アラフォー女子のセカンドハウス物語【カリスマエステティシャン真理子の場合】/story3 | Domani

Domani

ニッポンのワーママはかっこいい!

  • facebook
  • twitter
  • instagram
  • youtube
  • search
 

WOMEN美しい女性には美しい物語がある。

2018.10.20

アラフォー女子のセカンドハウス物語【カリスマエステティシャン真理子の場合】/story3 物を減らしてわかる家のよさストーリー

マイホームと別に、自分だけの「セカンドハウス」を見つけたワーキングウーマンの実録ストーリー。エステ開業と同時に銀座のマンションを借りた真理子さん(仮名)の3回目。

Text:
南 ゆかり(フリーエディター)
Tags:

story3 都心と郊外、3つの家を行き来してわかったこと

Profile
真理子さん(41歳/仮名)夫あり
職業/エステティシャン
趣味/漢方、習字
住まい/東京・立川市(戸建・購入・地上2階2LDK+半地下1部屋)
    東京・中央区銀座(マンション・賃貸・35平方メートル・家賃20万円)

○story1 ホームシアター付きのマイホーム
○story2 銀座のセカンドハウスで夜景を観て暮らす
○story3 物を減らしてわかる家のよさストーリー

家を売るという決断

銀座と立川、銀座と静岡を行き来するときの真理子は、いつもトートバッグひとつ。どこの家にも数日分の着替えはあるし、それ以外は最小限で生活できるようになっていた。スマホだけでパソコンも持ち歩かないし、顧客データはどこからでも見られるようにクラウド上に保管している。

行き来のペースは決まっていて、通常の平日は銀座に泊まり、銀座のサロンが休みの火曜だけ、立川に戻る。最近は、立川の家の片付けをしたり、必要なものを持って帰るだけで、泊まらずに帰ることが多くなった。太郎との会話も、連絡事項や必要最低限のことだけ。先日、久しぶりに1泊してみたら、どうにも体調がよろしくない。太郎は2階の寝室のベッドで寝て、真理子は1階のリビングのソファで寝たせいだろう。寝室に真理子のベッドはそのままあるけれど、使う気になれなかったのだ。

結婚当初は活用していたアイランド型のキッチンも、すっかり宝の持ち腐れになっている。シンクに夫の使ったカップが置かれているので、真理子は銀座に帰る前に洗ってあげる。

この日も、真理子は冬物の着替えを取りに帰っただけで、すぐに家を出ようとした。すると、太郎が玄関まで来て話しかけてきた。

「真理子さん、僕、この家を売って、そのお金で映画づくりの資金にしようと思うんだ」

一瞬戸惑ったけれど、彼の「しよう」という前向きな言葉を久しぶりに聞いて、「そうよ、それがいいわよ!」と私は明るく答えた。実は半年前から、映像製作プロダクションに社員として採用され、最近は部長職ももらっていたらしい。でも、会社は辞めて、やはり最初の夢を貫くという。そのための脚本も書き始めているらしい。ようやく、というのが正直なところだ。

玄関での立ち話ではあったけれど、そんな近況を聞きながら、太郎は真理子にそのサポートをして欲しいんだろうと察した。本当は、家にいて欲しいけれどそれを言えないということも、なんとなくわかった。言葉にしなくても、相手の気持ちを察することができるのは、長くエステティシャンをやってきたスキルだ。

「思えば、彼から私の仕事について何か言われたことは一度もないですね。辞めてほしいとか、家にいてほしいとか。どうしてだと思います? 思っていても、それを言うと自分の責任になるから。自分が辞めさせたみたいに、なっちゃうから、嫌なんだと思います。そういう人なんです」

そんな太郎のことを考えると、胸のあたりがギュギュっとなるので、いけないいけない、と深呼吸をする。ひとつ、ふたつ。胸と頭が軽くなったら、仕事に行く合図。今日も真理子のゴッドハンドを待っている人がたくさんいる。立川から都心に向かう電車の中で、もういちど今日のお客さまのことを考える。移動の1時間のうちに、すっかり頭はエステティシャに切り替わっていた。

そして月末になれば、東京駅から新幹線に乗って1時間半かけて静岡の実家に帰る。その時間は、ふだんできない読書をしたり、友人にお見舞いの手紙を書いたりする。都会から緑の多い場所に移動する時間は、ゆっくり人を思いやるのに最適だ。

「セカンドハウス、サードハウスをもっていると、よく移動が大変でしょうって言われます。でも、移動時間があるからできることもある。疲れてなにもやる気になれないときは、ぼーっと景色を見るだけでもいいんです。その時間があるから、休みが少なくても気になりません」

物を減らして気づいたこと

最近太郎は、ホームシアターの機材をオークションに出したり、大量のDVDや本を処分し始めたらしい。家の買い手はまだついていないようだが、太郎の気持ちは晴れ晴れしているのが、メールからもよくわかる。映画化の企画書を何度も書き直しては、打ち合わせや飲み会に忙しそうだ。

「先日立川の家に帰ったら、DVDが並んでいたホームシアターの大きな棚が空っぽになって、リビングにあった本棚もなくなって。棚で遮られていた窓から、外の景色が見えて、近くの公園の緑や、道ゆく子どもたちがよく見えて。けっこういい家だったんだなと、改めて思いました。そして、ちょっとだけ売るのが惜しいような気もしたけど…。あとは彼に任せるしかありません。

物を減らして今思うのは、たくさんの本やDVD、そして機材に囲まれたホームシアターは、彼の武装だったのかもしれないということ。彼はそれに気づいているのかどうか、わからないけれど。

それもあって、私のセカンドハウスは物を増やさずに暮らしたかったのかもしれません。物をもつことで満足しないように。物に押されて、自分の感性がにぶらないように。人の気持ちをちゃんと感じ取れるように」

この家を売ったあと、真理子と太郎が一緒に住むのか、完全に別々になるのか、ふたりの間で話し合いはまだできていない。真理子は早く決めたい気持ちもあるけれど、それは急かさず太郎に決めさせてあげようと思う。(終わり)

南 ゆかり

フリーエディター・ライター。10/5発売・後藤真希エッセイ『今の私は』も担当したので、よろしければそちらも読んでくださいね。CanCam.jpでは「インタビュー連載/ゆとり以上バリキャリ未満の女たち」、Oggi誌面では「お金に困らない女になる!」「この人に今、これが聞きたい!」など連載中。

Domaniの試し読み・購入はこちらへ

Read Moreおすすめの関連記事