「飼い犬に手を噛まれる」の意味と例文
「飼い犬に手を噛まれる」は、日頃から目をかけてきた部下や後輩などから、思いがけない裏切りを受けるという意味のことわざです。可愛がってきた飼い犬に突然噛みつかれることは、そう多くありません。それだけに、実際に噛まれたら大きなショックを受けるでしょう。
飼い犬のように、裏切られると思っていなかった相手から反旗を翻されることのたとえです。
■忠誠心が強い犬を部下や後輩にたとえた言葉
飼い犬としてたとえる相手は、部下や後輩などが適切です。一般的に飼い犬は、飼い主に対して忠誠心が強い存在として知られており、飼い主の手を噛むことは想定外の出来事といえます。つまり、飼い犬にたとえられるのは、普段は決して自分を裏切らないだろうと考えている部下や後輩などです。
■目上の人物や友人からの裏切りには使わない
飼い犬にあてはめるのは、立場としては自分より下である、部下や後輩であることはすでにお伝えしたとおりです。つまり、目上の人や対等な立場である友人ではない点に注意しましょう。そのため部下が上司に対して、あるいは弟子が師匠に対して使うのは適切ではありません。
■【例文付き】使い方
飼い犬に手を噛まれるは、面倒をみて可愛がっている部下や後輩が思いもよらない裏切りをすることのたとえです。目上の人物や、対等な立場である友人に対して使わないよう気をつけましょう。
以下に挙げる2つの例文で、実際にどのように使うかを確認してください。
・長い間可愛がってきた後輩が、貸していたお金を返さないまま音信不通になった。飼い犬に手を噛まれるとはこのことである
・新人時代から目をかけてきた部下が、ある日突然ライバル会社に転職した。噂ではヘッドハンティングを受けたという。飼い犬に手を噛まれた気分だ
「飼い犬に手を噛まれる」の類語・対義語
飼い犬に手を噛まれるには、いくつかの類語や対義語があります。飼い犬に手を噛まれるとセットで類語と対義語も覚えれば、語彙力のアップにつながるでしょう。
飼い犬に手を噛まれるの、類語と対義語のそれぞれの意味や使い方をご紹介します。
■類語
飼い犬に手を噛まれるの類語のうち、ここでは次の3つを解説します。
・恩を仇で返す
・後足で砂をかける
・庇を貸して母屋を取られる
「恩を仇で返す(おんをあだでかえす)」は、受けた恩に感謝するどころか、逆にひどい仕打ちをすることを意味することわざです。「仇」は、自分に向かって害を加えようとするものを指します。
通常、恩をくれた相手に対しては、感謝の気持ちを持って恩返しをするものです。しかし、恩に報いるどころか恩人に対して害となるようなひどい仕打ちをあらわすため、飼い犬に手を噛まれると同じような意味で使います。
「後足で砂をかける」も、恩のある相手を裏切り、さらに去り際に迷惑をかけることのたとえで、飼い犬に手を噛まれるの類語の1つです。
馬や犬が走り始めるとき後ろ足で砂を蹴る様子から転じて、使われるようになりました。後足は「あとあし」と読むため、「うしろあし」と間違えないようにしましょう。
また、「庇を貸して母屋を取られる(ひさしをかしておもやをとられる)」は、恩を仇で返す仕打ちを受けることのたとえです。「庇」は軒先を指し、家の一部である軒先を貸したために、そのすべてが奪い取られることをあらわします。
■対義語
飼い犬に手を噛まれるの対義語には、以下の3つがあります。
・犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ
・犬はその主を知る
・恩を忘れる者は犬にも劣る
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」は、犬でさえ三日飼えば飼い主になついて恩を忘れないのだから、人間は恩を忘れないのが当然であるという意味のことわざです。
「犬はその主を知る」は、受けた恩のありがたさをいつまでも覚えておくようにという教えであり、「恩を忘れる者は犬にも劣る」は、他人からの恩を忘れる人間は犬に劣るという戒めです。
いずれも、恩知らずをいさめる意味でも、単に犬の性質をあらわすためにも使われます。
「犬」を用いたことわざ3つ
人間に従順で身近な犬は、飼い犬に手を噛まれるのほかにも、教訓的なことわざに登場することが多い動物です。たとえば、以下のようなことわざがあります。
1つずつ、意味を確認していきましょう。
煩悩の犬は追えども去らず
煩悩の犬は追えども去らずは、煩悩ははらってもはらっても後からわいてきて、人につきまとう犬のように、追い払ってもなくならないことのたとえです。犬が人間につきまとうのを、煩悩が心から離れないさまにあてはめています。
犬も朋輩鷹も朋輩
犬も朋輩鷹も朋輩は「いぬもほうばいたかもほうばい」と読み、地位や役割などの身分が違っていても同じ主人に仕えるのであれば、平等な仲間であることを意味する言葉です。
鎌倉時代に流行した鷹狩りの際に、鷹と犬が異なる役割で使われていたことから生まれた表現とされています。
尾を振る犬は叩かれず
愛嬌のある人物は他者から危害を加えられにくいという意味で使われるのは、尾を振る犬は叩かれずということわざです。尾を振りながら人間に寄ってくる犬を、愛嬌のある人にたとえており、ビジネスの場面では要領がいい人のたとえとしても使用されます。
「飼い犬に手を噛まれる」の意味をおさえよう
飼い犬に手を噛まれるは、可愛がっていた部下や後輩などに裏切られ、日頃の恩を仇で返されることのたとえです。
信じていた者の裏切りであれば、相手が誰でも使えるわけではありません。一般的に、飼い犬は飼い主に対して従順な存在であるため、部下や後輩が適切です。目上の人物や友人からの裏切りには、使わないようにしてください。
飼い主に手を噛まれるの意味をおさえ、適切に使えるようにしましょう。
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