「先方」が持つ2つの読み方と意味
「先方」には「せんぽう」「さきかた」の2つの読み方があります。漢字は同じですが異なる意味を持っているため、文書で表現する際は違いが分かりづらいことも多いです。そこで混同しないように、それぞれの読み方や意味について解説します。
1:多くの場合は「せんぽう」と読む
「せんぽう」は「相手」「相手方」「むこう方」という意味です。ビジネスシーンでは取引先の相手を指す意味として使われることが多いため、仕事上で目にする文書の「先方」は、多くの場合で「せんぽう」として使われています。
2:「さきがた」と読むこともある
「さきがた」と読む場合は、「先ほど」や「さっき」といった少し前のことを指しています。この言葉をビジネスシーンで使おうとすると「せんぽう」との混同が起きてしまうため、あまり使用しないほうがいいでしょう。使う際には、「先ほど」や「先刻」などに言い換えることをおすすめします。
「先方」の正しい使い方と例文
「先方」は取引先やクライアントなどの第三者を指すときに使用しますが、状況によっては他の表現の方が適切なこともあります。例文とともに、シーン別の正しい使い方をマスターしましょう。
■「先方」は目の前にいない第三者を指す言葉
ビジネスにおける「先方」は、自分たちの近くにいない取引先やクライアントといった第三者を指します。社内での会話など、相手がいない場面で使われる言葉です。決して、取引相手を目の前とした場面では、使わないようにしましょう。相手の前で「先方」を使うのは、誤用なので気をつけてください。
相手方との会話やメールでは、「御社」や「貴社」を使用するのが一般的です。「御社」「貴社」は利用シーンによって使い分けます。
相手が同席している場合は「御社」
「相手が目の前にいる」「直接会話をする」といった場合には、話し言葉である「御社」を使います。面接や、取引先での会議などもこれに当てはまります。
【例】本日御社に伺いますので、よろしくお願いいたします。
メールでは「貴社」を使用する
書類やメール上で相手先とやりとりをするときには、書き言葉である「貴社」を使います。改まった文書や履歴書にも「貴社」を使用しましょう。
【例】貴社ますますのご隆盛のことお慶び申し上げます。
<正しく「先方」を使った例文>
先方は「相手方に何かをする(働きかける)」「相手方の状況を報告する」「相手方の行動をさす」ときに使われます。よく使われる「先方」の例文をいくつかまとめました。
以下、ビジネスシーンで見かけるであろう文章の一例です。
・相手方に何かをする(働きかける):自分たちから相手方に対して行動をするときに使う場合
【例】依頼の件を、先方に確認してください。(相手方に何かをする)
・相手の状況を報告する:相手方の都合や意向などを表す場合
【例】先方は時間に厳しいので、締め切りには注意しておきましょう。
・相手の行動をさす:相手方がおこなったことを報告する場合
【例】先方からFAXの返事が届きました。
「先方」はこのように、社内や身内での業務連絡で頻回に使われる言葉です。使い方や意味を正しく理解して使うようにしましょう。
「先方」の言い換え表現
「先方」という言葉の言い換え表現には、「先様」「相手方」が挙げられます。正しい言い換え表現やNG表現を知り、適切な言い換え表現を使用できるようになりましょう。「先方」の言い換え表現、NG表現をご紹介します。
■より丁寧な言い方をするなら「先様(さきさま)」
「先方」をより丁寧な表現をしたいときには「先様(さきさま)」という言葉を使用します。「先方」同様、相手を目の前にした場面では使用しない点には注意しましょう。以下のように使用します。
【例】先様に確認をとったところ、明後日の午後であれば予定が空いているそうです。
「先方様」はNG表現
「先方様」という言葉は、先方を敬う表現のように見えますが、先述の通り先方には敬語表現がないため、不自然な表現です。また相手を高める言い方として「〇〇の方」という表現があります。
先方を組み合わせて「先方の方」とすれば敬語となるようにも思いますが、これも間違った使い方です。もともと「先方」には「相手方」や「むこう方」といった意味があるため、さらに「方」をつけてしまうと「相手方の方」となってしまい、二重表現となるのです。
そもそも「先方」は身内で使う言葉であり、様をつける必要はありません。くれぐれも取引先などに「先方様」と使わないように気を付けましょう。
ビジネスにおいて直接相手を指す言葉としては、「〇〇様」「御社」「貴社」などが適しています。シーンによって使い分けてください。