先ほどホルモンの話をしましたが、脂肪や水分を貯め込む黄体ホルモンは、『出産の終了=分泌が減少する』ということではありません。無事出産を終えても、骨盤のゆがみによって開いた骨盤がうまく閉じない、また、帝王切開の場合は骨盤が開いたままの状態が継続され、体がまだ妊娠していると勘違いし、ホルモンを多く分泌し続けます。すると、太りやすい体質が継続されてしまうのです。そのため、産後ダイエットには骨盤のケアが必須。骨盤のゆがみを取り除き、体のバランスを整えれば体重は自然と減っていくでしょう」(碓田さん)
産後体重が減るのはいつから?
「出産したら、より早く体重を戻したいものですよね。一般的に体重が減りやすい時期は、産後3ヶ月〜6ヶ月くらいだといわれています。早く元の体重・体型に戻したいのであれば、骨盤のゆがみはできるだけ早く取り除くべき。骨盤は産後1ヶ月〜2ヶ月で整え、体重・体型は6ヶ月以内に戻すつもりで取り組みましょう。産後1ヶ月いわゆる”産褥期”は関節が柔らかいため、うまくゆがみを取り、ケアすれば元の状態よりもさらによくすることもできます。ただし、産後の体はとてもデリケートなので、焦りは禁物。医師や助産師、自分の体、体力と相談しながら、無理なく進めていきましょう」(碓田さん)
産後体重が減らない!アラフォーママのお悩みQ&A
産後思うように体重が減らない…と悩んでいるアラフォーママは多く、その悩みは人それぞれ。今回碓田さんに、産後ママのお悩みについて回答してもらいました。
むくみによって体重が減りにくくなる?
【悩み1】元々の体質なのか、妊娠後期は足がパンパンになり、まるで像のようでした…。むくみによって体重が減りにくくなることはあるのでしょうか?(H・O)
碓田さん(以下敬称略):「むくみと体重変化には関係があります。むくんでいるということは、体の循環が悪いということ。その原因として、大きくなった子宮、黄体ホルモン、筋力の低下が考えられます。まず妊娠後期は、大きくなった子宮が脚のつけ根を通る血管を圧迫するため、物理的に血流が悪くなります。次に黄体ホルモンです。黄体ホルモンは妊娠によって分泌が増えるホルモンで、体の中に脂肪や水分を貯め込みやすくなります。この働きによって、妊娠中むくみやすくなるのです。出産し、黄体ホルモンが減少すればむくみ体質は軽減されますが、出産しても骨盤が開いたままの状態では、ホルモンが多く出続けてしまうので、産後はゆがんだ骨盤をしっかり整えましょう。また、妊娠中運動量が減り、脚の筋肉が衰えていることも考えられます。脚の筋力が弱いと、下半身に溜まった水分を心臓に戻す機能が弱くなるので、歩くなどして脚の筋力を回復させましょう。そうすることでむくみが解消し、自然と痩せやすい体になっていきます」(碓田さん)
1人目と2人目では体重の減るペースって違う?
【悩み2】2人目を出産し、1人目のときのように体重が戻りません。1人目と2人目では体重の減るペースって違うのでしょうか?(A・Yさん)
碓田:「理想をいえば、2人目であろうと、産後6ヶ月までに元の体重・体型に戻せるといいのですが、1人目に比べると『産後痩せない』『体型が戻らない』という悩みをよく聞きます。その原因のひとつに、やはり骨盤のゆがみがあります。妊娠・出産により骨盤は開き、ゆがみが生じます。骨盤をゆがんだまま放っておくと、体型が戻らない大きな原因に。骨盤がゆがんだままでは元の体型に戻すことはできません。まずは専門知識のある施術院で骨盤のケアをしてもらいましょう。2人目のママは、1人目のとき以上に育児に追われ、自分のことは後まわしにしがち。1人目のときに比べ、ストレスで間食が増えたり、また年齢的な衰えも考えられます。体重を減らすことよりも、まずは骨盤をケアし、妊娠中に衰えた筋力を取り戻すなど、体を整え、体力をつけることを考えましょう。体力がつけば自然と体重も落ちやすくなります」
完全ミルクと母乳の育児では体重の減り方は違う?
【悩み3】完ミ(完全ミルク育児)で育てています。同時期に出産したママ友は母乳育児をしていて、あっという間に元の体型に…。完ミと母乳育児では、体重の減り方は違うのでしょうか…?(F・Sさん)
碓田:「元々の体質、体力、筋力・骨盤の状態、姿勢習慣などは人それぞれなので、原因は色々考えられますが、授乳をしているか、していないかによって、痩せやすさに多少の違いはあります。母乳をつくるのに、完全母乳の場合は、1日約800〜1000キロカロリー消費します。単純にエネルギーをたくさん使うので、それだけでも痩せやすくなります。ですが、完ミであっても、仮に妊娠中に10キロ増えたとすると、赤ちゃん、羊水、子宮、血液を考えると、脂肪の増加はたったの2キロ。痩せるのに決して難しいレベルではないはずです。あとは、骨盤の戻り具合によっても違いが出てきます。帝王切開で出産した場合は、母乳を開始するまでに時間がかかったり、お母さんが痛み止めを飲むことによって、薬の影響で赤ちゃんが眠くなり、よく眠ってしまうというケースも。するとおっぱいをなかなか吸わず、赤ちゃんが母乳を飲まないことで母乳の出が悪くなる、という悪循環が続くことで、骨盤が戻りが悪くなる、ということは考えられます。しかし、産後しっかり骨盤のゆがみを取れば問題ありませんので、産後ご自身のいいタイミングでケアしていきましょう」
産後太りの解消に。骨盤を安定させる簡単エクササイズ
骨盤を整えることが、産後ダイエットへの近道。まずは骨盤を安定させることからはじめましょう。「骨盤底筋を鍛える体操」は、妊娠・出産により傷めた骨盤底筋を鍛えることで、骨盤が安定し、尿もれの改善や予防にも効果的です。
(1)仰向けになり、膝を立て、脚を組み、両手は体の横に置く。
(2)お尻から骨盤、腰、背中の順に持ち上げていく。膝と腰、肩が一直線になるまで(腰を反らないように)、息を吐きながらゆっくり腰を上げ、上げきったところで息を止め、深呼吸を1回する。このとき、膣をギュッと締めるイメージで力を入れる(わかりにくい場合は肛門に力を入れる)。息を吐きながらお尻を床に下ろす。反対の脚でもおこなう。回数は10回程度。
▲脚を組んでではやりづらい場合は、太ももの間にボールやタオル、枕などを挟んでおこなってもOK。その場合、挟んだ部分にギュッと力を入れながら持ち上げる。
「体重を減らす=食事制限」と考えがちですが、これは大きな勘違い。出産前の体重・体型にいち早く戻すには、骨盤のケア&メンテナンスが欠かせません。忙しいワーママは、つい自身のケアを後まわしにしがちですが、自分のケアこそ家族の幸せ!と考え、日々の生活でも自分の体をいたわり、しっかりケアしていきましょう。
あわせて読みたい
▶︎【産後ダイエット】いつから始めるべき? 成功率の高いおすすめダイエット方法やストレッチはこれ!
▶︎産後、痩せないのはなぜ?痩せる人、痩せない人の違いは?【産後ダイエット】
食事制限も激しい運動もいらない!「姿勢習慣を見直す」「出産後、ゆがんだ骨盤を元に戻す」「妊娠中に衰えた筋肉を元に戻す」の3つを軸に、妊娠初期からでも安全にできる、効果抜群の産後ダイエット方を提案。忙しい子育てママでも簡単に実践でき、「妊娠前よりキレイで健康的な体になれる!」と産後ママたちから大きな反響を得ている。
カイロプラクター 姿勢教育指導士
碓田紗由里(うすださゆり)
虎ノ門カイロプラクティック院副院長。これまで女性を中心に、のべ1万人の施術をしてきた経緯と自身の妊娠・出産の体験から、出産前後の女性がかかえる体型の変化や体調不良を改善するためのオリジナルプログラムを開発、提案。自身もこのプログラムにより元の体型に戻すだけでなく、妊娠前の体重よりマイナス7キロをキープをしている。虎ノ門カイロプラクティック院
撮影/黒石あみ トップ画像/(C)Shutterstock.com 取材・文/村井 絢
▼あわせて読みたい