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LIFESTYLE 植物

2021.04.04

研究者が 〝フラワーコンポスト〟をアートで表現。花をコンポストする意味とは?

渋⾕区・神宮前のブティックホテルTRUNK(HOTEL)で「フラワーコンポスト」の作品を展⽰した参加型アートインスタレーションが開催。後編では、今回の参加型アートインスタレーションを手掛けたプランツディレクター/植物研究家のMIKIKO KAMADA氏の想いを取材しました。

Text:
有田 千幸

美しく咲いた花が朽ち、次第に微生物によって分解される姿を可視化

東京・渋谷駅から徒歩7分、キャットストリートの裏手に位置するTRUNK(HOTEL)で、4月7日まで開催されている「Flower Compost ~ Plant the Circle of Nature ~ × SOCIALIZING FLOWER MARKET」

今回は、等身大の社会貢献「ソーシャライジング」を掲げているTRUNK(HOTEL)が主催する「SOCIALIZING FLOWER MARKET(ソーシャライジング フラワーマーケット)」とプランツディレクター/植物研究家であるMIKIKO KAMADA氏の初のコラボレーションによる、「フラワーコンポスト」の参加型アートインスタレーションが実現。

展⽰されている「フラワーコンポスト」の作品は「SOCIALIZING FLOWER MARKET」で発⽣した在庫のロスをはじめ、店頭に出すことのできなかったお花や装花に使われなかった茎や葉など、本来破棄されてしまう素材を利⽤して制作されたもの。今注⽬を集めるこの催しの様⼦を取材しました。

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後編となる今回は、この展示に至ったきっかけと研究者としての想いをMIKIKO KAMADA氏に伺います。

MIKIKO KAMADA (プランツディレクター・植物研究家)

MIKIKO KAMADA (プランツディレクター・植物研究家)

自然の中で育ち、植物への愛好から北海道大学大学院農学研究科を修了。プランツディレクターの活動と並行して、現在は大学院博士課程にて空間の植物がヒトに与える効果を研究。同時に表現活動を継続的に行っている。2020年には目に見ええない生命たちを可視化する初個展 “(in)visible forest” を開催。

 

「きれいな状態の植物たちを廃棄することになってしまうということが、どうしても悲しかった」

有田千幸 (以下有田):大量の花が腐敗して分解していく姿、こんなに間近で見る機会はそうないですよね。今回のこの展示を開催することになったきっかけについて教えてください。

MIKIKO KAMADA氏 (以下KAMADA):以前からTRUNK(HOTEL)が、館内で行われるイベント装飾で使用した花たちを素敵なブーケにアップサイクルして販売する「SOCIALIZING FLOWER MARKET」を定期的に開催していたのは知っていました。

有田:通常では廃棄されてしまう状態のよい花たちだけを取り扱うフラワーマーケットですよね。

KAMADA:はい。昨年、TRUNK(HOTEL)で打ち合わせをしていたら、ちょうどその日がフラワーマーケットの日だったんです。ウエディングで使ったとっても素敵なお花たち、数本選んでブーケにしてもらって500円。もちろん長蛇の列でした。それを見ながら、TRUNK(HOTEL)のフラワーチームの廃棄花についての思いなどを伺う中で、とても素敵! と感激したことが今回の展示に繋がりました。

フラワーコンポスト

▲TRUNK(HOTEL)のパブリックテラスで開催されているフラワーマーケット「SOCIALIZING FLOWER MARKET」。本来なら廃棄される花とは思えないほど状態がよいものばかり。(現在は不定期開催)

有田:私も先日フラワーマーケットで購入しました。胡蝶蘭を中心としたバイタリティ溢れるカラフルなブーケ。1週間家で飾ったあと、先ほどフラワーコンポストの瓶の中に入れてきたところです。購入して、飾って、腐敗分解させて、そして最終的に堆肥となる。今回の一連の流れを経験して、花の一生に人生に似たものを感じました。

▲ フラワーコンポストの展示7日目。瓶の蓋を開けると、南国の果物が熟しきったようなにおいが上がってきます。

KAMADA:私は以前、花や植物を使った装飾の仕事をしていました。その中で、短時間のイベントなどで使用した、まだまだきれいな状態の花や植物たちを廃棄せざるを得ない現場に遭遇することもあり、生命の扱い方として疑問を感じていました。そういった背景もあり、TRUNK(HOTEL)のように日常的に花を扱う現場の人達も同じ想いをもっていたのだなと共感したんです。

フラワーコンポスト

▲ フラワーマーケットで購入した花たちの3日目。水を換えて、茎先を少し洗って切って、風通しのいいところに置いて。それだけでまだまだ美しさは続きます。

「植物の素晴らしさや目に見えない微生物たちの働きを、子どもにも、大人にも、サイエンスに興味のない人にも伝える方法、それが〝アート〟だった」

有田: 今回、花が腐敗分解していく姿を、大きな透明の瓶の中で見せたのには何か理由があるのですか?

KAMADA: 私は研究サイドの人間です。植物の素晴らしさや目に見えない微生物たちの働きをもっとたくさんの人たちに届けたいと思っても、データや論文では多くの人に伝わらないのが残念で。でもアートの力を借りることで、子どもから大人までサイエンスに興味のない人にも視覚的に伝えることができる。コンポストも、腐る、黒い、汚いってイメージがあるかもしれませんが、みんながきれいだと思っている花を対象にすることで、イメージよく、〝循環〟 という大切なテーマに興味をもってもらえるきっかけになるのではないかと思ったんです。

フラワーコンポスト

▲ 画像左はコンポスト1日目。これを変化がなくなるまで放置しておくことで、画像右のような状態に。これは、KAMADA氏が去年夏に展示を行ったときのフラワーコンポストで、腐敗分解260日目ごろ。

KAMADA: 廃棄される予定の花たちが、分解されていく過程まで楽しんでいただける展示となっています。このアートを通じて、普段は目を向けないものへの想像力を巡らせ、当たり前と思っている地球上のルール (循環) のことや目には見えない微生物たちの存在の大切さをあらためて感じていただけたら幸いです。

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ライター

有田 千幸

外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経て美容ライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。薬膳コーディネーター。@chiyuki_arita_official

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