どうしてそうなった? 中国語動詞への好奇心はまだまだ続く…
前回は、中国語のおもしろい動詞を私の経験談を交えながらご紹介しました。
今回は、先輩CAとの会話の中で出合ったおもしろ動詞を3つをご紹介します。
1. 擦化妝水 (Cā huà zhuāng shuǐ) → 化粧水は擦るもの
日本語では化粧水は「つける」ものですが、中華圏ではなんと「擦る」もの。「化粧水をつける」は「擦化妝水 (化粧水を擦る)」となり、「顔のパックする前は化粧水つけるのよ」は「敷面膜前要擦化妝水喔 (顔のパックする前は化粧水擦るのよ)」となります (台湾人はパックが大好き♡)。
肌に必要以上の刺激を与えることはシミやシワなどの原因になるといわれているため、「擦る」ことはスキンケアにおいてはご法度。それでも美肌人口が多い台湾、秘訣はひょっとして化粧水を擦りつけることなのか!? とある日ハッとした私はフライトの宿泊先で同室になる先輩台湾人CAたちのスキンケア方法をしばらく観察したことがありますが、化粧水を擦りつけている人は誰ひとりいませんでした。やっぱり化粧水は優しく手の温もりで押し入れるようにつけるほうがよさそう、です !
2. 吹頭髮 (Chuī tóu fà) → 髪の毛は吹くもの
日本語で髪の毛は「乾かす」ものですが、中華圏では髪の毛は「吹く」もの。「髪の毛を乾かす」は「吹頭髮」となり、「ドライヤーしたの?」は「頭髮吹了沒?(髪の毛もう吹いた)」となります。
これも私の経験談にはなるのですが、台湾の人は毎日必ず髪の毛を洗うという習慣がない人も多く、「私は2〜3日に1回よ」という先輩CAもいたくらい。その理由の多くは「髪の健康のため」でしたが、よく聞いたもうひとつの理由が「乾かすのめんどくさいから」。何事も効率的且つせっかちにこなす傾向がある台湾の人にとって、そもそもドライヤーをすることの目的は髪の毛を「乾かす」ことではなく「吹く」ことなのかもしれない、先輩たちと日々美容トークを交わすうちに私はふとそう納得してしまったのでした。
3. 煮飯 (Zhǔ fàn) → ご飯は煮るもの
日本ではご飯は「つくる」ものですが、中華圏ではご飯は「煮る」もの。「ご飯をつくる」は「煮飯 (ご飯を煮る)」となり、「今夜ご飯つくらなくていいの」は「今晚不用煮飯耶 (今夜ご飯煮なくていいの)」となります。
台湾ではフルタイムで仕事をしながら子育てをしているお母さんたちが非常に多く、「晚上很少煮飯 外帶比較多啊 (夜はテイクアウトが多いからご飯を煮ることは少ないのよ)」という話をよく耳にしていました。
そういえば中医薬膳学の世界では、食材や中薬には「煮る」「煮出す」という調理方法を用いることが多く、健康を意識した行動が生活のベースにある中華圏の人たちにとっては「ご飯を煮る」という言葉の語源はそんなところも関係しているのかもしれません。
▼ 台湾のテイクアウト文化についての記事はこちら
元々ルーツは同じだといわれ、今でも多くの漢字をシェアする中国語と日本語ですが、使われかたにそれぞれの文化や人々の性格の違いが現れているところには、とりわけおもしろさを感じるものがあると思うのです。
【続】
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ライター
有田 千幸
外資系航空会社のCA、建築設計事務所の秘書・広報を経てライターに。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。環境を意識したシンプルな暮らしを心がけている。プライベートでは一児の母。ワインエキスパート。中医薬膳師。家庭薬膳アドバイザー。@chiyuki_arita_official