プライド高い。性格悪い。わかっているけど、誰も直し方を教えてくれなかった
「出たがりの照れ屋」と自分を評する村上さん。そこに、自他ともに認める「性格の悪さ」が相まった「こじらせ」が、村上さんの魅力であり武器でもあります。それは、今になって俳句にも生きてきて…。
語り/村上健志(フルーツポンチ)
人の目を見て話せません
照れ屋で人見知り。緊張するとうまく話せないし、人の目を見ることもできない。目を見たら、「こいつ見てんじゃん」って思われそうで、怖いんです。自分が見ないから、みんながどれくらいのバランスで人の目を見てるのか、知りません。そもそも目って、見られてうれしいのかどうかも、よくわからない。だったら、見ないほうがいい。デートのときでさえも、「目、見ないよね」って言われたことがありました。
写真をもっと見るでも、いざ芸人の仕事となれば、意外と目を合わせなくてもやっていけます。テレビでも舞台でも、人と正面で向き合ってしゃべることは少ないし、カメラや多数のお客さんに向かってなら、大丈夫です。
それに、ずっと無意識に言っていた人の悪口も、芸人であれば笑える話になるとわかりました。若いころ、流行りの物事に乗っかっている人がうらやましくて、陰でよく悪く言ってたんです。本当は僕も流行りに飛びつきたいのに行動力がなくて、うらやましさの裏返しです。でも芸人ならば、その悪口も役に立つし、笑ってもらえます。ただ、やがてバラエティ番組で「性格が悪い」というレッテルを貼られていることに気づいて。こんなはずじゃなかったのにな。
被害妄想にひがみ節。それは僕がずっと持っていたもので、テレビに出るようになって余計にひっぱり出されたのでしょう。それはそれで、ありがたいけれど…。でも、こう思うんです。僕のことをプライドが高いとか、性格直せとか言うなら、直し方を教えてほしい。誰もそこまでは言ってくれないんですよ。無責任じゃないですか?
恥ずかしくて好きだなんて言えません
好きになる女性の条件は…。自分でもよくわかりません。若いころは「読者モデル」って聞いただけで、全員好きになっちゃってました。タイプじゃなくて肩書きだけで。
初めて女性とおつきあいをしたのは、20歳を過ぎてからです。バイト仲間だったこともあって、話すことへの恐怖はそれほどなかったけれど、いくつか季節が変わるうちに…終わっていました。切ないですね。
芸人になってからも、つきあった女性はいましたけれど、長くても1~2年。きっと、女性が求めるほど自分から思いを伝えていないんだと思います。だって、恥ずかしくて言えません。そんなことを思い悩んでいると、もう面倒くさくなってしまって。
結婚願望だって、ないわけじゃありません。けど42歳にもなると、胸張って「結婚したい」って言える感じでもないし、「どうしても」というものでもない。僕も人並みに、「この人だ!」って思うときがくるんでしょうか。だとしたら、まだ出会っていないというか…、やっぱりなんだか怖いです。
写真をもっと見る俳句を詠むなら、性格が悪いほうがいい
性格の悪さは、俳句を詠むときにも役立ちました。たとえば、あえて人とは違う角度からものを見るということ。きれいな桜が咲いていたら、みんなと同じ正面からじゃなく、裏側から見てみよう、というように。ただし、俳句が上達しても恋愛には一切役立ちません。むしろ、うんちくを語りたがって嫌われる。デートのときには、流行りのドラマの話をしてたほうが、絶対にいいですから。
本当のことをいえば、いつか聞き上手な大人になりたいです。話す人を心地よくさせるパンサー向井(慧)や、どっしりと聞いてくれる千鳥の大悟さんのような。目指してはいるけど、どうしてもすぐしゃべっちゃうんです。きっと、いいこと言って相手によく思われたい、嫌われたくない、と考えるからなんでしょうね。そんなプライドは捨てて、ただ季節の話をして、相手の話を上手に聞けたら、それでいい。人見知りの克服は、そこからです。大人になってからの人見知りは、ただの努力不足ですから。
相手が「今日は暖かいですね」と言ってくれたら、僕も「暖かいですね」と目を見て返す。そして、相手の話を聞く。こんな当たり前のことを今、やろうとしています。(終わり)
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村上健志
1980年生まれ、茨城県出身。青山学院大学経済学部卒業後、2004年に東京NSCに入学。同期の亘健太郎とフルーツポンチを結成し、お笑い番組『爆笑レッドシアター』『ピラメキーノ』などで人気を集める。過去には、『NHK短歌「短歌de胸キュン」』などにも出演。
現在出演中の、『プレバト!!』では俳句の才能を発揮し、「永世名人」の称号をもつ。
最新公演情報は、https://yoshimoto.funity.jp/で。
ツイッター @fpmurakami
インスタ @kenji_mura_oekaki
YouTube フルーツポンチ村上の俳句の部屋
TikTok @murkamikenji
撮影/高木亜麗
取材・文/南 ゆかり
連載:こじらせ男のひとりごと