すべての夫婦には問題がある!? 犬山・劒夫婦の場合
―― 著書ではさまざまな夫婦を取材されていましたが、まずは、犬山さんご自身の夫婦関係について聞かせてください。著書のタイトルに「すべての夫婦には問題がある」とありますが、犬山さんご夫婦にも問題があるんですか…?
私たちは同棲を経て2014年に結婚したんですが、結婚3~4年目にかけて、私も夫もカウンセリングに通っていました。私は怒りっぽい性格をなんとかしたくて。夫は何ごとに関しても「自分が悪い」と感じてしまう「自罰的」な性格につらさを感じて。私が不機嫌な顔で「なんで昨日のご飯が冷蔵庫に入ってないの?」「ごみが溜まってる!」などと夫に八つ当たりして、彼がさらに自分を責めてしまう悪循環を断ち切りたかったからです。
今は、私が理不尽に怒ることはほぼなくなり、夫も自分を責めてしまった後のリカバリーが明らかに早くなりました。お互いにラクになったし、夫とも昔よりさらに信頼し合える関係になったと思います。「性格だから」と諦めなくて、本当によかった。夫婦によって抱えている問題はそれぞれですが、リカバリーする方法はあるんです。
「家事・育児分担」と「収入」はトレードオフじゃない
―― 多くの夫婦で火種になりがちな問題のひとつに、家事・育児の分担がありますよね。犬山さんの家庭では、劒さんが主に、家事や育児を担っているとお聞きしましたが、スムーズに分担できていますか?
基本的には、外での仕事も自宅で原稿を書く仕事も、家事・育児も、すべて含めたそれぞれの作業「総量」がトントンになるようにしよう、と考え方で分担しています。
私は昔から家事が苦手なんです。専業主婦だった母が台所に立ち、父が居間でテレビを見ている、という中で幼少期をすごしましたが、そういう生活は自分には向いていない、女性であるがゆえに家事を自動的に振り分けられるような世界からは抜け出したい、という意識が常にありました。
だから、家事が得意な夫と同棲を始めるときに、「家賃と生活費をふたりで折半した金額分ぶんくらいの家事を、時給¥1500円換算でやってくれないか」と打診したんです(笑)。私が家賃と生活費をすべて払うかわりに、1日3時間くらい洗濯、掃除などをしてもらうイメージですね。
―― そのとき、劒さんはどんな反応だったんですか? 「なんで僕が家事を…」といった反発などはなかったんでしょうか?
夫は自分の母親が働いてたこともあり、考え方がとてもリベラルなんです。同棲を始めた当時は収入があまりなかったこともあって、スムーズに提案を受け入れてくれました。ただ、子どもが生まれたらそれでは回らなくなって、「家事・育児はお金だけじゃ測れない。仕事も家事・育児も、すべてひっくるめての作業量をお互いトントンにしよう」という考え方に落ち着いたんです
だからといって、私の仕事がめちゃくちゃ忙しくなったときに、夫の家事量がめちゃくちゃ増えるのも変な話ですよね。週に2~3回は区のシルバー人材センターに依頼をして、私ができないぶんの家事を私のお金で外注することにしていますが、なかなかバランスをとるのは難しいですね。つい昨日も「家事の量、どう? 困ってることはない?」と聞いたところなんですが…。
―― 今の日本の家庭では男女逆のパターンも多いと思いますが、夫の「僕のほうが稼ぎが多いんだから、家のことは妻が多くやってあたりまえ」という考えが口に出さなくても行動や態度ににじみ出ていという妻側の声をよく聞きます。
それは厳しいですよね。女性自身もそういう考え方にとらわれている場合も少なからずあると思います。
取材・文/酒井亜希子(スタッフ・オン)
犬山紙子著・扶桑社新書377
育児・家事、夫婦ゲンカ、不妊治療、セックスレス 、不倫etc。“壁”を乗り越えた巷の夫婦を徹底取材して見えてきた夫婦円満のための100のヒントを収録!
コラムニスト
犬山 紙子
1981年生まれ。2011年に『負け美女 ルックスが仇あだになる』(マガジンハウス)でデビュー。その後も、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)、『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)など数々の話題作を発表。近年はテレビコメンテーターとしても活躍し、『スッキリ』(日本テレビ系、『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)などに日替わりコメンテーターとして出演中。