■社内の人に対しては使わない
「ご足労いただきありがとうございました」は、基本的に社外の人に対して使います。社外の人の前で、社内の人に対してこの言葉を使うと、わざわざ足を運んでくださった社外の人に失礼にあたるので、気を付けましょう。
社外の人と上司のどちらにも「ご足労」という言葉を使いたいときは、まず社外の人に「ご足労いただきありがとうございました」とお礼を述べます。
その後、社外の人が帰って自分と上司だけになってから、上司に「今日はご足労おかけしました」と言うならば問題ありません。
社内の人に対してこの言葉を使うことはほとんどないですが、自分の上司に「ご足労」という言葉を使うケースも稀にあります。例えば、離れているところで働いている上司がわざわざ自分を訪ねてくれたときには、「ご足労」という言葉を使っても差し支えありません。
「ご足労いただきありがとうございました」の類語
「ご足労いただきありがとうございました」という言葉を使えると便利ですが、類語を知っておくと表現のバリエーションが広がり、そのときの状況に最適な言葉に言い換えることができるでしょう。
■類語1「ご来訪いただきありがとうございました」
「ご来訪いただきありがとうございました」の「ご来訪」は敬語なので、目上の人や上司、取引先に対して使えます。
会話だけでなく、メールやビジネス文書で来てもらったことへのお礼を伝えられるので、幅広いシーンで重宝するでしょう。「感謝申し上げます」と一言付け加えると、さらに感謝の気持ちを伝えられます。
例文:
「本日はお忙しいところご来訪いただきありがとうございました」
「展示会にご来訪いただき、ありがとうございます。感謝申し上げます」
■類語2「ご出席いただきありがとうございました」
「ご出席いただきありがとうございました」の「ご出席」は丁寧語なので、目上の人や上司、取引先に対して使えます。
「ご足労いただきありがとうございました」より使うことが多い表現で、ビジネスシーン以外でも耳にすることは多いのではないでしょうか?入学式や卒業式などの行事、何かの集まりでもよく使う表現です。
例文:
「本日は入学式にご出席いただき、ありがとうございました」
「このたびは私たちの結婚式にご出席いただき、ありがとうございました」
■類語3「お越しいただきありがとうございました」
「お越し」は「来る」の尊敬語、「いただく」は「してもらう」の謙譲語なので、この言葉は自分をへりくだって目上の人に敬意を表したいときに最適です。
比較的かしこまっていない表現で、催しやイベントに来たお客様に対しても使えます。店頭や会社はもちろんのこと、電話やメールでも使える表現です。
また、はるばる・わざわざといった副詞をつけることで、より深く感謝の気持ちを強調することができるでしょう。
例文:
「お忙しいところ、はるばるお越しいただきありがとうございました」
「本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました」
■類語4「足をお運びいただきありがとうございました」
「足をお運びいただきありがとうございました」は、来てもらったことへの感謝の気持ちを込めた敬語表現です。
「ご足労いただきありがとうございました」と意味合いはほとんど変わりませんが、わざわざ出向いてくれたことへの感謝の気持ちがより伝わる表現ともいえるでしょう。悪天候のとき、遠方から来てもらったときにも、使ってみてください。
例文:
「大雨で大変な状況の中、わざわざ足をお運びいただきありがとうございました」
「遠いところから足をお運びいただき、ありがとうございます」
「ご足労」を含んだ他の表現との違い
「ご足労」という言葉が入っていても、「ご足労いただきありがとうございました」とは異なる意味の表現もあります。それぞれどんな使い方をしたらよいのか、例文も交えながら解説しますので、参考にしてください。
■「ご足労おかけします」はお詫びの意味を示す言葉
「ご足労おかけします」の「おかけする」には、相手に手間をかける・迷惑をかけるという意味があります。
つまり、「ご足労おかけします」は、わざわざ足を運んでくれる相手に対してお詫びの気持ちを表す表現です。メールや文書より、主に会話で使われます。
「ご足労おかけして恐縮ですが」は、相手に出向いてもらうことを申し訳ないと思っている気持ちを強調する場合におすすめです。何度も訪問してもらう場合にも、ふさわしい表現といえるでしょう。
例文:
「〇日の会議は14時開始となります。ご足労をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします」
「ご足労おかけして恐縮ですが、来月までに再度ご来店いただくようお願い申し上げます」
■「ご足労願います」は訪問のお願いを示す言葉
「ご足労願います」は、「これから訪問してほしい」とお願いするときに使います。また、相手が来られそうか都合をうかがうときにも最適です。
敬語表現なので目上の人や上司に使えますが、来てもらうことを強要していると受け取られることもあるので、使うときは誤解されることのないよう十分気を付けてください。
例文:
「弊社までご足労願います」
「お手数ですが明日までにご足労願います。何卒よろしくお願い申し上げます」
■使用するタイミングも異なるので要注意
「ご足労おかけします」「ご足労願います」は、使うタイミングに気を付ける必要があります。「ご足労おかけします」はこれから来ていただくことに対しての感謝を表す表現なので、実際に会ったときには使いません。
ビジネスメールまたは電話でやりとりをしているとき相手が依頼を承諾してくれた時点で使うようにしましょう。「来てもらうことが決定したとき」が最適なタイミングです。
一方、「ご足労願います」は、「まだ来るかどうか確定していない」タイミングで使います。また、類似する表現の「ご足労のほど、よろしくお願いいたします」は、「来てくれることがほぼ確定した」タイミングが最適でしょう。
まだ来てもらうことが確定していないタイミングで「ご足労のほど、よろしくお願いいたします」」を使うと、押しつけがましい表現になり、「来てくださるのですよね」という意味に受け取られかねません。
相手に失礼にならないよう、それぞれの言葉を使用するタイミングは、きちんと把握しておきましょう。
状況に合った表現で感謝の気持ちを伝えよう
「ご足労いただきありがとうございました」はビジネスシーンで欠かせない敬語表現なので、例文・類語とあわせて覚えておきましょう。
敬語は日常生活ではあまり使わないですが、目上の人や取引先の方に感謝の気持ちを伝える言葉として覚えておくと、幅広い場面で役立ちます。敬語のバリエーションを増やして、相手に上手に感謝の気持ちを伝えてくださいね。
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