「長押」の基礎知識
「長押」の読み方は〈なげし〉で、昔ながらの和室の壁によくあるものです。長押には複数の種類があります。本来、長押は収納のためのものではないものの、壁面収納として後付けで取り付けるケースが増加傾向です。
はじめに、長押という言葉の詳しい意味やその種類、「鴨居」との違い、後付けで取り付ける際の注意点についてそれぞれ詳しくチェックしていきましょう。
■長押とは水平に打ち付けた材のこと
【なげし・長押】
日本建築で、柱から柱へと水平に打ち付けた材。もとは柱を連結する構造材であったが、貫(ぬき)が用いられるようになってから装飾化した。取り付ける位置によって、地長押・腰長押・内法(うちのり)長押・蟻壁(ありかべ)長押・天井長押などがある。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
長押とは、壁にある柱から柱へと水平に打ち付けてつなげた、日本建築における化粧部材のことです。もともとは柱を固定して強度を持たせるために使われる、重要な構造材でした。近年では工法の変化や発展によって長押を使う必要性は薄れていったものの、書院造りの和室にはかかせない装飾要素として残っています。
長押は和室の壁をぐるりと囲むように装飾しているのが特徴的な材です。奈良時代以降に建てられた寺院などで使われているもので、以前は上級層の住宅に使われていました。建物の格付けとしての意味もあったため、必要性が薄れた現在でも装飾として残されています。
■長押の種類
種類は複数あるものの、長押といえば一般的には「内法長押(うちのりなげし)」を指すことが多いです。長押は、「地長押」「腰長押」「内法長押」「蟻壁(ありかべ)長押」「天井長押」など、取り付ける位置によって呼び方が異なります。
これらのうち、内法長押とは開口部の上部に取り付けられている長押のことを指します。
■「鴨居」との違い
「鴨居」は長押と似たものとして知られていますが、実際には異なるものです。混同しやすいため、しっかりと覚えておきましょう。
鴨居とは、和室の襖や障子などの建具をはめ込むために上部へと取り付けられた横木のことです。建具を滑らせて開閉できるようにするために溝がついていて、レールの役割を果たします。現代では、窓枠やドアの木枠のことも鴨居と呼ばれる場合があります。
どちらも開口部に取り付けるものであるという点は同じだといえるでしょう。しかし、長押はもともと柱同士を固定させる目的で使われていたものです。鴨居の上部に長押があり、それぞれは別のものであるため注意しましょう。
■長押を取り付ける際の注意点
長押は住居にもともと付いていなくても、あとから壁面収納などのために簡単に取り付けられるものが売っています。長押を自分で取り付ける場合には、以下のポイントに注意しましょう。
・耐荷重を確認する
・負荷のかけすぎに気を付ける
・使用する材質が用途に合っているかどうかをチェックする
・とくに賃貸物件で使う場合には、壁を傷つけないものかどうかを確認する
・取り付けたい部分の壁の種類を確認し、商品が取り付け可能かどうかをチェックする
あとから簡単に取り付けられる長押は、取り外しの際に壁に跡が残りにくいような極細のピンや、ネジで固定できるものが多く販売されています。商品を取り外したあとのことまで工夫されているものが多いものの、商品に対応していない壁に取り付けようとしてしまうと、壁紙が剥がれてしまうなどの可能性があるため注意が必要です。
洋室に付けるケースも増加!長押の活用法
長押は壁面収納としてさまざまな活用ができます。たとえば、祖父母の住宅の長押に額縁に入れた賞状などを飾ってあったり、ほうきを吊るしてあったりしているのを見た方は多いでしょう。このように活用しやすい長押は、今では壁が平らな洋室にあとから付けるケースも増加しています。
長押の活用法は、以下のとおりです。
・ダイソーや無印のフックなどで見せる収納にする
・長押レールや付長押、長押ラックに物を置く
・オブジェを吊るす
それぞれの活用法をチェックしていきましょう。
1.ダイソーや無印のフックなどで見せる収納にする
ダイソーなどの百円均一や無印などで販売されているハンガー・フックを利用した場合、長押を見せる収納として使えます。フックは「長押フック」という専用のアイテムも利用可能です。長押の上部にある隙間に引っかけて、手前側のフック部分に帽子などの物を掛けて使えます。
なお、「鴨居フック」というアイテムもあります。こちらは、鴨居が出っ張っているのを利用して、挟むことで固定して使う仕組みです。
2.長押レールや付長押、長押ラックに物を置く
長押には奥行きがあるため、棚代わりとしても使えます。上部に物を置く場合には、以下に注意するといいでしょう。
・あまり重いものはのせられないため、写真立てや時計などの軽めの物を置くこと
・置いた物の落下を防止するように固定しておく
このように、上部に物を置くなどして収納を増やせる後付け長押は、長押レールや付長押、長押ラックとも呼ばれています。奥行きが狭い長押であれば、クリアポケットや吊り下げ棚を付けると物を置きやすくなるためおすすめです。
3.オブジェを吊るす
長押は、オブジェを吊るすことでインテリアとしても活用できます。飾り用の小物や、軽めの観葉植物などを吊るしたならば、シンプルなままになりやすい壁をおしゃれに飾り付け可能です。たびたび吊るすオブジェを変えることで、イベントごとや季節感などにあわせてインテリアを変更できます。
壁に穴をを空けずに取り付け可能なアイテムがあるため、賃貸物件でも活用しやすいでしょう。
長押を上手に活用しよう!
長押は、もともと柱を固定することで強度をアップさせるために使われる、重要な構造材でした。近年では、工法の変化などで長押を使う必要性は薄れていったものの、建物の格付けとしての意味もあったため、書院造りの和室にはかかせない装飾要素として残っています。
種類は複数あるものの、一般的には長押といえば内法長押を指すことが多いです。長押には、壁面収納などのためにあとから簡単に取り付けられるものも売っています。取り付けの注意点や長押の活用法などをしっかりとチェックして、上手に活用していきましょう。
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