと待てと。「それで、ふたりはなんでケンカしてるの?」と、その理由を問いかけるんです。
ちょうど今朝も、いただきもののきれいな折り紙をめぐって、長男と長女がケンカしました。ピンクの紙はだれがもつとか、キラキラの紙は自分がもつなどと言い合っていて、“ああ、せっかく喜ぶと思ってもらってきた素敵な折り紙なのに…”とピリッとしかけたのですが、ひと呼吸入れて、「ちょっと待って〜」と興奮しているふたりに、こんなふうに声をかけてみました。
友利「なんでケンカしているの?」
子どもたち「このキラキラ(の紙)をどっちがもつか」
友利「何枚あるの?」
子どもたち「14枚ある」
友利「ふたりだったら、何枚づつに分けたほうがいいと思う?」
長男「7枚づつにわける」
友利「そうだよね。でも7枚全部がキラキラの紙だったらだめだよね。相手はどう思うと思う?」
長男「うーん。いやかなー」
長女「じゃあ私がキラキラもらうー」
友利「お兄ちゃんもこれが欲しいと思ってるんだよ。どうしたらいい?」
長女「キラキラが5枚あったら、それをふたりで相談して分けるー」
と、ここまで丁寧なやりとりを経てようやく落ち着いて、ふたりでもそもそと相談し始めてくれました。
ただでさえ時間がない毎日の中で、ひとつひとつのことに対して、いちいち丁寧に説明する時間も気持ちのゆとりもない状態ではあるんです。ではあるのですが、ここはとても大切なのでいったんちゃんと立ち止まります。 “相手がどう思うと思うか”を質問で掘り下げたり、“ママはあなたがこれをしたことで悲しいと思ってるんだよ。だからもうこういうことはしないでね”とこちらの気持ちを伝えたり。“相手がこう感じているから、こういうことが起こった”と、人の感情に行き違いがおきるメカニズムをしっかりと押さえていきます。
泣いてる娘に、なぜ泣いているのかを問いかけたら「なんとかが、うわーっ、うわーっ(泣)」とさらに泣き出したりすることもあります。そんなときにも、「わかった。わかったから、まず泣くのをやめて、そのことを解決するためにはどうしたらいい?」と、彼女が泣きたい感情を受け止めてから、起きてしまった行き違いを分解していけるように話を展開させています。
自分の意志や気持ちをきちんと言葉で表すのは、大人でも難しいです。それでも、子どもたちには対話を通してできるだけ伝えていきたいと思っています」(友利さん)
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医師(内科・皮膚科)
友利 新
ともり・あらた/1978年、沖縄県宮古島生まれ。東京女子医科大学卒業。同大学病院の内科勤務を経て皮膚科へ転科。35歳で再婚、36歳で長男、38歳で長女、41歳で次女を出産。現在は都内2か所のクリニックで勤務、テレビや雑誌などで美や健康に対する啓蒙活動を展開するほか、子どものスキンケアブランド「メディスキンベビー・キッズ」を開発。最新刊は『やめる美容』(友利新/光文社)。YouTubeチャンネル「友利新/医師「内科・皮膚科」」も絶賛更新中。インスタグラムのライブ配信も好評。
IG:https://www.instagram.com/aratatomori/
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCS02b3Y9RCzsT2k4no6LN-g
構成/文
谷畑まゆみ
フリーエディター・ライター。『Domani』連載「女の時間割。」、日本財団パラリンピックサポートセンターWEBマガジン「パラアスリートを支える女性たち」等、働く女性のライフストーリー・インタビュー企画を担当しています。