テレビや新聞で、「その俳優の人気は鰻登りだ」という表現を目にしたことはありませんか? 縁起の良い意味があることはわかりますが、「なぜ、鰻登りと言うのだろう?」と疑問に思う方もいるでしょう。そこで、本記事では、「鰻登り」の意味や使い方、類語などを解説します。
鰻登りの意味と読み方
「鰻登り」は、「うなぎのぼり」と読みます。「鰻上り」と書くこともありますよ。意味を辞書で確認してみましょう。
気温・物価・評価などが見る間に上がったり、物事の件数・回数が急激に増えたりすること。
ウナギをつかもうとすると手からすべりぬけて上へのぼるからとも、ウナギが川をまっすぐにのぼる姿からともいう。「―の人気」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
気温や物価、評価などが急上昇することを「鰻登り」と言います。なぜ「鰻登り」と言うのか、由来は2つあるとされています。1つ目は、鰻を掴もうとするとぬるぬると滑って、上の方向へ逃げようとするから。2つ目は、どんなに急勾配の川でも、真っ直ぐに登っていこうとする性質があるからとされています。
鰻の上へ上へと登っていこうとする性質が、人の成長や物価の高騰などに例えられるようになったのかもしれませんね。
使い方を例文でチェック!
「鰻登り」という言葉は、ビジネスやエンタメ、スポーツなど色々な分野で使われる言葉です。それぞれの分野での使い方を、例文を交えて紹介します。
1:そのアイドルグループは、デビューしてから鰻登りに人気が出て、色んな音楽番組に出演している。
評価や人気が上がっていくことに、「鰻登り」を使います。鰻がぐんぐん上へと登っていくように、勢いが盛んな様子が伝わってくるようです。ファンからの人気やライブ活動などが好調で、上手くいっていることがわかりますね。
2:優秀な佐藤さんは、鰻登りに出世していった。
「鰻登り」は、ビジネスでの出世にも使われます。最初にチームリーダーに抜擢されたかと思ったら、次は係長、課長とどんどん出世街道を上がっていく人も。仕事ぶりや能力が評価され、順調に昇進していく様子は周囲から羨ましがられそうですね。
3:円安の影響で、物価が鰻登りに上がった。
「鰻登り」は、経済面で使われることもあります。例えば、株価が急騰したり、円安の影響で物価がいきなり上がった時など。「鰻登り」は、ポジティブな意味として用いられることが多い言葉ではありますが、「物事が順調に進む」という意味が含まれているわけではありません。必ずしも良い意味で使われるわけではない、ということを頭に入れておきましょう。
類語や言い換え表現
「鰻登り」は、さまざまな分野で使える言葉ではありますが、独特な言い回しであるため、会話の中で使いにくいこともあるでしょう。ここでは、「鰻登り」と同じような意味合いを持つ言葉を3つ紹介します。
1:躍進
「躍進(やくしん)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)めざましい勢いで進出・発展すること。「―を遂げる」「―する産業界」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
勢いよく発展することを「躍進」と表現します。スポーツニュースなどで、選手が活躍しみごと試合に勝利した時に、「〇〇選手の躍進」などと報じられることも。チームやスポーツ界全体が盛り上がっている感じがイメージできますよね。
(例文)
・バレーボールチームは、様々な試練を超えて躍進した。
・オリンピックで、サッカー日本代表が躍進した。
2:右肩上がり
「後になるほど、数値が大きくなること・状態が良くなること」を、「右肩上がり」と言います。グラフの線で右に向かって上がっていく形から、そう呼ばれるようになったようです。会社の実績や評価が上がっていくなど、ビジネスシーンで使われることが多い表現です。数値が大きくなることによって、「状態が良くなること」がポイントです。
(例文)
・株式市場は右肩上がりになった。
・昇進により、年収が右肩上がりだ。
3:高騰
「高騰(こうとう)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)物価などがひどく上がること。騰貴。「地価が―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
特に物価が上がる時に「高騰」を使います。食費や家賃などの生活費や、原油の値段が急に上がった時などがその例です。急に価格が上がることによって、家計がピンチになるなど、人々の生活がひっ迫する要因になりますね。
(例文)
・物価の高騰は、多くの人を悩ませた。
・インバウンドによりそのエリアは地価が高騰した。
鰻登りの英語表現は?
「鰻登り」は、日本語特有の慣用句なので、英語で直訳するのは難しいと言えるでしょう。「鰻登り」が持つ、「急速に数値が上がること」「(物価などが)高騰すること」という意味を英語に訳すと文章にしやすいですね。ここでは、2つの言葉を紹介します。
1:by leaps and bounds
「by leaps and bounds」は、「急速に、飛躍的に」という意味。物事の成長が勢いよく進んでいる時に使われる表現です。「leaps」は「飛躍」、「bounds」は、「上限、限度」などの意味があります。
(例文)
・That market is growing by leaps and bounds.(その市場は、飛躍的に成長している)
・increase one’s productivity by leaps and bounds.(鰻登りに生産性を向上させる)
2:soar
「soar」は、「高騰」という意味。主に、価格や数値が急激に上昇する様子を表します。一般的には、鳥が高く飛ぶという意味合いがありますが、経済や金融の世界では、物価や価格が急速に上がることを指しますね。
(例文)
・The cost of living has soared in recent years.(近年、生活費が急騰している)
・The temperature soared to record levels.(気温が、記録的な水準まで急上昇した)
最後に
鰻がうねうねと逃げたり、川を上ったりする姿から、「鰻登り」という慣用句が生まれたのは面白いですね。
「鰻登り」は、数値が上がることを指すので、ビジネスや金融、スポーツ、エンタメなどさまざまな場面で用いられます。今度ニュースなどで耳にした時には、本記事で紹介した意味や使い方を思い出してみてくださいね。
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