似たことわざにはどのようなものがある?
「紺屋の白袴」は、現代では日常的にはあまり使われていませんが、ふだんからよく耳にすることわざで、「紺屋の白袴」と似たものがあります。代表的なことわざをピックアップして紹介します。
医者の不養生
似たことわざのなかでも、「医者の不養生」は聞き慣れた表現かもしれませんね。患者の健康を管理する医者が、私生活では不摂生な生活をしていることを意味する言葉。他人には正しいことを教えるも、自分では行なっていないことのたとえです。医者なのに自分の健康には気を使っていないこと、紺屋なのに自分の衣服には気を使っていないこと。とてもよく似た表現といえますね。
髪結い髪結わず
「髪結い髪結わず」も、他人の髪を結ってばかりで、自分自身には手が回っていないことを意味します。言葉のとおり、髪結いを仕事としているのに、自分の髪は結っていないことからきている言葉です。せっかくの技術をもちあわせているのに、自分には生かし切れていないこととしても使えます。
易者身の上知らず
「易者」とは占い師のことをさします。「易者身の上知らず」とは、他人のことはよくわかるけれども、自分のことはかえってわからないという意味です。
大工の掘っ建て
「大工の掘っ建て」とは、人のために立派な家を建てる大工が、粗末な掘っ建て小屋に住んでいること。そこから転じて、他人の世話ばかりしていて、自分のことに無関心であったり、手が回らなかったりすることのたとえとして用いられるようになりました。
「紺屋の白袴」の対義語
続いて、「紺屋の白袴」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。
我田引水
「我田引水(がでんいんすい)」とは、物事を、自分に都合のいいように言ったりしたりすること。自分の田んぼに水を引き入れるということから、このように呼ばれるようになったようです。他人より自分のことを優先する点が、「紺屋の白袴」とは正反対といえますね。
傍若無人
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」とは、人のことなど気にかけず、自分勝手に振る舞うこと。自己中心的な行動を起こして、周囲に迷惑をかけている様子がイメージできますね。
英語表現とは?
「紺屋の白袴」は、英語にも同じような表現がいくつかあります。言語は違えど、「専門的な職業なのに、それを自分に生かせていない」ことをたとえた表現の仕方は、万国共通のようです。ボキャブラリーを増やすために、覚えておいてくださいね。
The dyer’s clothes remain undyed, and the shoemaker goes ill shod.
「dyer」は紺屋のこと、「shoemaker」は靴職人のことです。直訳すると「紺屋の服はいつも染まっていないし、靴職人はひどい靴を履いている」です。「紺屋の白袴」同様、その職業と見合っていないような状態を英語で表現したものです。
The tailor’s wife is the worst clad.
この英文は「仕立て屋の妻は、一番ひどい服だ」と訳すことができます。客の服を仕立てるのに忙しく、自分の妻の服にまで構うことができないのを表現した英語です。
Specialists often fail to apply their skills to themselves.
こちらも「紺屋の白袴」の英語表現として使えるものです。直訳すると「専門家はしばしば、そのスキルを自分自身には応用できていない」という意味。例文1と2よりは、直接的な表現です。
最後に
「紺屋の白袴」について、はじめは読み方すらわからなかった人でも、語源とともに意味を知ることで、しっかりと理解できたのではないでしょうか。繁盛していた紺屋の様子から、「紺屋の白袴」という言葉を作ったとは、興味深い成り立ちでしたね。語彙力アップの一環として、「紺屋の白袴」をぜひ覚えてみてください。
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