「子どもの親権をどうするか」の話し合いは時間をかけて
<前編>では、「夫婦別姓」を決断するまでをご報告しました。<後編>では、その後のさまざまな手続きなどを考えてみたいと思います。
「お父さんとお母さん、どっちにつく?」論争にならないために
2020年秋から話を進めてきた夫婦別姓ですが、家族も私も生活スタイルは何も変わらない、ということが基本にあります。私が(戸籍上も仕事でも)牧野性を名乗るという理由で、籍を抜きます。そして、可能であれば子どもに苗字の選択肢を与えたいというものです。
夫婦別姓を望んでいるカップルでも、「子どもの籍(または苗字)をどうするか」(日本の法律では離婚後の親権は夫婦どちらか一方がもつため)が絡んでくると、実施のハードルは高くなるとよく聞きます。特に、私たちのように一度法律婚をして、子どもも育った上で事実婚に戻すとなると、親の都合で一概に決めることはできません。子どもが知らない間にどちらかの姓を選択されていたということも、私は避けたいと思っています。
長女がまもなく11歳、長男も9歳。上のふたりには「別姓にする意味」や「戸籍制度」について何度も説明をし、状況は理解できるようになってきました。ただ、「お父さんとお母さん、どっちにつく?」という極論になってしまうと話が全く違うものになってしまうので、この点は特に配慮しなくてはいけません。
▲当たり前のこんな日常。でも、家族の形に「当たり前」はなくて、それぞれの事情に合わせた形があっていいのだと思います。
子どもの成長に合わせて親権を考えていく方法もある
そこで弁護士さんが提案してくれたのは、以下の考え方でした。12歳までを区切りとして、“いったん”親権をどちらかに決めておくのがいいのでは、というものです。子どもが「選べない」というならば、私自身は強要するつもりはありません。その後、成長の年齢に応じて、子どもの判断や意思を尊重しながら話し合い、場合によっては親権を変更するということです。
12歳までと言ったのには理由があります。概ね小学校卒業後の13歳以降は、「事理弁識能力」(自らが行なった行為の結果、何らかの法的な責任が生じるということを認識できる能力)があると判例上みなされます。また、15歳以上になると、親権の変更にあたっては必ず子どもに意見を聞かなければなりません。子どもの状況や成長に応じて、本人の意見は変わっていいし、そのときどきで受け入れる環境をつくっていくのが私たち親の役割だと思っています。
戸籍の姓を変更しても、子どもたちの通う学校では使う姓を変えなくていいことは確認済ですし、(子どもを扶養していると判断されれば)親権にかかわらず夫・妻どちらの社会保険にも入れるそうです。ただ、こうしたことをきっかけに、家族それぞれが自分の進むべき道を「考えて」「選択する」状況になれたことは、大きな進歩といえるかもしれません。
親権と戸籍は必ずしも同じでなくてもいいのですが、国際結婚、同性婚など家族のあり方も多様に存在している現状では、親権のあり方も議論があっていいのではと思います。海外では共同親権という方法も一般的ですし、今後日本でも選択肢に変化が起こってほしいものです。
親権の考え方の幅が広がれば、「家父長制」「離婚はかわいそう…」といった考えも変わるだろうし、ワークライフバランスを考えるときも、自由度は広がりそうです。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の枠組みを、少しずつ取り払っていけたら。そして、子どもたちにもその考えが伝わりますように。そう願っています。
取材協力/ウカイ&パートナーズ法律事務所代表 鵜飼 大
▲苗字が変わっても、私にとっては絆で繋がったかけがえのない家族。これからもよろしくね。
モデル
牧野紗弥
愛知県出身。小学館『Domani』を始め、数々のファッション誌で人気モデルとして抜群のセンスを発揮しながら、多方面で活躍中。キャンプやスキー、シュノーケリングなど、季節に合わせたイベントを企画し、3人の子供とアクティブに楽しむ一面も。今年は登山に挑戦する予定。自身の育児の経験や周囲の女性との交流の中で、どうしても女性の負担が大きくなってしまう状況について考えを深めつつ、家庭におけるジェンダー意識の改革のため、身を持って夫婦の在り方を模索中。