「読み聞かせ」というと、まだ漢字が読めない未就学児のためであって、自分で読めるようになったら卒業かな…なんて思っている人も多いのではないでしょうか。実は「読み聞かせ」は小学校へ入っても、自分で読めるようになっても継続することに価値があるんです。
スクールカウンセラーでもあり、臨床心理士・吉田美智子さんに「読み聞かせ」についてお聞きしました。
読み聞かせの効果は絶大!
「〝読み聞かせ〟にはお話を読んで楽しい時間を過ごすというだけでなく、親子関係に素晴らしい効果を発揮するのです。その効用を2つお伝えします」(吉田さん)
効用1:どんなときも親を感じられる
「正直、親にとって〝読み聞かせ〟は手間暇がかかりますよね。その時間を家事や仕事にあてたいと思ったこともあるかと思います。しかし、子どもは親が自分を気にかけてくれる、お世話をしてくれることに喜びや安心感を得ます。〝読み聞かせ〟は、子どもがその安心感を得るための代表的なお世話のひとつ。園や学校など親から離れて過ごす時間に、子どもは不安や寂しさを感じるときもあります。そんなとき〝読み聞かせ〟が日常的にできていると、離れていても心の中で親が近くに感じられ、物事を乗り越えていけるのです。未就学児はほぼ付きっきりで毎日を過ごしますが、小学生は少し親から離れていきますよね。そのため、小学生になっても〝読み聞かせ〟は続けるべきと私は思います」(吉田さん)
効用2:折り合いをつける力
「私たちが現実社会で様々な体験をするには、限りがあるかもしれません。しかし、〝読み聞かせ〟は 本を通じて自分にはなかった感情を知ることができます。例えば、登場人物に自分を重ね合わせて、怒りを感じたり、悔しく思ったり、時には大爆笑をすることもあります。感情の幅が広がることにより、実生活で起こる不条理な出来事も『まぁ、いいか』『ふ〜ん、そんなものか』と折り合いがつけられるように。そして子どもがひとりで読むよりも、親が感情を込めて読むことで、さらにこの効果が期待できると思います」(吉田さん)
お腹の中から聞いていた親の声は、子どもにとって一番落ち着く声。〝読み聞かせ〟はそんな安心する声で聞くからこそ、様々な効果が生まれるのかもしれません。
〝読み聞かせ〟いつまで? 何分読めばいい?
「一般的に乳児の頃から〝読み聞かせ〟はスタートします。未就学児の間は続けるものの、小学生になると自分のお部屋ができたり、ひとりで寝始めたりと、だんだん〝読み聞かせ〟から離れていくようです。しかし、上記の効用も期待できることから、できれば小学2年生くらいまでは継続しつつ、子どもが望む間は頑張って読み続けてもらえるといいなと思います。中には中学校卒業まで読んでもらっていたという子もいました。〝読み聞かせ〟の時間は、理想は20〜30分ですが、無理のない範囲で5〜10分でもOKです」(吉田さん)
子どもが大きくなったら何を読む?
「未就学児までは絵本が喜びますよね。しかし年齢が大きくなるとそうもいきません。もちろん子どもと一緒に選んでもいいのですが、親が子どもの頃好きだった本や、◯◯動物記や◯◯探偵などシリーズ本を制覇する、受験で勧められている本など、ジャンルにとらわれず選んでみてください」(吉田さん)
親にとって〝読み聞かせ〟は手間がかかる割には、いまいちその効果がよくわからないと思いがち。しかし、実生活では得にくい感情を〝読み聞かせ〟により補えたり、目には見えない親子の信頼関係が生まれているとわかれば、子どもが『もういいよ』と言うまで続けていきたいですね。
構成・文/福島孝代
写真/(C)Shutterstock.com
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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