「損して得取れ」とは?基礎知識を解説
「損」と「得」は対照的なものであるため、どのような意味を持つ言葉なのかがわかりにくい部分があります。「損して得取れ」の読み方は〈そんしてとくとれ〉で、「目先にとらわれずに利益をとること」を指す言葉です。さまざまなシーンで使われていることわざであり、ビジネスシーンでも使えます。
はじめに、損して得取れの詳しい意味や由来、類義語や対義語について、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
■意味は目先にとらわれずに利益をとること
【損(そん)して得(とく)取れ】
初めは損をしても、それをもとに大きな利益を得るようにせよ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
損して得取れとは、目先の利益や損失ばかりにとらわれてしまってはいけないといましめることわざです。一時は損をしたとしても、最終的には大きな利益を得られるように、物事を長期的な視点で見ることが大事だという意味を持ちます。
将来的な利益に繋げられるようであれば、最初に損失があったとしても将来への初期投資だと思えるでしょう。たとえば、資格取得のために費用がかかっても、資格を持つことで給料があがるとわかっている場合であれば、はじめにかかる費用にとらわれずに将来的な利益を得られるほうを選ぶと良いという意味です。
■由来・語源は「得」ではなく「徳」だった?
このように、損して得取れの「損」とは「利益を失うこと」、「得」とは「もうけ」「利益」という意味で使われています。しかし、もともとの語源となったのは「得」ではなく「徳」で、「損して徳取れ」だったという説があります。
「徳」とは、「すぐれた品性」「一般的に良いとされている能力・性格」のことです。損な役回りであっても人のために努力していれば、将来的には周囲からの評価が高まって、社会的な自身の価値が上がっていくという意味が込められた言葉でした。
そのため、以前は損して得取れとは誤用であったものの、一般化したことで現在の意味になっていったと考えられています。
■損して得取れの類義語
損して得取れの類義語は、以下のとおりです。
〈損せぬ人に儲けなし〉
一時的に必要となる小さな損を避けて商売していては、ビジネスチャンスをつかめないこと。損して得取れとほとんど同様の意味として使える言葉。
〈負けるが勝ち〉
目先の勝負では負けてしまったとしても、つまらない争いは避けて相手に勝利を譲ったほうが、総合的な見返りが大きいこと。損して得取れとほとんど同じように使えるものの、勝負ごとに使われるケースが多い。
〈急がば回れ〉
急いでいるからといって近道をしようとするよりも、一見遅そうに見えてもあえて遠回りをしたほうが堅実に進められること。急いで冷静な判断ができないときに近道をしても、結局ミスをして多くの時間がかかってしまいかねないため、堅実に進めていくことが重要だと表している。
■損して得取れの対義語
一方で、損して得取れの対義語は以下のとおりです。
〈小利大損(しょうりだいそん)〉
小さな利益にとらわれたために、大きな損害を受けてしまうこと。目先のわずかな利益ばかりを気にしていては大局を見られずに、結果として大きな損を招いてしまうことがあるといましめる言葉。
〈一文惜しみの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず)〉
一文を惜しんだために大きな利益を得られず、損失を出してしまうこと。一文とは、江戸時代の貨幣。一文惜しみの百損ともいう。
損して得取れの使い方・例文
損して得取れという言葉は、現在一般的になっている使い方では「いかにして利益を確保するか」という部分を重要視しています。そのため、商売をする際などのビジネスシーンで使うケースが多いです。しかしそれ以外に、人付き合いについてや恋愛のシーン、スピリチュアルな世界などでも、使われています。
それでは、実際にどのような使い方ができるのか、例文をもとにチェックしていきましょう。
■仕事や商売のシーンでの使い方
損して得取れはビジネス用語ではないものの、仕事や商売のシーンでよく使われている言葉です。ビジネスシーンでは「どのようにするとより大きな利益を得られるのか」を判断しなければならないケースがあります。このようなシーンで、重要な決断の後押しにつながるような言葉が損して得取れです。
また、マーケティング手法として使用されることもあります。たとえば、試供品を配ることで商品の良さを消費者にわかってもらい、商品の購入につなげる手法などが、損して得取れの考え方にそったマーケティング手法だといえるでしょう。
損して得取れを座右の銘として、仕事との向き合い方の参考にしてうまくいくケースもあります。人の手助けをしていたことで、自分が困ったときに周りから手助けしてもらえることなどがその例です。
たとえば、以下のように使います。
・残業までするほど頑張っていたら、努力を認められて周りから信頼してもらえるようになった。まさに、損して得取れだ。