ファッションから始まる「働き方改革」、 それが伊藤忠商事の「脱スーツ・デー」
長時間労働の改善やリモートワーク制度の導入など、これまでの働きかたを見直す流れは、日本の社会全体に起こっています。「自分らしく生き生きと働く」ということが実現するとしたら、女性にとってますます活躍しやすい社会の実現にもつながるので、Domaniでも取り上げていきたい!
そんな「働き方改革」の動きに先んじて、大手総合商社・伊藤忠商事では、朝型勤務の推奨や、社員の健康増進のためのシステムづくりなど、オリジナリティに富んだ働く環境づくりにいち早く取り組み始めています。その伊藤忠商事で昨年夏に始まった取り組みが、「脱スーツ・デー」。毎週金曜日には女性・男性ともにスーツを着ずに全員がカジュアルな服装で働くという、装いから始める働き方改革。
しかしそこはビジネスという場面だけに、実際に働く人たち、特に、上司や同僚など、働く女性をとりまく周囲の人たちの意見も聞いてみたいと思い、伊藤忠社員の男性たちの座談会を敢行。集まっていただいたのは、吉村 武さん(右/36歳)、二俣元則さん(中/43歳)、宮本 剛さん(左/38歳)の3名。折しも取材日は「脱スーツ・デー」の金曜日であったということもあり、男性の脱スーツスタイルをまずは拝見!
注目度が高まる「脱スーツ・デー」の取り組み
―――「脱スーツ・デー」が始まって、変化はありましたか?
宮本 剛さん(以下、宮本) うちの職場は、打ち合わせ等でお客様が来社されることが多いんです。だから内勤の方でも、人の目に触れることが多いので、それほど冒険しないというか、おしゃれするという雰囲気からは遠かったですね。でも「脱スーツ・デー」が始まって、単純に華やかになりました。
二俣元則さん(以下、二俣) お客さんも「脱スーツ・デー」の取り組みをご存じで、会社に見に来たいっておっしゃいますね。
宮本 エレベーターホールに、「脱スーツ・デー」ポスターが大きく貼ってあるんですよ。で、お客さんが来社されたときにエレベーターホールまでお送りすると、どうしてもそのポスターが目につきますから。少しプレッシャーに感じますけど。
二俣 先日、お客さんとの会食でこの話題になって、じゃあ金曜日にミーティングを入れよう、とおっしゃられて。それも、前もって入れてしまうと、みんなちゃんとした格好をしてきてしまうから、「今すぐ来て」みたいになったほうが、そのままの格好で来てくれるだろうから、と。
宮本 確かに。今日僕は得意先でミーティングなので、ジャケット着てますから。
吉村 武さん(以下、吉村) これまでも「カジュアルフライデー」といって、金曜日は少しゆるめの格好をしてきていい、というのがあったんですが、やっぱり「脱スーツ」と打ち出して、ジーンズ、スニーカーと具体的に提案されたことで、断然カジュアルになりましたよね。
二俣 うちの会社は海外で事業をやることも多いですが、海外だとカジュアルなのが普通ですから。そういう意味では「週一回」っていう日本はまだ遅れているのかも。
吉村 私も去年まで、3年3か月、フィリピンに行っていたんですけど、フィリピンでは毎日が「脱スーツ」。だから、逆に返ってきたときに「1日だけなんだ」と思いましたね。
宮本 私はよく出張で中国に行っていたんですが、中国だとデニムどころか、普通にオフィスでミニスカートにタンクトップみたいな女性が働いていますね。日本にはそれはそぐわないと思いますけど。
吉村 でも今日デニムはいていますけど、香港に駐在しているときに一度トライしたんです。でも、やっぱり当時の上司に怒られて(笑)。現地の方ははいているからいいかなーと思ったんですけど。でもそれが、「脱スーツ・デー」で、「デニムOK」って宣言したことは、個人的には大きいですね。
「はっきり言ってスーツのほうがラク」という声も…。男性の「脱スーツ」事情
―――では「脱スーツ・デー」、けっこうスムーズに取り入れられているんですね。
二俣 うーん、そうとも言い切れないですね。例えば、私のお客様の鉄鋼業界は、まだ「脱スーツ」の取り組みはされていませんので。先ほどのように「そのままの格好で会社に来て」とお客様はおっしゃるんですけど、実際、金曜日に伺うときは、先方の職場のみなさんも見ているわけですから。そこまで冒険できないというのはありますね。
吉村 うちも食品関係で、中には堅めのお客様もいるので、男性は金曜日もスーツで来る人も多いです。今日の僕の服装だと、ちょっとツッコミ入ったりします。「今日、なんか軽いね」とか言われると、褒められているのか、チクッと刺されているのか、どっちなんだろうって(笑) 。
宮本 僕は以前、繊維の部署にいましたけど、繊維のブランド部隊だと、スーツを着ているほうがめずらしいですし、普段からすごくカジュアルだから、「脱スーツ」って難しいですよね。あとは、堅めの会社の本部長さんと向き合うときは当然かっちりしていきますけど、現場の方だけとの打ち合わせのときにはあんまり固くしすぎると、こちらが提案している内容もガチガチな印象を与えてしまうので、ちょっとやわらかめな格好でいくようにしています。やっぱり商社は、対面するお客様があっての業態なので。
―――でもみなさん、今日もちゃんと「脱スーツ」してきていますね。
二俣 そうなんですが、正直、自分の服選びは、面倒だなって思うこともありますよ。スーツのほうが圧倒的に楽ですね。
宮本 僕も、金曜日の朝はいつも迷います。あと、女性たちに品評会されているような…。ランチのときとかに盛り上がっているみたいですね。
吉村 確かに。その視線を感じて、スーツに戻っていく男性社員も多いですからね(笑)。
宮本 特に季節の変わり目は難しいから、金曜日にお客さんとアポイントがあるとちょっとラッキーって思います。
二俣 今日も、うちの課の若手が金曜日なのにネクタイで来てたから、チクッと言っておきました(笑)。せっかく自分が率先してカジュアルにしてきているのに、みんなが続いてくれないと、自分だけ浮き上がっちゃうよ、と(笑)。
―――クライアントありきの商社だからこその難しさを感じながらも、少しずつカジュアル化に向かって進んでいるという印象。では次は、女性の脱スーツについて、本音で語ってもらいましょう。
次回に続く
あわせて読みたい
●脱・スーツデーで働き方は変わった!?
●オフィスの雰囲気を変えるには着こなしを変える!?
●デニム通勤、スニーカー通勤は楽だけどラクじゃない、その真意とは