チェックメイトの正しい意味とは?

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スポーツやビジネスの世界、ゲームやアニメでも「チェックメイト」「チェックメート」という言葉が使われることがあります。正しい意味や本来の用途から、派生した日常表現まで紹介します。
チェックメイトの正しい意味
チェックメイトは、本来チェスにおいて使用される用語です。相手の「王の駒」の逃げ道をふさぎ、勝利することを意味します。将棋における「詰み」に当たる状態で、一説にはペルシャ語の「王は死んだ」が由来だといわれています。
チェックメート【checkmate】
チェスで、王手詰め。また、その宣言。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
チェスの「チェック」は将棋の「王手」と同じで、相手の王は攻撃されているものの、まだ逃げ道が残されている状態です。
チェックメイトでは王が完全に追い詰められており、もう逃げる手段はありません。つまり、攻撃されたほうの敗北が確定し、ゲームの決着がついたことを意味します。
勝つ立場の比喩表現として使う場合
チェックメイトは、日常生活におけるさまざまな場面で使われています。
ビジネスの世界でも、チェックメイトをかけることになぞらえて使用することがあります。たとえば、競合他社の動きを完全に封じ込めた場合や、戦略によって市場での優位性を確立した際などに「チェックメイト」と表現します。
また、議論や交渉の場面でも、相手の主張に対して反論の余地のない証拠を示した場面で使用されます。そのほか、恋愛の駆け引きにおいて、相手の心を完全につかみ恋が成就した様も「チェックメイト」といえるでしょう。
このように、完全勝利や圧倒的優位を示す比喩的な表現として広く使える言葉なのです。
負ける立場の比喩表現として使う場合
チェックメイトは、かけられた者にとって「完全な敗北」「逃げ場のない状態」を表す言葉でもあります。似た言葉には「ゲームオーバー」「詰み」「打つ手なし」などが挙げられます。
企業経営においては、深刻な業績不振や倒産危機がチェックメイトに当たる状況です。学業では成績不振による留年リスク、就職活動では内定獲得の見通しが立たない状況など、追い込まれた場面を表現する際に使用されます。
チェックメイトの類語

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チェックメイトは海外から伝わった表現ですが、日本語にもチェックメイトと同じ意味の言葉があります。本項では、「決定打」「万事休す」というチェックメイトの2つの類語を紹介します。
決定打
「決定打」は、チェックメイトした立場から見た類語です。スポーツの世界では、試合の勝敗を分ける重要な一打や決め手として表現されます。対戦相手やビジネス上の競争相手に対して、とどめの一撃を与えることを指し、次のような使い方が可能です。
・決定打は、4番バッターが8回裏に打った逆転タイムリーだった
・あの提案が、長引いていた商談を成功に導く決定打となった
・革新的なアイデアは、停滞していたプロジェクトを前進させる決定打になるだろう
このように、それまでの状況を一変させ、目標達成や勝利に導く重要な要素として使用される表現です。
万事休す
「万事休す」は「ばんじきゅうす」と読み、チェックメイトされた立場から見た類語です。中国の歴史書『宋史』を出典とする言葉で、万事は「すべて」、休すは「おしまいになる」という意味です。
あらゆる手段を尽くしても打つ手がなく、すべてが終わりを迎えた状態を表現します。例文は以下の通りです。
・残り時間が少なくこの圧倒的な点差では、万事休すというほかない
・最後の頼みの綱だった取引先にも断られ、もう万事休すだ
同じ意味の言葉には「さじを投げる」「お手上げ」「刀折れ矢尽きる」などがあります。期限に間に合わず諦めざるを得ない状況や、取り返しのつかない失敗をしてしまったときなど、多様な場面でこの言葉が使われます。
チェックメイトの反対語

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チェックメイトの反対語には、「危機一髪のところを逆転した・何とか逃れた」といった意味の言葉があります。それぞれの意味や例文をチェックしましょう。日常ではなかなか使わない言葉ですが、覚えておけばいつか役に立つかもしれません。
起死回生
「起死回生」は、〝死にそうな状態から生き返らせる〟という意を持つ「起死」。そして、〝生き返る・生気を取り戻す・物事が元の状態に復する〟ことを意味する「回生」が組み合わさった四字熟語です。危機的な状況から一気に好転させ、立て直すことを表します。たとえば、以下のような使い方ができます。
・絶体絶命といえるピンチに追い込まれたが、起死回生のチャンスをつかんだ
・負けが確実と思われた展開から逆転勝利を収めた、あの「起死回生の一手」は見事だった
起死回生はしばしば、「~を図る」「~のチャンス」「~の一手」といった定型句で使われます。業績不振から立て直しを図る場面や、困難なプロジェクトを成功に導くといったシチュエーションで、希望を込めて使われる言葉です。
虎口を逃れる/虎口を脱する
「虎口(ここう)を逃れる」もしくは「虎口(ここう)を脱する」とは、虎の口から逃げ出すように、死を覚悟するような危険からなんとか脱出することを意味します。
言葉の由来は、中国の歴史書「叔孫通伝(しゅくそんとうでん)」です。紀元前3世紀末の秦王朝時代に、反乱の報告を受けた皇帝が学者たちの意見を求めました。多くの学者が「危険な反乱です」と答えて処刑されてしまいますが、叔孫通だけが「単なる盗賊です」と答えて命をつなぎました。
真実を言わなかったことを批判されると、叔孫通は「自分は虎の口の中から逃げ出すこともできないような危機の中にいた。盗賊だと言わなければ私も殺されていただろう」と答え、都から逃亡したそうです。
・会社は経営危機に陥ったが、大胆な改革を行って虎口を脱した
・一時は死を覚悟しましたが、どうにか虎口を逃れることができたのです
上記のように、会社の倒産危機を乗り越えたときや、重大な危険からの九死に一生を得たような場面で使われます。
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