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2020.09.30

「仕事の電話で嫌われる人」がついしていること|リモートで仕事の効率を上げる電話のマナー

 

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(鳥潟 幸志)グロービス・デジタル・プラットフォーム プロダクトリーダー
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コロナ禍では多くの企業が働き方の転換を迫られた。パーソル総合研究所の調査によれば、5月下旬には約3割がテレワークを実施していると回答。緊急事態宣言解除後でも、依然として約2割の企業で継続されている。

通勤ストレスから解放され、自分のペースで業務に集中できるとテレワークを歓迎する声があがる一方で、オンライン会議やビジネスチャット中心のコミュニケーションが続くことで、いわゆる「チャット疲れ」を訴えるビジネスパーソンも少なくない。

そこで見直されているのが、電話だ。最近では相手の時間を奪うと嫌われがちな電話だが、使い方によっては生産性が向上し「チャット疲れ」も解消される。本稿では、テレワーク時にも非テレワーク時にも活かせる「嫌われない、上手な電話の使い方」について解説する。

電話は相手の時間を奪う悪者ではない

テレワーク下では対面コミュニケーションが激減し、オンライン会議やビジネスチャットがそれに代わるようになった。業務の効率化が進んだ部分も大きいが、一方で「情報量が多く必要な情報を見落とす」「テキストでのやり取りが膨大で余計に時間がかかる」といった意見もインターネットでは飛び交っている。

オフィスにいれば声をかけて1〜2分話をすれば解決するようなことでも、チャットでは文章作成に何倍もの時間がかかる。かといってわざわざオンライン会議を設定するのも効率が悪い。こういう場合に最も適しているコミュニケーション手段こそが電話なのだ。

最近は、業務上のやり取りで電話を活用することに後ろめたさを感じるビジネスパーソンが少なくない。実業家の堀江貴文氏による「電話してくる人とは仕事をするな」、元マイクロソフト社長の成毛眞氏の「電話をかけてくる人は仕事ができない」など、著名人の「電話嫌い」発言が話題になったことの影響は大きいのではないだろうか。Amazonが社内コミュニケーションに電話を使わないというのも有名な話である。

しかし、これらの言葉に続く提言を最後まで読んでいくと、彼らが憤っているのは「こちらの都合に構わず電話してくる」「チャットでも完結できるのに電話をしてくる」と、相手の時間を奪う態度に対してであることがわかる。

相手の状況や必要性に応じて電話コミュニケーションを選ぶことは、結果として互いの生産性向上につながるのだから、闇雲に避けるべきではないだろう。今、改めて考えるべきなのは、相手に嫌われず、そして仕事のパフォーマンスを向上させる電話の使い方である。

 業務上のコミュニケーションは、その会話に参加する人数、テーマ、緊急性などによって適した手段は異なる。テレワーク下ではビジネスチャットやメールによるテキストコミュニケーション、オンライン会議、そして電話が主な手段となるだろう。

電話の活用が適していると筆者が考えるのは、「チャット以上、オンライン会議未満」のコミュニケーションが求められる場合である。

相手の負担を軽くするための電話術

チャットは業務の前提が参加メンバーに共有されており、やり取りが1往復ないしは2往復程度で完結する用件に向いている。これに対してオンライン会議は、業務の前提がまだ共有されておらず、複数参加者が確認をしあいながら丁寧に答えを導いていくプロセスで必要となる。

ではチャット以上、オンライン会議未満の「電話を使うシーン」とはどんなものか。それは大きく3つのパターンに分けることができる。

1つ目は、チャットでは回答する相手の負担が大きい場合である。案件にまつわる背景や微妙なニュアンスまで聞きたいが、それを文章でまとめるとなると意外に手間がかかる。質問を重ねればチャットは長引くことになる。いわば「電話したほうが早い」というケースだ。

2つ目は、相手の状況を把握しながらコミュニケーションを取りたい場合だ。たとえビジネスの場であっても、人は感情の生き物である。相手がこちらからの投げかけをどのように受け止めたのか把握し、アサインや交渉の方向性を調整していくことは、ビジネスを円滑に進めるうえでも重要だ。そういう時は、いきなりテキストでロジカルに説明するよりも、相手の状況を電話で聞きながら進めたほうがよい。

3つ目は、相手の質問の意図が正しく把握できない場合である。筆者はよく社内のチャットで質問を受けるが、書いてある情報だけを見て答えられる質問と、もっと質問の意図や背景を深掘りしないと答えられない質問がある。誤った認識だと回答の方向もずれてしまうため確認が必要だが、そこでテキストの応酬になるのはあまり生産的とはいえない。そこで電話で質問の意図を聞き、簡易的に回答できる場合はその場で話す。回答に時間を要する場合は、のちほどテキストで回答するという方法をとっている。

言い添えておきたいのは、いずれの場合でも、相手の都合をあらかじめ聞いてから電話をするのが大前提ということだ。社内の相手であれば社内スケジュール表で確認する、社外の相手なら「お電話するのにご都合の良い時間帯などはありますか?」と最初に聞いておいたうえで、「この時間帯で数分会話できますか?」と事前連絡するのがマナーだと心得ておこう。

 相手に負荷をかけず、正しい情報交換をするために電話が適切な場合には、積極的に活用すべきだ。しかし冒頭に述べたように、電話を嫌う、苦手だと感じるビジネスパーソンが少なくないのも事実である。かかってきた電話によって、自分の時間を不当に奪われたと感じるのはなぜなのかを分解していくと、見えてくるものがある。

電話は相手の時間を奪うのではない

嫌われる電話の特徴は、まずは相手の時間の都合を無視した電話だ。事前の打診がない突然の電話はもちろんのこと、チャットで質問・回答すれば簡易に済むことや、テキストでないと回答しづらいことを電話で聞くのは、自分の都合で早く回答が欲しいだけだろうと反感を買っても無理はない。

また、ときおり遭遇するのが、質問を整理するのが大変だからとりあえず電話する、というマインドセットの人である。これは論外だ。こういう人からの電話は何を聞きたいのかも判然とせず、こちらが一緒に整理していかなければならない。その時間は、電話を受けた相手からするとかなりのストレスだ。このような電話を続けていると、信頼残高はどんどん目減りしていくだろう。

論理的に物事を整理し、何を聞きたいのかを言語化するにはスキルが必要だが、意識して努力すれば習得できるものだ。このような「とりあえず電話」をしてきたのが自分の部下であれば、「電話をかける前に3分間、自分の中で質問を整理することを心がけてみてください」と、成長を促すことも必要である。

「電話は相手の時間を奪う」という表現は、言い換えれば「相手の時間をいただく」ということだと筆者は考えている。いただいた時間に対してきちんとバリューを返すことができれば、奪われたという感覚にはならないはずだ。こちらが一方的に情報を求める用件だったとしても、なぜ協力してもらいたいと思っているのかきちんと示し、納得してもらえば嫌な気持ちにさせることもない。

リターンなしに時間を使わされるのが相手にとって一番ストレスになるということを念頭において、会話にバリューを出すことを意識するのが、ビジネスにおける電話の使い方の肝となる。

最後に、電話の活用に役立つビジネススキルをいくつか紹介したい。電話のマナーについて新人研修で学んだ人は多いだろうが、電話で話す内容や質問を組み立てる思考力を考える機会はそう聞かない。今、それを学び直すことは、コロナ禍で変容するビジネスコミュニケーションにも適応し、さらなるスキルアップにつながるだろう。

1つ目に挙げるのは、「論理的な思考力」である。電話では、短い時間で話したいことや聞きたいことを的確に伝える必要がある。まずは言いたいことが正しく伝わらなければ始まらないから、論理的に話を組み立てることが大切だ。

次に「ファシリテーションスキル」である。ファシリテーションは会議の場で使う能力だが、電話の場でも意識的に使えると、短い時間の中でもクイックに議論を進めることができる。

電話でのコミュニケーション不全を防ぐには

3つ目は「質問力」である。

下図は部下を相手にしたケースの事例で、質問しようとしていることの答えが自分と相手、どちらにあるのかをマトリックスにしたものだ。左上の「答えが自分にも相手にもある」、この場合は電話の目的は確認であり、チャットで済むかもしれない。

(出典)「グロービス学び放題」(講座名:メンバー育成のための質問力)

 

右下の「自分にも相手にもない」場合は、一緒に考えないとならないため、電話より会議のほうが良い。右上の「自分にあって相手にない」場合は単純な質問、左下の「自分になくて相手にない」場合は指導、教育、伝達にあたり、電話でクイックに解決できる領域だといえる。

なお、電話で話した内容は、事後にチャットに残しておく、あるいは定例会議で報告するなど、情報共有することを推奨する。ある意思決定がほかの事案の判断に影響することも多い。情報の透明性を保ちブラックボックスをつくらないことで、「言った。言っていない」などのトラブルも防ぐことができる。

対面コミュニケーションがままならない中、さまざまなコミュニケーション不全も生まれている。テキストで用件を伝えたあと、顔を合わせたときに確認しながらフォローアップする、あるいは会議が終わったら1分立ち話をして感触を聞くなど、相手の心理状態を見ながら交わすちょっとした会話は、人間関係を円滑にする。リアルなオフィスでは日常的に交わしていたこういったコミュニケーションは、テレワーク下では難しくなってきた。

そんな中、電話という音声によるコミュニケーションは、チャットとビデオ会議の中間で機能する、コミュニケーションの潤滑油になり得る。「ありがとう」、「助かった」など、感謝の気持ちがより伝わるのも、テキストよりは音声だろう。とにかく大切なのは、いかに相手を思って、価値のあるコミュニケーションにしていくかだ。スキルをしっかり育み、電話を適切に、効果的に活用してほしい。

グロービス・デジタル・プラットフォーム プロダクトリーダー

鳥潟 幸志(とりがた こうじ)

サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコムを共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーションなど、経営全般に10年間携わる。現在は、社内のEdTech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系などのプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的としたコンサルティングセッション講師としてファシリテーションを行う。

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東洋経済オンライン

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写真/Shutterstock.com

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