「好きこそ物の上手なれ」とは?読み方などの基礎知識を解説
「好きこそ物の上手なれ」は、「すきこそもののじょうずなれ」と読みます。「上手」を「うわて」や「かみて」と読まないように気をつけましょう。声に出す際のアクセントは、多くの場合「そ」もしくは「の」につけます。
はじめに、好きこそ物の上手なれとはどのような言葉かを簡単に解説します。詳しい意味や語源・由来、好きこそ物の上手なれのリズム、「こそ」~「なれ」の意味、使い方・例文などを確認していきましょう。
■意味は「好きなことは上達が早いものだ」
【好(す)きこそ物の上手(じょうず)なれ】
好きな事にはおのずと熱中できるから、上達が早いものだ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
意味は、「好きなことは上達が早いものだ」「何事も、好きであってこそ上手になる」ことです。いまは未熟であっても、本当に好きなことならば上達する望みがあることを指します。
好きなことに対しては、誰でも興味を持って積極的に取り組みやすく、自発的に努力し続けられるものです。そのため、好きなことは自然と上達していくものであると表しています。
■好きこそ物の上手なれの由来とは?
好きこそ物の上手なれの由来は古い教えであり、明確にこれだといわれるものはありません。「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」という浄瑠璃・歌舞伎の演目があるため、江戸中期には広まっていたことがわかります。
古来よりあるのが、「上達する秘訣は、まず好きになることだ」という言い伝えです。その言い伝えがことわざになったとされています。
また、中国の思想家の「孔子」の話をまとめた「論語」にも、好きこそ物の上手なれと似た言葉がありました。
「之を知る者は、之を好むに如かず」
……物事を知っている人は、それを好んでいる人には及ばない。
さらにこう続けています。
「之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」
……それを好んでいる人は、それを楽しんでいる人には及ばない。
■好きこそ物の上手なれのリズム
好きこそ物の上手なれは、七五調のリズムが用いられています。七五調とは、7文字と5文字の言葉でできたリズムです。好きこそ物の上手なれでいうと、「好きこそ物の」までで7文字、「上手なれ」で5文字です。
ことわざで多いリズムは、「七五調」のほかにも「五七調」「七七調」「五五調」があります。それぞれ、「五七調」が5文字と7文字、「七七調」が7文字と7文字、「五五調」が5文字と5文字のリズムです。
■「こそ」~「なれ」の意味
「こそ」~「なれ」という言い回しにも意味があります。「なれ」が命令形のように感じるためか、好きならば上手でなくてはならないという意味で使う場合があるものの、これは誤用です。
「こそ」~「なれ」とは「係り結び」と呼ばれる表現です。直前の言葉を強調する強意の係助詞である「こそ」を使い、文末に「なり」の已然形である「なれ」で結んでいます。「係り結び」は古典文法には多い表現ですが、「好きこそ物の上手なれ」は現代でも使われている珍しい表現です。
■好きこそ物の上手なれの使い方を例文でチェック
それでは、実際の使い方を例文で確認しましょう。
・好きこそ物の上手なれとはいうけれど、彼の海外映画好きが高じて外国で勤務することになるとは思わなかった。
・まさに好きこそものの上手なれだね。練習をしろといわなくても、いつも自分から練習を始めているよ。
・好きこそものの上手なれというし、その趣味を仕事にしてみるとうまくいくかもしれないね。
このように、「人を褒めるとき」や「好きなものに特化すると良いこと」「まずは好きになると良いこと」を表現したいときなどに使います。座右の銘としても人気のことわざです。
好きこそ物の上手なれに似たことわざと対義語表現
意味が似たことわざと、反対の意味を持つ対義語表現は、以下のとおりです。
〈意味が似たことわざ・類語表現〉
・道は好む所によって安し・道は好む所によってやすし
・好きは上手の元
〈対義語表現〉
・下手の横好き
・下手の考え休むに似たり
それでは、意味が似ていることわざや対義語表現を確認し、関連語もあわせて理解を深めましょう。
■「好きは上手の元」などの類語表現・似たことわざ
類語表現・似たことわざの例は、以下のとおりです。
・好きは上手の元
……好きであることが上手になる理由だ。
・道は好む所によって安し
……好きなことは自然と上手になれる。上達への道のりは容易だ。
「好きは上手の元」は、「上手になりたいならば好きになったほうが良い」と推奨するニュアンスが強いです。
また、「道は好む所によって安し」という表現では、「道」は「上達への道のり」、「安し」は「容易であること」を指します。
■「下手の横好き」など、意味が反対の対義語表現
反対の意味がある対義語表現は、「下手の横好き」などです。
・下手の横好き
……上達はせず下手であるけれど、物事を好き好み、熱心なこと。
・下手の考え休むに似たり
……下手な人がいくら考えても、時間を浪費するだけで休むのと変わらないこと。
下手の横好きは、自分の腕前を謙遜するときや、知人に関して話すときなどに使います。自分のことを話す際は、「下手だけど好きでやっている」というニュアンスです。知人に関して話すときは、不快にさせてしまう可能性があることに注意が必要です。
また、「下手の考え休むに似たり」は、相手をからかうときに使います。
下手の横好きに似た表現に、「下手の馬鹿好き」「下手の物好き」「下手の悪好き」などがあります。また、下手の考え休むに似たりに似た表現は、「下手な思案は休むに同じ」「下手の考え休むに如かず」などです。
好きこそ物の上手なれという言葉の意味を理解しよう
好きこそ物の上手なれとは、「好きなことは上達が早いものだ」「何事も、好きであってこそ上手になる」という意味です。「人を褒めるとき」や「好きなものに特化すると良いこと」「まずは好きになると良いこと」を表現したいときなどに使います。また、座右の銘としても人気のことわざです。
好きこそ物の上手なれに似たことわざ・類語表現は、「好きは上手の元」「道は好む所によって安し」などがあります。一方、好きこそ物の上手なれの対義語表現は、「下手の横好き」や「下手の考え休むに似たり」などです。
意味や語源、関連語などをあわせて確認し、言葉を正しく理解しましょう。
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