「しかし」の意味
「しかし」は、それまでの話の流れと、反対のことを発言する際に用いる言葉です。ひらがな表記が一般的ですが、漢字では「然し」または「併し」と書きます。

(c)AdobeStock
ビジネスシーンでは、逆説的な意見や、相手と異なる考えを述べる際に活用できます。
- 今回のプランは、おおむね順調に進んでいます。しかし、生産性を向上させるためには、さらなる検討が必要です。
- おっしゃるとおり、A案はたしかによい案だと思います。しかし、コスト面に関しては見直しの必要があるのではないでしょうか。
また、以下のように発言に感情を込める際にも使用できます。
- しかし、短期間でよくこれほど完成度の高い製品を作り上げたものだ。
デジタル大辞泉 「然し」の意味・読み・例文・類語
しか‐し【▽然し/▽併し】
[接]《「しかしながら」の略かという》
1 今まで述べてきた事柄を受けて、それと相反することを述べるときに用いる。そうではあるが。けれども。「こんなことは言いたくない。―立場上言わなければならない」
2 今まで述べてきた事柄を受けて、話題を転じるときに用いる。それはともかく。それはそれとして。「よく思い切って会社をやめたね。―これからどうするつもりなの」
3 感情をこめて言いはじめるときに用いる。それにしても。なんとまあ。「―よくこんなりっぱな家を建てたものだ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「しかし」の類語や言い換え表現
「しかし」は、幅広いシーンで活用できる言葉です。ただし、使い方によっては少々硬い印象になります。

(c)AdobeStock
反対意見を述べる場合は、相手に対して強く反発するイメージを与えてしまうかもしれません。その際は、以下の類語や言い換え表現の活用を検討してみましょう。
「だが」
「だが」は、「しかし」と同様に反対の意見を述べる際に用いる表現です。主に、「書き言葉」として使用します。
書き言葉とは、不特定多数が目にする文章や、取引先へのメール文などで使用する言葉のことです。対して、親しい人との会話や個人のSNSなどで使う言葉は「話し言葉」と呼ばれます。
書き言葉である「だが」は、かしこまった印象を与えやすい語句です。ビジネスシーンでは、以下のように活用してみましょう。
- A社との取引はたしかに大きなビジネスチャンスだが、リスクについてよく精査しなければならない。
- 今回の企画はたしかに失敗だった。だが、今後に向けたよい経験になったと考えている。
「ところが」
「ところが」は、予想した事態とは反対の事柄について述べる際に使用します。「期待に反して」という意味が含まれる点が、「しかし」との違いです。
そのため、単純に反対したり逆説的な意見を述べたりする場面に「ところが」を使うと、若干不自然になります。
たとえば、以下のように前後の文章が反対の関係にある場合は「ところが」ではなく、「しかし」を使ったほうが自然です。
- 業務を見直す考えには賛成です。しかし、1週間以内にすべてを変更するのは無理だと思います。
「ところが」は次のように、期待に反した事態が起きた際に使用してみてください。
- 今回の新商品は、当初から売り上げが懸念されていた。ところが、思いのほか顧客から好評で、SNSでも話題になっている。
「けれども」
「けれども」も、「しかし」と同じ意味をもつ書き言葉です。また、文章の最後に続けると、角が立たないやわらかな言い回しになります。
以下のように、不安を抱えつつ、「こうなればよいな」という気持ちを伝えたいときにも使用してみてください。
- 彼は自分の意志を曲げない性格だ。けれども、話し合えばいつかわかり合えると信じている。
- ぜひご一緒したいところですけれども、その日はあいにく予定が入っておりまして。
- なんとかこのまま、雨が降らないといいんですけれども……。
「とはいえ」
「とはいえ」は、「そうはいっても~」と、前に続く事柄と反する内容を述べる際に使用します。書き言葉にあたるため、会話で使うとやや硬い印象を与えることが特徴です。
- おかげさまで無事にトラブルを乗り越えました。とはいえ、原因が判明するまで、まだまだ油断なりません。
- 資格試験に合格したとはいえ、実務に役立てるには、まだまだ経験不足だ。
「だけど」
「だけど」は、「だけれども」のくだけた言い方です。「しかし」と意味は同じですが、カジュアルな会話やメール文などに適しています。
- とてもすてきなアイデアだけど、実現するのは難しいんじゃないかな。
- たしかにおいしいお店だけど、ランチには料金が高すぎるよ。
「しかしながら」
「しかしながら」は、「しかし」のより丁寧な表現です。ビジネスでは、自分の意見を主張したいときや、フォーマルなシーンに適しています。
- たしかに売り上げが上がっているのは事実です。しかしながら、忙しさのあまり、現場が疲弊していることに目を逸らしてはいけないのではないでしょうか。
「ごもっともですが」
相手の意見を肯定したうえで、自分の意見を述べるときは「ごもっともですが」を使用してみましょう。「しかし」と、相手の意見を否定するよりも、やわらかなイメージを与えられます。
- 賃上げを考えてみてはというご指摘はごもっともですが、ここ数か月は利益が上がらず、すぐには対応できない状況です。
ビジネスで「しかし」を用いる際の注意点
「しかし」という言葉は、使い方や口調によっては相手を強く否定するような印象を与えます。頭ごなしに相手を否定しては、話し合いもうまくいかなくなってしまうかもしれません。

(c)AdobeStock
とく特に、相手が目上や取引先の場合は、相手の意見を受け止める姿勢が大切です。ご紹介した「ごもっともですが」などを使い、失礼のない対応を心がけましょう。
ただし、「ごもっともですが」は多用しないように気を付けてください。何度も繰り返していると、かえって不信感を抱かれる恐れがあります。
大切なのは、相手の意見に同意したうえで自分の考えをしっかりと述べることです。反対の意見を述べるときこそ、相手の気分を害さない言葉遣いを意識しましょう。
「しかし」の言い換え表現を知りビジネスで役立てよう

(c)AdobeStock
「しかし」は、それまでの話や文章の流れと反対の内容を述べるときに使います。相手との関係性や状況によっては、類語への言い換えを検討してみてください。
とくに、反対意見を述べる際は、その場に応じたコミュニケーションが求められます。「しかし」の言い換え表現や正しい意味を知り、ビジネスで役立てていきましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock
あわせて読みたい