「建前」とは?
「建前」は日常会話でよく使われる、一般的な言葉です。当たり前のように使っている言葉ですが、本来はどういう意味を持つのか、詳しく解説します。

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表向きの意見を指す
「建前」は、「人とのコミュニケーションの中で相手の立場や気持ちを考え、不快にさせないために使う原則や基本となる方針、表向きの意見」のことです。仕事や友人との関係の中で、嫌な気持ちにさせないため、きれいな言葉に変換して伝えることはありませんか?それがまさに建前です。
建前をうまく使用すれば、トラブルが起きにくく、円滑に場を進めることが可能になります。日本の社会では常識として使われることも多いため、処世術としてうまく利用する人も多いでしょう。
日本特有の文化
日本には「自分の本音を秘め、相手の気持ちを大切にする」ことをよしとし、同時に「言葉や行動の裏側に隠された本音を読み取って行動する」ことを尊いとする独自の文化があります。
これらは多くの日本人にとって、コミュニケーションの基本のように感じられることですが、自分の考えや感情をストレートに表現することが素晴らしいとされる欧米の文化とは対照的です。
相手をだます意図はなくとも、本音を隠した言動をする「建前」は、日本特有の文化であるといえるでしょう。
建前と同じ意味の言葉
建前と似たような意味を持つ言葉は、いくつかあります。
中でも「実際はともかく表面上では」という意味を持つ「表向き」は、使いやすい類義語の一つです。「表」の裏側に「本音」が隠されていることをイメージすれば、この二つが持つニュアンスがとても近いことが分かりやすいでしょう。
ほかにも、「面目(めんぼく) 」「名目(めいもく)」「方針」「路線」「主義」など、本来の意思は別にして、原理原則に沿っているという意味を持つ言葉が類義語となります。
「本音」との違い
「本音と建前」など、建前は本音とセットでよく使われます。改めて「本音」の意味を確認し、違いについても認識を深めておきましょう。

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本音はその人の本心を指す
「本音」とは原理原則や基本に関係なく、「その人のうそ偽りのない本心」を指しています。
例えば、異性として意識していない人物に「好きです」と交際を申し込まれた時、「あなたのことは異性として見ていません」とはっきり伝えるのが「本音」を伝えるということです。反対に、「今は仕事に集中しているので、交際は考えられません」と、相手の気持ちを受け止め、傷つけないように返すのが「建前」です。
本音だけだと衝突を起こす恐れも
現代は、海外の文化などに触れる機会が増えたこともあり、日本人の価値観も多様化しています。その中で、「建前=うそ」「時間の無駄」と思っている人も増えているようです。
ビジネスのシーンなど、本音で話し合った方が早くに問題解決に至るシーンは多いかもしれません。しかし、「自分」の利益のために使う「うそ」と、「相手」の気持ちを傷つけないために使う「建前」は別のものです。
「本音」だからと真っ直ぐにぶつけ過ぎれば、相手が不快に感じ、議論の前に関係がこじれてしまうこともあります。「本音」は大切なものですが、適度に「建前」を使い、円滑な人間関係を心がけたいものです。
「建前」の使い方も確認
「建前」を上手に使用することは、相手の気持ちを傷つけないために必要なことのひとつです。人間関係やビジネスをスムーズにするために、「建前」の使い方も確認しておきましょう。

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要求を通すために使う
相手のことを傷つけず、自分の要求を通したい時「建前」を使うとスムーズです。
例えば職場の飲み会など、「面倒だから参加はしたくないけど、人間関係は良好でいたい」と考えるのであれば、「本当には行きたいけれど、今日は体調が悪いので不参加でお願いします。また誘ってください」と伝えてみましょう。「本当は行きたい」「また誘ってください」と言葉を添えるだけで、相手の気分を害することなく飲み会を断ることができるはずです。
このように伝えることで「面倒だから行きたくありません」と本音で断るよりも、スムーズに自分の要求を通すことができ、その後の人間関係にも影響を与えにくくなるでしょう。
人間関係をスムーズにするために使う
「本音」と「建前」を使い分ける最大の理由は、相手のプライドを傷つけないためです。いくら正しいことであったとしても、そのまま相手に投げつけると、相手のプライドを傷つけてしまうことがあります。
誰もが大切にされ、信頼されたいという気持ちを持っているものです。まずはその気持ちに寄り添い、それから自分の思いを伝えれば、相手も自分の話に耳を傾けてくれることが増えていくでしょう。
「建前」は「人間関係をスムーズにする潤滑油のようなもの」だと理解し、心地よい人間関係のために上手に使いこなしたいものです。
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