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2021.11.30

今、飲みたい1本は、日本最高峰のデラウェアワイン

 

日本ワインの生産量第4位の山形県。ここに位置する老舗のタケダワイナリー・岸平典子さんは、100年以上前からこの地で栽培されてきたデラウェアにいま、大きな可能性を見出しています。芳醇な香りとボリューム感のある、日本最高峰ともいえるデラウェアワインの魅力をたっぷりとお伝えします。

Text:
鳥海 美奈子
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山形で100年続く老舗ワイナリー

山梨、長野、北海道に続く日本ワインの生産量4位を誇る山形県。明治中期には早くもワイン造りが始まった、歴史ある地です。

老舗のタケダワイナリーが創業したのは1920年のこと。現在、跡を継ぐのは5代目の岸平典子さんです。

▲ 日本の女性栽培醸造家の先駆け的存在である岸平典子さん

「山形は冷涼で、昼夜の寒暖差があり、ぶどう栽培には向いた地です。ワインはフレッシュさと美しい酸、同時に熟した果実の要素も感じられるものになります」

▲ 標高150~250mに位置するぶどう畑からは蔵王連峰を望む

典子さんは1966年生まれ。玉川大学農学部農芸化学科へ進学したあと、三菱化成の青葉台研究所で微生物の研究に従事しました。家業を継ぐことはまだ決心していませんでしたが、「文学や演劇、映画が好きでバルザックやデュマ、スタンダールを生んだ国に行きたいと思って。ワインの勉強なら許してもらえると考えて、両親に留学したいと言ったんです」と、笑います。

ときは1990年。男性はともかく、日本女性でフランス留学をする人はまだほんのひと握りの時代でした。ブルゴーニュのマコン地方で栽培醸造学を、ボルドー大学でテインティングコースを修了、4年の歳月を過ごしたのち帰国したのです。

跡を継いでから続けた改革

典子さんの父・重信さんは積極的に土壌改良をしたり、欧州系ぶどうの栽培にいち早く取り組んだりと、進取の気質に富む人物でした。それでも、ワイン造りの本場フランスで修業した典子さんにとっては、「ぶどう栽培もワイン醸造も、改善すべきことだらけに感じられました」。

自分の従来のやり方を貫きたい父・重信さんとは、幾度となく激しく衝突したといいます。どんな分野の職業でも、歴史や伝統ある家業を継ぐということは、革新や改革と無縁ではないのでしょう。でも、と典子さんは当時を振り返ってこう語ります。

「自分は良いワインを造りたいという一心で、ただまっしぐらに走っていました。けれど、父という土台があったからこそ、私は新たなチャレンジができたのだと、いまになって思います。自分ひとりでは何もできないということも、ワインを造り続けるなかで学びました」

そのタケダワイナリーでは1000円台のデイリーから1万円台の高級ワインまで、さまざまな銘柄があります。いずれも美味しいのですが、ぜひ飲んでみて欲しいのがデラウェアを使ったワインです。

▲ 高級レンジのシャトー・タケダシリーズなどワインも多彩

▲ ワイナリー内にあるテイスティングルーム

▲ 質の高いデラウェアだからこそ、樽発酵・樽熟成できる

「山形ではデラウェアを100年以上にわたり栽培してきました。それはこの地域の気候や風土に合っているということ。ヨーロッパ系品種などにもさまざまに挑戦していますが、いまはデラウェアに多くの可能性を感じています」

種ありぶどうを復活させてのワイン造り

山形では生食用としても、ワイン用としてもデラウェアが栽培されています。現在、主流となっているのが種なしぶどうです。種なしは、ジベレリンにより植物ホルモン処理をすることで種ができないようにする栽培法で、いまでは多くの果物に採用されています。

生食用では、種なしぶどうは食べやすいというメリットがあり、さらに早く熟すため出荷時期が前倒しとなって、付加価値がつくという側面があります。また果実が成熟期に入った頃に出る晩腐病 (ばんぷびょう) という病気にかかるリスクも減ります。だから、いまでは多くの農家がこちらを選んでいるのです。

▲ 薄紫色をした美しい種ありデラウェアのぶどう

けれど典子さんはそこに疑問を持ち、自然本来の姿である種ありデラウェアでワインを仕込みたいと考えました。

「果皮や種からも旨みが出るので、ワインの原料としてはとても大切な要素です。近隣の農家さんに話すと、”種ありをやっていたのは祖父の代までだったから、やり方がわからない”と言われました。だから、まず自分の畑で種ありぶどうを育てて先例を作ったのです。それで契約農家さんも納得してくれて、現在は種ありぶどうを栽培してくれています」

なかでも、「ドメイヌ・タケダ デラウェア 樽熟成」は自社畑の種ありデラウェアを100%使い樽発酵、樽熟成したもの。一般にデラウェアはさらさらと飲みやすい印象ですが、種からくる成分や旨みが加わることにより骨格のある、プレミアムなワインに仕上がっています。デラウェアの常識を覆す味わいの魅力に満ちている、と断言していいでしょう。

▲ 肉料理にも対応できるボリューム感のある白ワイン

ワインはぶどうという自然の産物であり、人為的に種をなくしたぶどうに生命力が宿っているとは、やはり考えづらい。まさに岸平典子さんというひとりの栽培醸造家の精神や哲学が、感じられる1本です。

飲むと、香りにはアプリコットや柑橘系果物の皮、黒コショウなどのスパイシーな要素も感じられます。ピュアで芳醇で、バランスの取れた味わいです。

白ながらボリューム感もあるので、帆立などの貝類のほかにも鶏や豚肉料理、寒い時期にはグラタンなどと合わせてもぴったり。

初冬の食卓の傍らに、いつも寄り添ってくれるワインです。

タケダワイナリー「ドメイヌ・タケダ デラウェア樽熟成 2019白(辛口)」¥4,180(税込・ワイナリー直販価格)
問 タケダワイナリー 023・672・0040
ワイナリーの直販サイトから購入可能 

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ライター

鳥海 美奈子

共著にガン終末期の夫婦の形を描いた『去り逝くひとへの最期の手紙』(集英社)。2004年からフランス・ブルゴーニュ地方やパリに滞在、ワイン記事を執筆。著書にフランス料理とワインのマリアージュを題材にした『フランス郷土料理の発想と組み立て』(誠文堂新光社)がある。雑誌『サライ』(小学館)のWEBで「日本ワイン生産者の肖像」連載中。ワインホームパーティも大好き。

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