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【目次】
「スキーム」とは目標達成への枠組みのこと
スキームには目標達成への枠組み、計画、構想といった意味があります。スキームは目標を設定するだけでなく、どのように達成していくのかという手段や道筋を含む言葉です。
明確な形があるものを表している語句ではないため、スキームはわかりにくいカタカナ用語の代表的なものとしてあげられることも少なくありません。ここではスキームと混同しがちなプラン、ストラテジー、フローとの違いを解説していきましょう。
■プランとの違い
スキームとプランとの違いはどれくらい具体的であるかという点にあります。スキームもプランも計画という言葉で表すことができる語句ですが、スキームは具体的、体系的な計画を意味します。一方、プランは「予定」といった意味合いがあり、まだ具体的な計画が決まっていないときや構想段階の途中にあるものを指す言葉です。
また、スキームは長期的な運用を前提として使われる場合が多いのに対して、プランは短期的な計画を指すことが多い傾向があります。スキームが組織で使われる語句であるのに対して、プランは組織か個人かを問わずに使われることも知っておきましょう。
■ストラテジーとの違い
スキームとストラテジーは、現在直面している課題に対してのものであるか、将来的な課題を見据えたものであるかという点で異なります。
ストラテジーは一般的には「戦略」という意味で訳される語句ですが、ビジネスにおいては、「長期的な戦略」というニュアンスで使われることが多いです。一方、スキームは特定の課題に対する計画であり、長期的というよりも、継続的というニュアンスが当てはまります。ストラテジーの方がスキームより規模が大きい計画を指すことを覚えておきましょう。
■フローとの違い
スキームが目標達成の枠組みであるのに対して、フローは業務の流れを表す言葉です。フローの意味は「仕事の流れ」であり、仕事のスタートから途中経過、ゴールまでの流れを表します。スキームが枠組み全体を指す言葉であるのに対して、フローは全体の中の事柄の流れを意味する言葉です。
フローを使う言葉としては、どの作業をいつ行うかを図式化したフローチャートや収入と支出の流れを表すキャッシュフローなどがあります。
【分野別】スキームの意味
スキームは目標達成の枠組みという意味を持っていますが、使われる分野やシチュエーションによって、ニュアンスが変わることがあるので、注意が必要な言葉です。
ここでは経済、政治、ITという3つの分野において、スキームがどのような意味を持っているのか、そしてどのような使われ方をしているかを解説していきましょう。
■「経済」で使われるスキーム
スキームは経済の分野でよく使われる語句です。経営戦略や事業戦略から営業戦略まで、企業が活動を展開していく上で、スキームは欠かせません。
証券でよく使われているのが、集団投資スキームという用語です。多数の投資家から集めた資金によって事業や投資を行い、その収益を出資した投資家に分配する仕組みを表しています。
融資スキームは資金調達スキームとも呼ばれている用語です。事業者が新規事業の立ち上げや起業をする際に、他者から資金を調達する仕組みを表しています。
■「政治」で使われるスキーム
政治や行政の場面ではスキームは「基本計画」や「基本構想」という意味で使われることが少なくありません。
具体的な例をあげると、「BBCスキーム」は「ASEAN域内の自動車産業を対象とする関税制度」のことです。政治では「改革スキーム」、行政では「支援スキーム」のように、さまざまな言葉と組み合わせてスキームという言葉を使います。
■「IT」で使われるスキーム
ITの分野で使われるスキームは他の分野で使われているものとはまったく異質で、2つの意味を持っています。1つはプログラミング言語の種類を表す言葉です。スキームというプログラミング言語はシンプルな構造と習得しやすいという特徴を持っています。
ITの分野で使われているもう1つのスキームは、インターネットで使用されるURLの冒頭の部分を表す言葉です。「http://」や「https://」をスキーム名またはURLスキームとも呼ばれ、インターネット上の資源の所在を表しています。
ビジネスで使われる代表的な3つのスキーム
ビジネスではさまざまな場面でスキームという言葉が登場します。ビジネス全体の枠組みや利益が出る仕組みを、ヒト・モノ・カネ・情報という観点から体系的に表したものがビジネススキームです。
ここではビジネススキームをさらに細分化した事業スキーム、販売スキーム、評価スキームという代表的な3つのスキームについて解説します。
1.事業スキーム
事業スキームとは、事業計画や事業構想を表す言葉です。一般的には企業が事業を継続的に行う上での枠組みや利益を生み出していく仕組みという意味で使われています。
企業が自社の事業のプロセスを確認し、経営戦略を立てる上でベースになるのが事業スキームです。また資金調達が必要な場合にも事業スキームという言葉が使われ、この場合には事業計画書のことを指します。
2.販売スキーム
販売スキームとは、企業が展開している商品やサービスの販売方法や販路拡大方法など、売上向上を目的とした取り組みを表すものです。企業と顧客との関係を軸として、販売スキームを構築していきます。
その際には顧客満足度、カスタマーサービス、フィードバックなど複数の項目を分析します。それらの項目が売上に対してどのような影響を及ぼしているのかを把握して、課題点を洗い出していくために、販売スキームが活用されるのです。
3.評価スキーム
評価スキームとは主に企業評価や人事評価の枠組みを指す言葉です。人事部においては、人事評価の制度や仕組みを表します。また外部から企業の評価をする制度を表すこともあります。
企業内部では人事評価で活用できる評価スキームを確立することが重要です。評価の方法や基準を評価スキームとして体系化することによって、企業に対する信頼感を深めることが期待できます。
評価スキームのポイントとなるのは客観的であること、公平であること、可視化されていることです。
事業スキームを作る3つの手順
ビジネスの場面でもっとも活用されることが多いのが事業スキームです。事業スキームを作る上では事業のビジョンやコンセプト、事業の範囲、利益を生み出す方法、企業の独自性、財務計画などのポイントを押さえておく必要があります。
ここではそれらのポイントを考慮しながら、事業スキームを作っていく手順を解説していきます。
1.事業内容の整理と説明
事業スキームを作る上で最初にしなければならないのは事業内容の整理と説明です。事業のビジョンやコンセプトはどんなものなのかを確認・整理します。
まず、事業の活動領域がどこからどこまでなのかを明確に定義し、収益をあげる方法や道筋を明らかにする必要があります。企業の独自性や技術力、人材、ノウハウ、販売経路、ブランド力などの企業の強みの洗い出しも必要不可欠な作業です。
財務計画も事業スキームを作成する上で欠かせない要素です。財務計画とはどれくらいの資金を使って、どれくらいの収益をあげるのか、利益率はどれくらいなのかを明確に数値化したものです。財務計画を綿密に立てることで、お金の流れも明確化できます。
これら事業のビジョンやコンセプト、事業の範囲、利益を生み出す方法、企業の独自性、財務計画という5つの要素を踏まえて、事業内容を言語化します。言語化することによって、事業内容を企業の内外に伝え、共有することが可能になるからです。そのため、言語化の際は簡潔でわかりやすいものにすることを心がける必要があります。
2.実施項目の明示
事業スキームで特に重要なのは、いかに実施していくかです。そのためには実施項目を明確化する必要があります。事業スキームは目標の設定やプランの作成という段階で完結するものではなくて、継続していくものです。
実施する内容はできる限り具体的に示します。そのためには関係しているすべての部署と緊密なコミュニケーションを取ることが不可欠でしょう。顧客との接点である現場の声をいかに事業スキームに反映させるかが、大きなポイントになるからです。
やるべきことを明確にしていくことで、事業スキームもより具体的なものになります。
3.客観的な事実の記載
事業スキームをより現実的で実行可能なものにしていくためには、客観的な事実の記載が必要です。どんなに素晴らしい事業スキームを作成したとしても、客観的なデータに基づいたものでなければ、絵に描いた餅に終わってしまう可能性があります。
事業スキームに説得力を与えるには根拠が必要です。そのためには市場の現状、競合する他社の業況などを客観的に分析することも必要でしょう。事業スキームは社内的な要素だけでなく、経済情勢、社会の流れなど、総合的な視野に立って作成することが求められます。
企画書で使えるスキーム図の作り方
ビジネスのさまざまな場面で登場するスキームは企画書の中でも登場する機会が多いと言っていいでしょう。スキームは言葉だけで説明するよりも、図解してスキーム図にしたほうがわかりやすくなります。
企画書にスキーム図があると、スキームの内容をより直感的に伝えることができるからです。スキーム図は樹形型・相関図型・フロー型などの種類があるので、スキームの内容によって使い分けるのがいいでしょう。ここでは企画書で使えるスキーム図の作り方を解説します。
1.情報を整理する
スキーム図を作成する際には最初に情報を整理します。対象となる事業にかかわる要素をすべてあげていきましょう。事業に関わっている企業や人をすべてピックアップして、どういう関係なのか、何を提供しているのか、何を得ているのかを明確にします。
そしてそれらの関係の中で、ヒト・モノ・カネがどのような流れでどう動いているのかを確認して、情報を整理します。
2.情報を記号を使って配置する
企業とヒト・モノ・カネの関係を踏まえて、その関係や流れを記号に置き換えていきます。記号とは図形や矢印のことです。特に矢印は関係性や流れを表す上で、重要な役割を担っているので、向きにも気を配りながら、適切に配置していきます。
スキーム図を作成するポイントは最初から完璧なものを目指さないということです。どこにどの要素を配置するのがいいのか、作りながら場所を移動するなど、修正を加えていくのがいいでしょう。
スキームという言葉を理解して正しく使おう
スキームは目標達成の枠組みです。目標を実現する仕組みや流れをわかりやすく説明するためのものであり、経済や政治など、幅広い分野で活用されています。
ビジネスのさまざまなシーンで使われることも多く、事業スキーム、販売スキーム、評価スキームなど、部署や部門によってさまざまなスキームがあります。企画書の作成でもスキーム図を使うことで、説明がよりわかりやすくなることが期待できます。
スキームという言葉を理解して、正しく使えるようになりましょう。
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