【季節の花】スミレ
「啓蟄」の季節は頭上に咲き始める桃に目を奪われがちですが、足元には可憐なスミレの花が咲き始めます。スミレもまた、春の訪れを教えてくれる花の一つです。スミレというと深い紫色の小さな花のイメージがありますが、実は日本だけでも250種類ほどもあり、ピンク色や黄色のスミレも存在します。
可憐な姿をもつスミレですが、野山だけでなくアスファルトの裂け目やガードレールの下など、どんな場所でも成長できる力強さも魅力です。
【旬の食べ物】山菜、ハマグリなど
ワラビやゼンマイなどの山菜類も、早春に芽吹くものが多く、「啓蟄」の時期が食べ頃にあたります。煮物などの料理で食べることの多いワラビは、葉っぱが広がる前の新芽の状態を摘み取ります。ゼンマイはくるくると巻いた葉っぱが特徴的です。食べるのは丸まった若い葉の部分のみで、完全に開いた葉はかたくて食べることができません。
ハマグリも「啓蟄」の時期の旬の食べ物です。ひな祭りの定番料理として知られています。お吸い物や網焼き、和え物として食べると美味しいですね。
啓蟄の季節の風物詩
啓蟄の季節ならではの風物詩には、次のようなものがあります。
1.植物「まこも」を編んだむしろを木から外す「菰(こも)はずし」
2.立春後の初めての雷「虫出しの雷」
初めて聞く言葉ばかりという人もいるかもしれません。いずれも虫に関連し、春の訪れを感じさせるものです。ここからは、「啓蟄」の季節の風物詩について解説します。
植物「まこも」を編んだむしろを木から外す「菰はずし」
「菰はずし」は、害虫の駆除を目的に松の木に巻きつけた菰を外す作業です。菰とは植物のマコモを粗く編んで作るむしろのこと。立冬の時期に松の木の地上2メートル付近の高さに巻き付けます。江戸時代から、害虫であるマツカレハが巻きつけたの中を好んで越冬するとされたことから、春先に菰をはずして焼くことで害虫駆除をおこなってきました。
しかし近年、菰に集まっているのはマツカレハではなく、その天敵である虫であることが判明。逆効果であるとして辞めたところもあります。現在でも続けているところは、季節の風物詩としておこなっているようです。
立春後の初めての雷「虫出しの雷」
「虫出しの雷」は、二十四節気の一つである立春以降の、初めての雷のことです。読み方は、「むしだしのかみなり」または「むしだしのらい」です。
「啓蟄」の季節には天候が不安定になり、雷が鳴ることがあります。啓蟄がもつ「土の中から出てくる」という意味合いに、この季節の雷に驚いて虫が出てくる様子をかけ、「虫出しの雷」と名付けられたとされています。
「啓蟄」を使いこなして春の訪れを表現しよう
「啓蟄」は春の訪れを表現する言葉で、寒さが和らぎ土の中にいた虫たちが動き出す様子をあらわします。同じ二十四節気の一つである立春などと比べ、あまり耳慣れない言葉かもしれません。
しかし、その意味を知ると、自然とともにあった古来の暮らしを感じる趣のある表現として、きっと使ってみたくなるはずです。啓蟄を使いこなして、待ちわびた春の訪れを表現してみましょう。
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