「いとおかし」の意味
「いとおかし」とは、平安時代に使われていた古語です。1つの単語がさまざまな意味を持つため、いとおかしの意味も多岐にわたっています。現代にも通じる「いとおかし」の意味を見ていきましょう。
「とても趣がある」「非常にかわいらしい」
「いとおかし」とは、副詞である「いと」と、多様な意味を持つ「おかし」、を組み合わせた言葉です。当時の仮名遣いでは「いとをかし」と表記されていました。
いとおかしは「とても趣がある」「非常にかわいらしい」などの意味を持ち、感動した気持ちを表すときに使われます。きれいな景色や優雅なものなど、何かに心が動かされた際に使う褒め言葉といえるでしょう。
「おかし」とは当時の美しさを表す概念ですが、非常に幅広い意味を持つ多義語です。現代の言葉に近いものを当てはめると「きれい」「面白い」「興味深い」「滑稽だ」などが挙げられます。
2つの意味がある「いと」
「いと」は副詞にあたり、後に続く言葉を修飾する役割を持ちます。いとは「とても」「非常に」などの意味に加えて、「それほど」「たいして」という否定の意味も持ち合わせています。
いとおかしが「非常に美しい」などと訳されるように、いとは後に続く形容詞を強調する役割。英単語の「very」をイメージすると分かりやすいかもしれません。
一方、打ち消しの言葉として使われる場合は「それほど~でもない」と訳されることもあります。いとにはニュアンスの異なる2種類の意味があるため、後ろに続く言葉に気を付けましょう。
ニュアンス豊富な「おかし」
「おかし」にはさまざまな意味があり、現代でも使われる「おかしい」と同様に「面白い」「滑稽だ」という意味も含まれています。
枕草子などでも見られるように、季節の様子や自然に対して使う際には「趣がある」「風情がある」と訳されるのが一般的です。
女性や子どもに対して使うときは「かわいらしい」「美しい」など。おかしは、使われる対象によって異なる意味を表しているのです。
また、「おかしきこと」を「興味深いこと」と訳すケースもあります。ポジティブな意味合いはもちろん、興味を惹かれるという意味もあるのです。
「いとおかし」の使われ方
「いとおかし」はどのような意味合いで使われる言葉なのでしょうか。平安時代の例文を使って、具体的な用法を確認しましょう。