暑さは気分にどんな影響を与える?
気温が高いと身体的に辛いのはもちろんですが、気持ちにも影響を与えていると感じることはありませんか? あまりの暑さにやる気が出なかったり、なんとなく気が散ってしまったり。そういえば気温による不快さという点では同じなのに、「暑くてイライラする」とは聞いたことがあっても、「寒くてイライライする」というのはあまり聞かないような……。
そもそもなぜ暑さによってイライラすることがあるのでしょうか。そのメカニズムや快適に過ごすための対処法について、社会心理学者の碓井真史先生に心理学の面から教えていただきました。
専門家に聞く、気温と気持ちの関係性
Q1:人は気温何度以上になると不快に感じる?
「一般的には、『22℃』が一番快適だと言われています。『25℃』くらいから、決して快適とは言えなくなってきますが、多少の不快感に関しては個々が工夫をすることで、心理的な影響による問題行動などは起こりにくいと考えています。
心理学の観点から問題視する温度の分岐点は『30℃』です。『30℃』を超えたあたりから、個々が工夫などをしても心理的・行動的な様々な問題が起こる可能性があります」(碓井先生・以下同)
Q2:暑さは対人関係にどのような影響をもたらす?
「人間が怒ったり、優しくなったり、助けたり、攻撃したりする背景には、個々のパーソナリティや相手との関係性が影響していることに加え、気温の違いなど本人が自覚していないような要素も影響していることが、心理学の観点からわかっています。特に気温に関しては、寒いよりも暖かいほうが様々なシーンにおいて行動的・積極的になると言われています。
暖かさを超えて暑さになってくると、イライラや怒りなどの攻撃的な感情が生まれやすく、暑いことで暴動が起きやすかったり、スポーツなどにおけるトラブルなどが増加したり、相手の評価が下がるというような研究結果も出てきています。ただし、暑さによる不快感が人間行動への悪影響を与えることは言えますが、一人ひとりの服装の違いや気温による影響がどれだけ起因しているかを測ることは難しいので、言及しづらいところではあるのですが……」
Q3:暑さによる不快さや悩みによって、どんな困りごとが考えられる?
「暑さによる個々人への影響という意味では、やる気が下がる・元気が出ない・集中力が下がる・イライラするなどが挙げられます。
人間は暑さによる不快感などを生物として無意識的に何とかしようと考えるため、本来であれば仕事に集中したり人間関係によるストレスをうまく回避したりする方にエネルギーを費やすことができても、暑さの限度を超えてくると、その暑さによる不快感の解消のために身体や心のエネルギーを費やしてしまうために、イライラしたり集中できなかったりということが起きてくるのです。暑いときに思いやりが持てないなども、こちらに該当します」
Q4:暑さでイライラしているときの対処法は?
「暑さでイライラしてしまうのは仕方がないので、暑さを軽減させる方法を考えることが重要です。心理学の研究から推測するに、体がさわやかになることは心がさわやかになることに繋がり、人間関係にポジティブな影響をもたらし得るため、そういった状態を保つことはとても大切です。
清涼感を感じることは、自分が快適になることに加えて、様々なシーンの人間関係において相手に対する自信にも繋がります。暑さによる不快感を解消したいときに、感覚的に『冷たさ、清涼感を感じる』ことは効果的ですね」
もちろんイライラしてしまうそのときに気温が高いからといって、それがすべて暑さのせいだとは限りません。でも、暑さが気持ちに影響することがあると知っていれば、なんだか集中できないときや気が乗らないときに、気持ちを切り替える一助になるかも。夏はイライラしがちかもという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
教えてくれたのは…
碓井真史(うすいまふみ)先生
1959年東京生まれ。日本大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程 修了/博士(心理学)
新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科 教授 専門は社会心理学
情報提供:株式会社マンダム清涼部