こんにちは、editor_kaoです。
先日、話題の映画『哀れなるものたち』を観てきました。ストーリーもすばらしかったのですが、同じくらい衣装とセットが素敵すぎて!!!
舞台は架空のヨーロッパ。どの街も華やかでラグジュアリーで、あの世界観に浸るだけでも価値があると思いながら鑑賞していたら、セットのディテールがしっかり登場する場面が出てきました。物語を追っていると見逃してしまうけれど、お屋敷の天井や柱はこういうデザインだったのか……といったことがわかって、細部に至るまでの丁寧な作品づくりに改めて感動。美しいものを見るのって、本当に幸せな気持ちになりますね。
ラグジュアリーなファッションに触れたら、まさかの弊害が!?
それとは別の話ですが、ファッションエディターという仕事をしていると、普段は絶対に目の当たりにすることのできない、美しいものに触れることができます。来月も、老舗真珠店の「ゴールドカラーのパール」というものを撮影する予定があり、「絶対絶対きれいなはず!」と、ワクワクしているところです。そんなものが世の中にあるのかという驚きもありますし、自分で買うことはできない高級品だけれど、見たり、ちょっと触ったりできるのは、この仕事をしてきてよかったなと思うことのひとつです。
ただし美しいもの、素敵なものばかりに触れていると、困ることもあります。それは「目ばかり肥えてしまい、実生活には反映できない」こと。たとえば撮影でハイクラスのジュエリーばかり見続けて、いざ購入しようとしたときに「えっ!こんなに小さくなっちゃうの!?」とか思っちゃったり。ジュエリーだけではありません。ホテルでロケをするときは、大体がスイートルーム。いちばん広い部屋を体験してしまうものだから、実際に自分で泊まってみようという気にも、なかなかなれなかったり……。
目が肥えると、いろんな面で暮らしは豊かになってくる
ちなみに私は、ファッションだけでなく、アートや工芸、民藝といったジャンルも(少しながらですが)手がけています。全く知識がない状態から、おっかなびっくりスタートしたものの、いくつか経験を重ねていくうちに、「どういうものが素敵とされているのか」くらいは、わかるようになりました。作家や学芸員、ギャラリストの方々に取材をすることで、自分なりにいいなと思うものが出てきたりすると、また楽しくなってきます。ひとつひとつは高額ではないけれど、取材先でお気に入りの器や工芸品を手に入れて、生活に取り入れると、心も豊かになっていきます。いつかおうちにアートを飾れたらいいなという気持ちも、ムクムクと湧いてくるように。
これだって同じ「目が肥える」ということ。『哀れなるものたち』を観て、セットが気になってしかたないというのも、これまで数々のファッションやアートを目にしてきたからこそ、生まれた感情なわけで……。そうなるとお買い物のハードルは高くなってしまったかもしれませんが、人生全体で考えたら、いいことのほうが多いと思います。だからまぁ、結果オーライということにしましょうか。いちばん欲しいジュエリーは買えないかもしれないけど!
【今日のひと手間】
工芸や民藝の魅力を知ってから、買いそろえている器類。清水硝子の江戸切子で、これはモネの『陽を浴びるポプラ並木』からインスパイアされた、限定デザインです。スラリと伸びるポプラの木がグラフィックにアレンジされていて、「工芸」と聞くと堅苦しい印象だったけれど、こんな世界があったなんて!深く考えず、自由に楽しんでいいんだと、感じるきっかけになった作品です。
エディター
editor_kao
大人の実用ファッションを中心に、人物インタビューや日本の伝統文化など、ジャンルレスで雑誌やブランドサイト、ウエブマガジンで活動中。また、インスタグラム@editor_kaoでは、私服コーディネートを紹介するかたわら、さまざまなブランドや百貨店とのコラボレーションも手がけている。ライフスタイルWEBメディアkufura(クフラ)でも「4ケタアイテムで叶えるオシャレ」を連載中。
イラスト/柿崎こうこ
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