「紺屋の白袴」の意味や読み方とは?
読み方と意味
「紺屋の白袴」は「こうやのしろばかま」、もしくは「こんやのしろばかま」と読みます。意味は、「他人のことで忙しく、自分のことをする余裕がないこと」や「いつでもできることを、ずっと放置しておくこと」です。
より理解を深めるために、まずは「紺屋」という言葉を解説しましょう。
「紺屋」とは、もとは「藍染め屋」のことをさします。次第に「染め物屋」全般のことを言うようになりました。江戸時代、紺屋は繁盛しており、ひっきりなしに仕事がきていました。仕事で忙しいために、自分の袴を染める余裕がなく、いつも白い袴を着ていることから、「他人のことをするばかりで、自分のことをする暇がない」という意味の「紺屋の白袴」という言葉が生まれたのです。
また、紺屋を言葉のたとえに使ったのは、「紺」と「白」の色の対比を用いることで、言葉の意味を強調したためといわれています。
基本的に「紺屋の白袴」は、褒め言葉ではなく、ネガティブな意味合いを含んで使われる言葉です。しかし、染料を使った仕事をしていながらも、自分の袴にはしみ一つつけず、白い袴のままであること、つまり、職人気質をさすという説もあります。ただし、こちらの意味を裏付ける例はありません。
使う時の注意点
「紺屋の白袴」と同じく、「紺屋」を使ったことわざに、「紺屋の明後日」という言葉があります。「紺屋の明後日」とは、「約束したとしても、その期日があてにならないこと」を意味する言葉。
紺屋の仕事は天候に大きく左右されることから、客が期日を聞いても、紺屋はいつも「明後日」と言うことからきています。「紺屋の明後日七十五日」と言うこともできます。
「他人のために、自分を構う暇がない」という意味の「紺屋の白袴」とはまったく異なる意味ですので、間違って使わないように注意しましょう。
実は、そのほかにも「紺屋」を使った言葉があるので、豆知識として紹介します。現代ではあまり馴染みのない紺屋ですが、これほど紺屋を使った表現があるとは、当時いかに紺屋が一般的な職だったのかがうかがえますね。
・紺屋の地獄:「紺屋の明後日」のように、紺屋はいつも約束を破るので、死んだら地獄に落ちるということのたとえ。
・紺屋の地震:謝罪を意味する「相済まない」のしゃれの言葉。地震があったことで、染料の「藍(=相)」を入れた桶が揺れ、その染料が「澄まない(=済まない)」の意味から。
使い方を例文でチェック
ここまでで、「紺屋の白袴」の意味は理解できたでしょうか。すでに解説したように、「紺屋の白袴」は、たいてい人に対して使われます。実際に「紺屋の白袴」をどのように使えばいいのか、例文を見ていきましょう。
「上司からの仕事や部下への指導で、就業時間のほとんどを費やしている課長は、自分の仕事を終業後に行っている。紺屋の白袴とはこのことだ」
中間管理職は、上司や部下の間にはさまれ、とても忙しいポジションです。他人の仕事のフォローを行うのに忙しく、自分のことは後回しになってしまう課長の状態を「紺屋の白袴」を使って表現した例文です。
「責任感の強いあなたは、なんでも自分でやろうとするけど、紺屋の白袴とならないよう注意が必要だよ」
まだ「紺屋の白袴」のようにはなっていないものの、そうなる恐れがあるという状況を示した一文です。相手を気遣ったり、注意を促したりしたい場合には、このような表現を使ってみましょう。
「マッサージ師の友達は、仕事を頑張るあまり、体調を崩してしまったそうだ。これではまるで紺屋の白袴だ」
身体の不調を改善するマッサージの仕事をしている人自身が、多忙により体調を崩してしまったことを「紺屋の白袴」で表現しています。後に似たことわざでも紹介しますが、他人に行なっていることを自分には行えていないことを意味する「医者の不養生」と、似たような表現といえますね。