【目次】
副業準備のスタートは、目的と働き方のルールづくり
ビジネスパーソンと企業のマッチングサービスを行う会社で副業支援に携わる信澤みなみさん。副業がもたらすものや注意したい点について聞いてみると、
「副収入の確保やモチベーションの向上に加えて、会社以外の場所でも自分のキャリアを積むことで、心の安定感が生まれるメリットが大きいですね。
でも、本業と副業を同じくらいの力で頑張りすぎてしまうとタスクオーバーになって、体調面に支障が出ます。
副業の稼働時間と稼ぐ額のイメージをもつことは、継続していくためにも重要なんです。副業に向いているのは、新しい場での自己成長を求める人。
安定志向の人は、副業する自分をシミュレーションしてみるだけでも、変化が感じられると思います。
大切なのは、本業は本業であること を認識したうえで、副業に挑戦すること。今回提案したステップチャートで目的や稼働スタイルをしっかりイメージしてから、始めみてください」
来月から副業OKになっても困らないように! 副業を始めるまでのステップチャート
【Step 1】副業する目的を決める
まずは目的をクリアにすることが大切です。収入を増やしたいのか、やりたかった夢の実現なのか。ノートに書き出しながらひとりブレスト!
◎収入UP
「ライフプランを立てると、稼ぐべきお金の目安がわかります。5年後、10年後に何を買ってどのような生活をしたいのか。必要なお金はいくらか、試算しましょう」
◎夢の実現
「やりたかったことや夢の実現が目的の場合、自分の専門性が活かせる副業なのか、社会から必要とされている内容か、対価が発生するかどうかもチェックして」
◎リスク回避
「〝今の仕事だけでは不安。保険として副業を始めたい〟なら、本業のスキルでできる案件で副業するのが最短距離。マッチングサイトを活用すれば準備も不要です」
◎副業の経験や知識を本業に活かす
「たとえば『不動産の営業職の人が投資の知識をつけて、不動産投資の副業を始める』など。本業に活かせる知識や経験は、社会人としての賞味期限も延ばします」
《Point!》収入や働く時間は、最初に設定が必要!
「何を目的に副業を始めるにしても、大切なのは〝希望の収入と働く時間〟の設定です。たとえば平日3日は夜に副業案件を入れて土日は休む、土日に副業して平日は本業に注力するなど、自分でルールをつくりましょう」
【Step 2】会社の就業規則を確認する
副業することは法律で禁じられていませんがさまざまな理由から、会社の〝就業規則〟でNGとされる場合が多いのが現状です。労務や人事に確認して、就業規則に目を通しましょう。
《Point!》会社が副業OKな場合の検討事項
●本業に支障をきたさない程度の稼働時間でできること
●本業と競合関係にならない業種・業務内容
●本業の信頼を損なわないこと
会社が副業を禁止できるのはこんなケース
「たとえば、副業で長時間稼働すれば本業に支障が出ますし、競合他社で副業すれば会社の機密漏洩の可能性が高まります。会社のクライアントと副業の顧客がかぶるのもタブー。ほかに、内容がアダルトなものであるなど信頼を失墜させる副業も禁止です。基本的に、本業に差し障りのありそうな副業はすべてNGと考えましょう」
【Step 3】どんなスタイルで副業を行うのか決める
副業の目的が決まって会社の規則もクリアしたら、次はどんなスタイルで副業するのか決めましょう。現状では下記の3つのスタイルに集約されます。副業内容や希望の稼働時間などと併せて検討を。
◎個人で行う
「仕事の受注から告知宣伝まで、すべて自分で行うスタイル。たとえばハンドメイドアイテム販売などの趣味的な副業のほか、個人で行うアンケートモニターやFXなどの投資もこの枠です」
◎オンライン上の委託契約スタイル
「オンライン上で案件を受けて仕事を展開する、クラウドソーシング的な副業スタイル。マッチングサイトやプラットフォームを活用、ネット上ですべてのやりとりが完結します」
◎業務委託で働く
「業務委託の場合はオンラインではなく、実動の業務が発生します。たとえば副業先の会社に行って勤務する場合などがそうです。コミュニケーションスキルも必要になるでしょう」
【Step 4】自分のスキルの棚おろしをする
副業を始める前に、一度立ち止まって自分の棚おろしをしてみることも大切です。忙しく働き続けて振り返る時間がもてない人でもすぐに試せる4つの方法を紹介!
《Point!》スキルの棚おろし方法
●履歴書や職務経歴書を書いてみる
●エージェントに登録して相談する
●Web上のキャリア診断シートにトライ
●自分自身に質問してみる→強みやスキルを整理する5つの質問
1. これまでで最も印象的だった仕事を思い出す
2. なぜその仕事を頑張ろうと思えたのか
3. どのように行動したのか
4. その結果、どうなったのか
5. 自分が得たものは何か
整理して見つめ直すことで、自分の新たな可能性に気づける
「試しに履歴書を書いてみたり、人に話すことで、もっている強みやスキルを整理できます。〝自分自身への5つの質問〟では、印象に残っている過去の仕事から、頑張れた理由や自分の行動、結果や得たものを思い出すことでセールスポイントが見えてきます。副業をすぐ始めない人でも、強みを的確に把握しておくことは大切です」
【Step 5】必要な情報を収集する
何かに初めてトライするとき。もっている情報や予備知識の量で差がつく時代です。あふれる情報源からどう選び取り、収集すべきなのか、いざ、走り出すその前に再確認。
《Webから》 「思い立ってすぐに情報が欲しいときにネットは便利。でもひとつの情報源で満足しないで、特集記事やブログ、マッチングサイトなど、異なる複数の情報源からチェックしましょう」
《副業案件紹介会社から》 「自分が今必要な情報を必要なだけ欲しい場合は、エージェントのアドバイザーに相談を。予約して出向くのは手間ですが、対面での相談は情報量が違い、疑問や悩みが解決することも」
《実際に副業している知り合いに聞く》 「いちばんおすすめなのがこの方法です。知っている人なら、事前の準備や副業をしてみての感想、課題点などなんでも聞きやすいし、身近なモデルケースとしても参考になるでしょう」
【Step 6】会社に届けを出し、開業手続きをする
棚おろしや準備が整ったら、いよいよ副業開始! の、その前に。届けるべきところに申請をして必要があれば、開業の手続きも。今までの生活から外に踏み出す一歩です。
◎許可申請書を提出、または口頭で申請 「申請書には副業の業種や勤務形態、副業をする理由などを記入します。会社によっては口頭でOKの場合も。いずれの場合も直属の上司の理解を得ることが大切です」
◎副業の所得が年間20万円以上の場合は、開業手続きを行う 「20万円以上の収入は所得税の対象となるので、税務署と自治体に開業届けの書類を提出します。確定申告が心配な人はフリーソフトなどを準備しておくと安心」
◎WebサイトやSNSで集客をする 「マッチングサイトやエージェントを利用する場合は必要ありませんが、個人で行う副業はネットの力が必要です。集客やファンづくりも副業成功のポイントです」
《Attention!》始める前に知っておきたい! 副業まわりの法律あれこれ
●職業選択の自由 憲法22条には「職業選択の自由を有する」という一文があり、だれでも職業を選ぶ自由が保障されています。
●育児休業中の副業 育児休業給付金と副業の月収の合計が育休前の月給の80%を超えるとその分、給付金が減額されるので要注意。
●副業の労災保険給付 副業先での労働中の災害はもちろん、本業の勤務場所から副業の勤務場所に移動する際の災害に対しても、副業の賃金水準をもとに補償がなされます。
お話を伺ったのは
(株)サーキュレーション 新規事業準備室 女性活躍推進サービス企画 マネージャー
信澤みなみさん
早稲田大学卒業。大手総合人材サービス会社にて経営コンサルティングに従事した後、現在の会社の立ち上げに参画。女性の新しい働き方をテーマに、副業・複業支援のプロジェクトを推進している。
Domani4月号 『もしも会社が「来月から副業OK」になったら』より
本誌取材時スタッフ:イラスト/本田佳世 構成/谷畑まゆみ