紫陽花は土のpH値で花色が変わる性質があります。
Summary
- 紫陽花は土壌のpHによって花色が変わる植物で、日本で古くから親しまれている。
- 代表的な品種には、ガクアジサイ・セイヨウアジサイ・ヤマアジサイがある。
- 『万葉集』でも詠まれた歴史を持つが、平安時代以降は文学から遠ざけられていた。
梅雨の時期になると、街角や庭園に鮮やかに咲き誇る紫陽花。日本では昔から季節を象徴する花として親しまれていますが、その魅力は見た目の美しさだけではありません。紫陽花には奥深い歴史や文化的背景があり、全国各地には紫陽花を楽しめる名所が点在しています。
本記事では、紫陽花の基礎知識から、歴史・名所、そして家庭での育て方まで、紫陽花の魅力を徹底解説します。
「紫陽花」とは?|基本知識と種類を学ぶ
紫陽花は、梅雨の時期に目を楽しませる花のひとつです。その特徴や種類について詳しく知ることで、紫陽花の魅力をより深く味わうことができます。ここでは、紫陽花の特性や種類ごとの違いについて、できるだけ具体的に説明します。

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紫陽花の特徴と環境との関わり
紫陽花(アジサイ)は、ユキノシタ科(APG分類:アジサイ科)の落葉低木で、日本国内でも広く栽培されています。春から夏にかけて成長し、梅雨の時期に花を咲かせることで知られています。
紫陽花の特徴のひとつに、土壌の性質による花色の変化があります。紫陽花の花は、一般的に「青」「紫」「ピンク」などの色合いで咲きますが、その色は土の酸性度(pH値)によって変わるとされています。
・酸性の土壌 → 青みが強くなる
・アルカリ性の土壌 → 紅色が強くなる
これはアルミニウムが深く関係しており、その他にも土壌に含まれる肥料要素の差異も影響があるといわれています。

紫陽花の種類とそれぞれの特徴
紫陽花にはさまざまな品種があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、代表的なものを3つ紹介します。
ガクアジサイ(額紫陽花)
紫陽花の原種で、装飾花(大きな花びらのように見える部分)が周囲を縁取るように咲くのが特徴。中央部分には小さな両性花があり、控えめながらも風情のある姿を見せます。庭園や寺院などでよく見られ、日本の風景に馴染みやすい品種です。
セイヨウアジサイ(西洋紫陽花)
ヨーロッパで品種改良された紫陽花で、一般的に「手まり咲き」と呼ばれる球状の花を咲かせます。色鮮やかで華やかな印象があり、家庭の庭や公園などでも広く栽培されています。
ヤマアジサイ(山紫陽花)
ガクアジサイに似た花を咲かせますが、ひとまわり小さいことから「コガク」、また山あいの沢沿いに自生することが多いため「サワアジサイ」とも呼ばれます。風情があり、鉢植えとしても育てやすいことから、茶花としても好まれます。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
紫陽花と日本文化|歴史に見る紫陽花
紫陽花は、古くから日本の風景の一部として親しまれてきました。ここでは、紫陽花の歴史的背景について紹介します。
紫陽花の歴史と日本での広がり
紫陽花は、ガクアジサイを母種として日本で生まれた園芸品種であり、奈良時代にはすでに存在していたといわれます。その名は、青い花が集まって咲く姿に由来するとされています。現在では、公園や庭園などに広く植えられ、各地に名所も数多く見られます。
古くは『万葉集』において、大伴家持(おおとものやかもち)や橘諸兄(たちばなのもろえ)によって詠まれていますが、平安時代の文学作品にはほとんど登場しません。これは、紫陽花の花色が変化することが、心の移ろいや節操のなさと結び付けられ、道徳的に好ましくないとみなされていたためと考えられています。そのため、近世までは目立たない存在でした。
一方、西洋では色が変わる特性がむしろ珍重され、多様な品種の改良が積極的に進められました。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
紫陽花の名所は?
紫陽花は、庭園や寺院の風景にも深い関わりを持っています。ここでは2つの名所を紹介します。
1. 明月院(あじさい寺)
神奈川県鎌倉市にある明月院(めいげついん)は、「あじさい寺」として知られています。境内には数千本もの紫陽花が植えられ、梅雨の時期になると見事な青一色の風景が広がり、「明月院ブルー」ともいわれています。
2. 三室戸寺
関西屈指の紫陽花名所として知られる三室戸寺(みむろとじ/京都府宇治市)には、約50種類・2万株以上の紫陽花が植えられています。特に「ハート形の紫陽花」が見られることで有名で、梅雨の時期には多くの観光客が訪れます。

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家庭で楽しむ紫陽花の育て方
紫陽花は、庭植え・鉢植えのどちらでも楽しめる植物ですが、それぞれの育成環境に適した管理が求められます。季節ごとの手入れや、水やり・肥料の与え方に注意しながら、長く美しい花を咲かせるためのポイントを紹介します。
庭植えで楽しむ紫陽花の育て方
庭に植える場合は、日照条件や土壌の性質を考慮しながら、適切な環境を整えることが大切です。
1. 植える場所の選び方
紫陽花は半日陰を好みますが、直射日光を適度に受けることで元気に育つこともあります。庭植えにする際には、以下のような環境が適しているとされています。
・適度な日当たりと風通しが確保できる場所
・夏場の強い西日を避けられるスペース
・水はけがよく、適度に湿り気を保てる土壌
特に、夏場の高温で葉焼けしやすい場所では、木陰や建物の陰になる時間帯があるかどうかも考慮すると、より健やかに成長しやすくなります。
2. 水やりと土壌管理
庭植えの紫陽花は、土壌の水分を適度に保つことで、美しい花を咲かせやすくなります。
・梅雨時期は自然の雨に任せ、極端に乾燥しない限り追加の水やりは控える
・夏場は土が乾きすぎると葉がしおれるため、朝か夕方の涼しい時間帯にたっぷりと水を与える
・土壌のpHによって花の色が変化するため、好みの色合いに育てたい場合は、酸性・アルカリ性の調整を行う
<花色を変えたい場合の土壌調整方法>
・青色の花を咲かせたい場合 → 酸性の土壌(ピートモス・硫酸アルミニウムを混ぜる)
・ピンク色の花を咲かせたい場合 → アルカリ性の土壌(苦土石灰を加える)
ただし、品種によっては土壌のpH変化の影響を受けにくいものもあるため、すべての紫陽花で色が変わるわけではありません。

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鉢植えで楽しむ紫陽花の育て方
鉢植えの場合は、土の管理や水やりの頻度に注意することで、より美しく育てることができます。
1. 鉢の選び方と土の準備
鉢植えの紫陽花は根詰まりを起こしやすいため、適度な大きさの鉢を選ぶことが重要です。
・5号〜8号程度の鉢(株の大きさに応じて選ぶ)
・排水性のいい鉢底石を敷く
・市販の「アジサイ専用培養土」を使用するか、赤玉土と腐葉土を混ぜた水はけのいい土を作る
2. 水やりと日当たりの管理
鉢植えの場合、庭植えよりも乾燥しやすいため、水やりの頻度を調整する必要があります。
・土が乾いたらたっぷりと水を与える(目安:1日1回、夏場は朝夕の2回)
・長時間の直射日光は避け、半日陰に置く
・風通しのいい場所に置くことで、病害虫の発生を防ぐ
特に夏場は、鉢の中の温度が上昇しやすいため、根の負担を軽減するためにも直射日光を避けた管理が推奨されます。
季節ごとの紫陽花の手入れ方法
年間を通じて適切な手入れを行うことで、翌年も元気な花を咲かせやすくなります。
1. 剪定のタイミング(7月〜8月)
花が咲き終わった後の剪定が、翌年の花付きに影響するといわれています。
・花が終わったら、すぐに剪定する(遅くても8月中に)
・花のすぐ下の2〜3節を残して切る(新しい花芽が形成される位置を見極める)
・強剪定は控え、株のバランスを見ながら整える
2. 冬の防寒対策(12月〜2月)
寒冷地では、冬の冷え込みが厳しいため、防寒対策を施すと枯れにくくなります。
・庭植えの場合は株元に腐葉土を敷く
・鉢植えの場合は室内や軒下に移動させる
最後に
- 紫陽花は酸性土壌で青く、アルカリ性で赤くなる性質を持つ。
- 紫陽花の有名な名所として、鎌倉の明月院や京都の三室戸寺が挙げられる。
- 庭植えでは日陰と通気を確保し、鉢植えでは水切れと根詰まりに注意する。
紫陽花は、梅雨の時期を彩る美しい花であり、日本文化や歴史と深く結びついています。全国の紫陽花名所を訪れたり、自宅で育てたりすることで、より身近に紫陽花の魅力を感じられるでしょう。梅雨の季節を楽しむ一つの方法として、紫陽花の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
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Domani編集部
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