捺印とは?
捺印とは、署名捺印(しょめいなついん)が省略された言葉で、手書きで名前を書く「署名」と共に印鑑を押すことを指します。捺印をすることで、筆跡と印鑑の両方で本人確認することが可能です。
捺印を敬語表現にするときは「ご捺印」といいます。上司に捺印をしてもらうときは、以下のように伝えることができるでしょう。
・こちらにご捺印をお願いいたします。
・書類の裏にもご捺印いただくところがございます。ご注意ください。
また、文章で伝えるときは、省略せずに署名捺印というほうが、相手に伝わりやすくなります。例えば取引先にメールで捺印を求めるときは、次のように伝えられるでしょう。
・書類をご確認いただき、署名捺印の上、ご返送ください。よろしくお願いいたします。
・3枚目の右下方に署名捺印をしていただく箇所がございます。
署名捺印を敬語表現にして「ご署名ご捺印」と伝えることもできますが、さらに「ご返送」と繋げるとくどい印象になることがあります。「ご」が続き過ぎないように注意して、言葉を使い分けてください。
・ご署名ご捺印をお願いいたします。
・署名捺印の上、ご送付ください。
押印との違い
押印とは、記名押印(きめいおういん)が省略された言葉で、署名以外の方法で名前を記し、印鑑を押すことを指します。例えば、ゴム印で名前を記して印鑑を押したり、別の人物が代筆して名前を書き、印鑑を押したりすることは、いずれも押印です。
また、単に印鑑を押すことも押印と呼ぶこともあります。記名・署名が必要ない場合は、捺印ではなく押印といいましょう。
なお、押印を敬語表現にするときは「ご押印」といいます。例えば以下のように押印を依頼できるでしょう。
・こちらの欄にご押印ください。
・書類の2枚目の下にご押印いただく場所があります。
「ご」が重なるなど、表現がくどくなるときは敬語表現であっても「押印」ということがあります。
・ご確認後、押印していただけますでしょうか。
・押印をお願いいたします。
記名と署名の違い
署名は本人が自分で名前を書くことですが、記名は署名以外の方法、例えばゴム印などで氏名を記載することです。パソコンや代筆を用いるときも、記名といえるでしょう。
記名は代筆でもできることから、本人確認を行うことはできません。また、誰でも記載できるので、重要度の高いな書類にはあまり使用されないでしょう。一方、署名は筆跡鑑定を用いて本人確認することができるので、重要な書類には署名が用いられます。
捺印が必要な場面
捺印は、本人が自筆で名前を記して印鑑を押す行為のため、重要な場面で用いられます。
しかし、さらに重要度やケースによって、用いられる印鑑の種類が異なる点に注意が必要です。印鑑には実印と認印、銀行印などがあり、それぞれ用いられる場面が異なります。基本的には次のルールで印鑑を選びましょう。
・高額な資金が動くときは実印
・重要度が低いときは認印
・銀行関係は銀行印
高額な資金が動くときは実印が必要
高額な資金が動く取引を行う場合には、印鑑証明書の提出を求められることがあります。印鑑証明書を提出する際には、印鑑証明書に登録している実印を押すことも必要になるため、証明書と併せて用意しておきましょう。
なお、印鑑証明書は住民登録をしている自治体の役場で作成します。引っ越しをしたときは前の居住地で登録した印鑑証明書は使用できなくなるのでご注意ください。引っ越し先で早めに印鑑証明書を作成しておきましょう。
重要度が低いときは認印が適切
重要度が低い書類については実印を求められないので、実印以外の印鑑、認印(みとめいん)で問題ありません。認印とは個人が日常生活で使う印鑑で、印鑑登録されている実印以外のすべての印鑑が該当します。ゴム印のこともあれば石などを彫ったものもあります。
ただし認印を押す際に「ゴム印以外で」「インクが自動で出てくる印鑑以外で」のように指定されることもあるので、指定に合わせた印鑑を選んで押すようにしましょう。
銀行関係は銀行印を捺印する
銀行関係の書類には、銀行印を指定されることが多いです。銀行印とは銀行に口座を開設する際に届け出る印鑑のことで、口座開設者本人であることを示すことができます。
なお銀行印は、ゴム印やインクが自動で出てくる印鑑は不可とされていることが一般的です。それ以外は規定はあまりなく、名字だけや名前だけ、氏名などでも登録できます。
どの口座がどの銀行印か忘れてしまうと、銀行での手続きがスムーズにできなくなるかもしれません。複数の銀行印を保有している方は、必ず口座と銀行印の組み合わせを覚えておきましょう。
捺印の効力
捺印は、署名して印鑑を押す行為のため、押印よりも効力が上だと考えられます。重要な契約書類などに行う行為なので、捺印が必要でないときはむやみにしないほうがよいでしょう。
また、印鑑についても同様です。契約書類などの重要な書類については実印と印鑑証明書を提出することが求められるので、重要度が低い書類に対してや実印を求められていないときは使用しないようにしましょう。
書類としては最上級の効力を発揮する
記名押印と署名のみ(印鑑はなし)の場合では、後者のほうが法的効力は大きくなります。記名も押印も本人でなくてもできますが、署名は本人でないとできないため、強い効力を持つのです。
捺印(署名捺印)を行った場合は、書類としては最上級の効力を発揮します。筆跡鑑定もできるので、本人が確かに書類に記載されている内容に同意したことを証明する手段にもなるでしょう。
海外との契約では署名が効力を発揮
契約において印鑑を押すことは、限られた国のみの文化です。そのため、海外との契約に関しては、捺印も押印もせずに署名だけということが一般的といえるでしょう。また、署名だけでも十分な効力を発揮します。
ただし、海外でクレジットカードを使用する際には、署名ではなく暗証番号を求められることが多いです。普段署名でクレジットカードを利用している方は、出かける前に暗証番号を確認しておきましょう。
上手な印鑑の押し方
せっかくなら印鑑をきれいに押したいと考える方も多いでしょう。特に捺印では署名と一緒に行うため、印鑑をきれいに押していると、相乗効果で自署もきれいに見えるかもしれません。
また、印鑑を押すときは周囲の文字と重ねて良い場合と重ねてはいけない場合があります。後者の場合に重ねて押印すると、書類の再提出を求められることもあるので注意が必要です。具体的にどのような場合に重ねて良いのかについても見ていきましょう。
印鑑証明書と一緒に提出する書類の場合
印鑑証明書と一緒に提出する書類には、実印を押すことを求められます。証明書と一緒に実印も用意しておきましょう。
なお、実印を押す場合には、実印が印鑑証明書に登録されている印鑑と同一のものであることを示さなくてはいけません。そのため、名前や他の文字、線と重ならないように注意をして押してください。誤って重なってしまうと、書類の再提出を求められることもあります。
印鑑証明書が不要な書類の場合
一方、印鑑証明書の提出を求められない取引に関しては、基本的に実印は必要ありません。実印以外を押すときは、少し名前などの文字と重なるようにすることで書類の偽造を防げることがあります。
ただし「文字と重ねないでください」と但し書きがある場合や、押印欄と記名欄が別のときは、無理に文字と押印を重ねないようにしましょう。ケースバイケースで、文字と重ねるかどうか使い分けてください。
印鑑の持ち方に注意する
文字と重ねる場合でも重ねない場合でも、印鑑の持ち方を意識することできれいに押印することができます。
まず印鑑の上下を確認しましょう。会社によっては印鑑をわざと傾けてお辞儀を示すというようなことがありますが、社外ではそのようなルールは通用しません。文字の上部が真上に来るように正しく持ってください。
次に印面に汚れがついていないか確認しましょう。ティッシュや布で汚れや古い朱肉を拭き取り、余計なものがつかないようにしておきます。
印面がきれいになったら、印鑑の側面を親指と中指で挟み、人差し指が文字の真上に来るようにしっかりと固定しましょう。
朱肉の量を調整する
手にしっかりと印鑑を固定したら、朱肉をまんべんなくつけます。一度につけると濃さにムラができることがあるので、軽く何度かポンポンと叩いてつけるようにしましょう。
次に書類の印鑑を押す部分に印鑑を当て、中心を軸にして圧力をかけ、全体に朱肉の色がつくように押さえていきます。この際に指がずれると印鑑もずれるので、しっかりと固定することを意識しておきましょう。
捺印マットを使用する
硬いテーブルの上で押印すると、朱肉がまんべんなく書類につかないことがあります。印鑑を押すときは専用の「捺印マット」を使うほうがよいでしょう。
捺印マットを書類の下に敷くことで、印鑑がずれたりぼやけたりすることも回避できます。また、あまり強く押さなくても鮮明につくので、書類の枚数が多いときにも指が疲れにくいでしょう。
捺印マットにはシリコン製や天然皮革製、ナイロン製などがあります。シリコン製は適度に弾力があるので、少ない力できれいに押せるという点がメリットです。一方、天然皮革製は高級感があり、テーブルの上のインテリアにもなるでしょう。
また、ナイロン製は柔らかいので、印鑑に負担があまりかからず、印鑑が擦り減りにくいというメリットがあります。
捺印の意味を理解してきれいに押そう
捺印は署名捺印の略語なので、印鑑を押すだけでなく手書きで署名することも求められます。一方、押印は記名押印の略語です。名前を書く際は、手書きでなくても、あるいは本人でなくても問題ありません。
重要な書類には捺印を求められることが一般的です。正しい持ち方や押し方を覚え、きれいに印鑑を押すようにしましょう。
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