「小夜」の2つの読み方と意味
「小夜」という言葉には2つの読み方があります。
1. 小夜(さよ)
2. 小夜(こよる)
「小夜(さよ)」は夜を意味する言葉、「小夜(こよる)」は寝具の一種である小さい夜着を意味する言葉です。2つの読み方と意味について詳しく解説しましょう。
小夜(さよ)
【小夜:さよ】
《「さ」は接頭語》よる。よ。「―時雨(しぐれ)」「―千鳥」
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
「小夜」と書いて「さよ」と読む場合は、夜という意味をもちます。小夜は「雅語(がご)」の一つであり、日常的に使われることは多くありません。「雅語」とは文献上の確かな根拠がある伝統的な言葉のことで、話し言葉である俗語の対となる位置付けです。
「雅語」である「小夜」を文章の中に含めると、単に夜という意味を表すだけではなく、風流な印象も込められます。「小夜風(さよかぜ)」のように「小夜+〇〇」を使った熟語はいくつかありますが、いずれも「小夜」を付けることで優雅なイメージに変化します。
「小(さ)」は接頭語
「小夜」に含まれる「小」は接頭語です。接頭語とは、語を構成する要素の一つである接辞のうち、語基の前に付くものです。独立する語ではないため接頭辞ともいいます。
接頭語は語調を整える役割がありますが、実質的な意味はもちません。日本語の接頭語は種類や量が少なく、文法上の性質を変化させるケースは稀です。「小夜」の場合も、夜の前に小が付いているものの、夜という言葉自体が変わっているわけではないことがわかるでしょう。
小夜(こよる)
【小夜:こよる】
〘名〙 (「よる」は「よるのもの(夜物)」の略) 小さい夜着。小夜の物。小夜着(こよぎ)。
※浮世草子・好色一代男(1682)八「衣桁(いかう)に十二の袖を懸(かけ)、こよる山をかさね、小蒲団(こぶとん)錦の峯のごとし」
(出典:小学館『精選版 日本国語大辞典』より)
「小夜」には小夜着(こよぎ)を意味する「こよる」という読み方もあります。夜着(よぎ)は寝具の一種であり、大型の着物に綿を入れて厚くしたもののようなイメージです。いわば袖のある掛け布団のようなもので、体の形にフィットするためすきま風が入らないのが特徴です。
夜着は夜の物と呼ばれるほか、サイズが大きいものから順番に大夜着・中夜着・小夜着といわれます。
「小夜」に関連する言葉
「小夜」には関連する言葉がいくつかあります。例えば、夜を意味する「小夜」の類義語として以下が挙げられます。いずれも夜に関係する言葉ですが、少しずつニュアンスが異なるのが特徴です。
・暮夜(ぼや)
・晩
・夜
・夜中(よなか)
・夜半(やはん)
・夜分(やぶん)
・夜間(やかん)(よま)
また「小夜+〇〇」のように「小夜」を使った言葉も多数存在し、一例として「小夜千鳥」や「小夜嵐」などが挙げられます。「小夜」の類義語や「小夜」を使ったその他の言葉を見ていきましょう。
「小夜」の類義語
「暮夜」は夜を表す言葉であるとともに、夜に入ったときという意味もあります。「晩」は夜という意味で使えるほか、夕方や夕暮れを指すこともあります。
「夜」はその字の通りの意味で、厳密には日が沈んでから日の出までの時間のことです。「夜中」・「夜半」・「夜分」は夜の半ばや夜ふけを意味する言葉です。
「夜間」は「やかん」のほかに「よま」とも読み、いずれも夜を表します。特に「夜間」は日没から日の出まで、夜間(よま)は夕方から次の日の朝までの時間を指す言葉です。