「オマージュ」とはどういう意味?
絵画や小説、映画など、世界中で様々なオマージュ作品が作られていますが、見る人によっては「パクりではないのか?」と思ってしまうかもしれません。そもそも、オマージュとパクりの違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか? 本記事では、オマージュの意味や似ている用語との違い、有名なオマージュ作品について紹介します。オマージュの正しい使い方について、今一度確認してみてください。
オマージュとは、敬意や尊敬の念という意味です。影響を受けた作家や作品に対して使われます。フランス語の「hommage」をカタカナ読みしたもので、敬意や尊敬以外に賛辞や挨拶などの意味も。
原作に対する尊敬の念や称賛の意味を込めて、類似した作品を作ることを指す「オマージュ」。ただ単に似ている作品を作るということではなく、影響を受けた作品や作家に対して敬意が払われているということが特徴的です。そのため、原作をそのまま流用するのではなく、自分なりのアレンジを加えて表現します。
「オマージュ」の使い方
原作に敬意を払ったうえで、独自のアレンジを加えた作品を作り出すことを意味するオマージュ。「大好きな作品をオマージュして制作した映画だ」、「この小説は、あの作家の小説をオマージュしたものだ」などのように使います。
オマージュは、敬意や尊敬という意味を持つ名詞ですが、「オマージュする」というように、動詞として使われることもあります。
似ている用語との違い
先述の通り、オマージュには類義語が複数あり、つい混同してしまいがちです。誤った意味で使ってしまうと、あらぬ誤解を招く恐れもあります。ここでは、オマージュと似ている用語について紹介。それぞれの意味について、今一度確認してみてください。
1:パクり
オマージュと混同されやすい用語の一つに、「パクり」が挙げられます。「かすめとること」「アイディアなどの盗用」という意味が含まれている「パクり」。オリジナル作品を何のアレンジも加えずにそのまま流用したもの、盗用したものを、「パクり」と表現します。
パクりの語源には諸説ありますが、明治時代頃には既に存在していたといわれています。膨大な時間やコストをかけて作品を制作しているということを無視し、手間だけ省いて同じものをそのまま流用することを指す、パクり。原作に敬意を払ったうえで、独自のアレンジを加える「オマージュ」とは、決定的に異なるといえるでしょう。
また、オマージュの場合は著作権者にあらかじめ許諾を得たうえで制作に取りかかりますが、パクりは無断で制作されるもの。誰が見てもパクりであることが明らかであれば、著作権法違反に問われることもあるため、注意しなければいけません。
2:パロディ
ギリシャ語の「paroidia」を語源とする「パロディ(parody)」。原作を愛のあるユーモアで茶化したものを指します。その作品を揶揄したり、風刺したりする目的で作られることが多いパロディ作品。しかし、必ずしも批判しなければならないということではなく、単に作品を面白くするためにパロディ要素を入れているという場合もあります。
日本でも、古くからパロディの手法が見られます。例えば、和歌の技法の一種である「本歌(ほんか)取り」。古歌の一節を自分の和歌に取り入れることで、和歌をより趣深くすることができます。この場合、原作をそっくりそのまま流用する「パクり」とは異なり、原作に対して敬意を込めたうえでその要素を取り入れているということがいえるでしょう。
また、イギリスを拠点として活動している芸術家・バンクシーも、ミレーの『落穂拾い』や、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』など、名画のパロディ作品を数多く描いています。どれも、作品に独自のアレンジを加えて、ユニークに描いているのが特徴的です。
3:インスパイア
インスパイアは、「触発される」という意味を持つ、英語の「inspire」が語源です。他人の作品に触発され、似た雰囲気の作品を作ることをいいます。映画化もされているブロードウェイミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にインスパイアされた作品として有名です。
原作をそのまま流用することなく、尊敬の念を込めて、独自のアレンジを加えるという点においては、オマージュと共通しています。違いを挙げるとすれば、オマージュは「オマージュする」「オマージュした」などと能動的に表現するのに対し、インスパイアは「インスパイアされた」と受動的に表現することにあるといえるでしょう。
有名なオマージュ作品
では、オマージュ作品として知られているものの中には、何があるでしょうか? ここでは、有名なオマージュ作品について紹介します。
1:『贋作 吾輩は猫である』
夏目漱石の代表作『吾輩は猫である』のオマージュ作品として、内田百閒の『贋作 吾輩は猫である』が知られています。原作の『吾輩は猫である』では、人間が飲み残したビールを飲んで酩酊状態になった猫(吾輩)が、甕の中に落ちてしまうところで物語が完結。
一方、『贋作 吾輩は猫である』は、酔いが醒めた猫が甕の中から這い上がり、ドイツ語講師を務める五沙弥先生の家に上がり込んで生活するという物語です。家を訪れる風変わりな人々の会話を、猫目線で物語るという点は原作と共通していますが、所々に内田百閒のオリジナリティが見られます。
内田百閒は、『吾輩は猫である』に感銘を受けて、漱石の門下生となったことでも知られています。漱石を敬愛していた彼だからこそ、作ることができた作品であるといえるでしょう。
2:『スター・ウォーズ』
アメリカの映画監督、ジョージ・ルーカス氏によって制作された『スター・ウォーズ』。シリーズ化されたこの作品は、その後アニメやゲームにもなり、今でも世界中で愛されています。誰もが知る有名な映画ですが、日本の映画監督・黒澤明氏の作品からの影響が随所に見られることでも知られているのです。
黒澤明氏といえば、日本映画界の発展に貢献した、世界的に有名な映画監督です。彼が制作した作品は、その後世界中で話題になり、多くの映画監督に影響を与えました。
最後に
本記事では、「オマージュ」の意味や使い方、有名なオマージュ作品について紹介しました。原作への敬意を込めて制作されるオマージュ作品。原作をアレンジせずに、そのまま流用する「パクり」とは大きく異なるということが分かりました。
原作を知ったうえで、オマージュ作品に目を向けると、作品をより楽しむことができるかもしれません。
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