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「所以」とは理由やいわれを意味する言葉のこと
「所以」(ゆえん)とは、物事が起こった原因を指す「いわれ」や、理由などを意味する言葉のことです。以下のように「故(ゆえ)になり」という言葉が変化したといわれています。
【所以】ゆえん
《漢文訓読語の「故(ゆえ)になり」の音変化「ゆえんなり」からか》わけ。いわれ。理由。「人の人たるー」「彼が好かれるーは明るさにある」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「ゆえん」というフレーズは耳にしても、実際に文字で見ると読めなかったり、語源については知らなかったりすることも多いのではないでしょうか。
まずは「所以」の意味や読み方、語源について確認していきましょう。
所以の意味や読み方
「所以」という言葉は、「ショ」「ところ」と読む「所」という漢字と、「イ」「もって」などと読む「以」という漢字の組み合わせでできています。
ただし、読み方はどちらの漢字にも含まれていない「ゆえん」です。この読み方は、以下に続く語源に関係すると考えられます。
所以の語源
「所以」という言葉は、漢文訓読語の「故(ゆえ)になり」が変化したものだといわれています。
漢文訓読とは、中国の漢文を日本語の文脈に直す読み方のことです。漢文訓読では「レ」「一・二」などの返り点や、片仮名の送り仮名などをつけながら漢文を日本語へと訳していきます。
漢文訓読語である「所以」は、そのなかで生まれたと考えられます。「所以」という字は、漢文を訓読みしたときの「以て~する所となる」という表記に由来するものです。
このように古風なイメージの強い「所以」ですが、実際には日常生活やビジネスシーンでも用いられています。
「所以」と同じ読み方!「由縁」との違い
「所以」と同じ読み方をする言葉に「由縁」があります。「由縁」もまた、「所以」と同様に「わけ」や「理由」などを指す言葉です。
【由縁】ゆえん
1.事の起こり。由来。わけ。「地名のーを尋ねる」
2.関係。ゆかり。「百姓町人はーもなき士族に平身低頭し」〈福沢・学問のすゝめ〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「所以」と「由縁」の大きな違いは、「由縁」が物事の関係性を表す点です。主に、関わり合いやつながりなどを意味するときに用いられます。
・調べてみれば、私にはなんの由縁もない場所だった。
・祖母の代から由縁がある土地に足を運んだ
「所以」と「由縁」を正しく使い分けられるよう、それぞれの違いをよく理解しておきましょう。
「所以」の類語や言い換え表現
「所以」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
類語や言い換え表現を知っておくと、会話の表現の幅がさらに広がります。それぞれの使用例も含め、正しい意味合いを理解しておきましょう。
事由(じゆう)
「事由」は「所以」と同様に、物事が生じた原因や理由を意味する言葉です。また、法律で原因となった事実を指す際に用いられます。「所以」に比べ、日常生活からビジネス、法律まで幅広い分野で使用できる言葉です。
じ‐ゆう〔‐イウ〕【事由】
1 事柄の生じた理由・原因。事のわけ。「事由のいかんにかかわらず遅延は認めない」
2 法律で、理由または原因となっている事実。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・後のトラブルを避けるためにも、契約を結ぶ際の事由を明確にすべきです。
・裁判を行う事由は、判決を下す際の重要な要素となり得る
・どんな事由があるにせよ、連日の遅刻を認めるわけにはいきません
理屈(りくつ)
「理屈」は、物事の道理や道筋を意味します。無理につじつまをあわせたような、こじつけの理論も意味する言葉です。「所以」の類語ではあるものの、理由やいわれなどの意味は含まれていません。
そのため、活用方法も以下のように「所以」とは異なります。
り‐くつ【理屈/理窟】
1 物事の筋道。道理。「―に合わない」「―どおりに物事が運ぶ」
2 無理につじつまを合わせた論理。こじつけの理論。へりくつ。「―をこねる」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・いつも理屈にあわないことばかり言われている
・彼に任せておけば理屈どおりに事が運ぶだろう
・長々と理屈をこねるのはやめていただきたい
・人の感情は理屈で割り切れるものではないでしょう