「えげつない」とは
「えげつない」という言葉はマイナスの意味に使われるのが一般的ですが、場合によってはプラスの意味になることもあり、多様な使い方ができます。使い方を間違えないよう、正しい意味を知っておきましょう。
露骨でいやらしい不快なさま
「えげつない」という言葉は、ものの言い方・やり方が露骨で遠慮がなく、節度を越えていやらしい様子を表します。否定的なニュアンスが強く、基本的にはマイナスな意味です。無遠慮や図々しさを感じたり、ひどい態度を取られたりしたときに、不快感を表す表現として使うのが基本の使い方といえるでしょう。
ただし、近年ではそのような意味を逆手にとって、相手の行動や物事を「驚くほどすごい」「最高」といった意味でも使われるようになっています。相手の表情やニュアンス、会話の文脈から、正しく意味をくみ取ることが大切です。
「えげつない」の語源は方言?
「えげつない」は、主に関西地方で使われている方言が語源だといわれています。江戸時代の関西地方では、厚かましく意地汚い様子や人情味がないことを、「意気地ない(いちげない)」と表現していました。
この「いちげない」が徐々に「いげつない」となり、昭和初期ごろに「えげつない」に変化したのち、関西地方に方言として定着したようです。その後、テレビで放映される関西のお笑い番組で全国に広まり、徐々に関西以外でも知られる言葉になりました。
言い換えられる「えげつない」の類語
否定的な意味を含む「えげつない」という言葉は、ほかの言葉に置き換えて表現できます。よく使われる「えげつない」の類語を紹介します。
「端たない」
「端たない(はしたない)」は、低俗で下品なさまを表す、マイナスの意味を持った言葉です。慎みや礼儀のなさが見苦しいときや、品格に欠けいやらしい様子が見られたときに使います。また、言動だけでなく、服装などの外見に対しても使われます。
えげつないと比べると、下品さや礼儀に欠けているニュアンスが強く含まれており、よい意味で使われることはまずありません。無作法さに対して、バツの悪さや恥ずかしさを強く感じているときは「端たない」と表現するとより伝わりやすくなるでしょう。
「汚らわしい」
「汚らわしい(けがらわしい)」は、相手の言動を「汚らしい」「いかがわしい」と感じたときの表現です。不快なニュアンスが多分に含まれており、えげつないよりもさらに否定的なニュアンスが強いため、ネガティブな意味が強くなります。また、えげつないが「相手や物事で完結している」のに対して、汚らわしいは「(見ている)自分まで汚れてしまいそう」と感じるほどの強い不快や拒否の気持ちです。非常に強い否定の言葉なので、使う場面には注意が必要です。
「意地悪い」
「意地悪い(いじわるい)」とは、他者の気持ちを考えることなく、悪意を持って無遠慮な行動をすることを表します。仏教で心の持ちようを表す「意地」が「悪い」と否定されていることからわかるように、心の在り方が悪いため人に不快感を与えているわけです。
人の気持ちを考えられず、図々しさや無礼さを発揮している状態なので、えげつないが持つ否定的な意味と似たニュアンスがあります。また、意地悪いは、物事が都合よく運ばず具合が悪い場合にも使うことができます。
「えげつない」の使い方
「えげつない」は文章よりも口語で使われることが多い言葉です。言葉の持つニュアンスを正しく理解して使えば、便利な表現としてさまざまなシーンで使用できます。正しい「えげつない」の使い方と例文を確認しましょう。
驚くような人物・状況に使う
えげつないは、基本的に「驚くような人物・状況」に対して使う言葉です。常識的な出来事や遠慮が感じられる事柄には使用しません。たとえば、驚くほどに図々しい人や絶望的な状況を目の当たりにして、落ち込んだりつらい気持ちになったりしたときに「えげつない」と表現すると、どうしようもない気持ちが伝わるでしょう。
また、目に余るような露骨な行為を否定するときの表現としても該当します。ポジティブな場面なら「すごい」と感動したり、想像以上のよい出来事が起きたりしたときに使えば、プラスの表現として受け入れてもらえるはずです。
「えげつない」の例文
実際の会話で「えげつない」はどのように使われるのでしょうか。具体的な例文を紹介します。
●彼の借金の仕方は、えげつない。
●取引先のえげつない態度に、心が折れてしまった。
●彼はえげつないやり方で、親友の婚約者を奪った。
上記は、行動が節度を超え、なりふり構わず無遠慮なことをしているさまを表現する例文です。驚いた出来事に対して、批判の気持ちや不快感がある場合に使いましょう。
●FWのえげつないシュートで勝利を収めた。
●アイドルのパフォーマンスがえげつない。
●博士のえげつない発想力が新しい発明を生み出した。
「素晴らしい」「驚くほどの」といったニュアンスで使用すれば、感嘆や賞賛の意味になります。あくまでもカジュアルな褒め方ですが、興奮や感動が伝わりやすいかもしれません。どちらの場合であっても、使う場面やタイミングには注意が必要です。類義語も含めて、相手を不快な気持ちにさせないように配慮したいものです。
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