「建立」の読み方と意味を知ろう
「建立」という漢字を目にすると「建物を建てるという意味では」と察する人も多いでしょう。表意文字である漢字は、正確な意味を知らなくてもなんとなく雰囲気は伝わるので便利な文字だといえます。
実は「建立」には複数の読み方と意味があり、それを正確に知っている人は意外と少ないようです。 現代では「建立」という単語自体があまり使われることが少なくなってきており、今では文語体か、建物の落成式などの儀式で用いられるぐらいしか聞く機会はないでしょう。
次に、「建立」の読み方と意味について解説しましょう。
「建立」には2通りの読み方がある
漢字には、大別して古代中国の「漢音」と「呉音」という発音があります。 そして「建立」には、2通りの読み方が一般的に常用されています。 それは「けんりつ」と「こんりゅう」という2つの発音です。
すなわち漢字の「建」のよみがなである「けん」と「こん」、そして「立」のよみがなである「りつ」と「りゅう」の2通りのよみがなをそれぞれ使い分けて、読み方が異なる2字熟語としているわけです。 ちなみに「建」は呉音で「こん」、漢音で「けん」と読み、「立」は漢音の「りゅう」が日本で変化して「りつ」とも読むようになったといわれています。
すなわち「けんりつ」は漢音が少し変化した発音で、「こんりゅう」は呉音と漢音の混成発音ということになります。
「建立」にある2通りの意味とは?
「建立」を「けんりつ」と読むと、建物などを「築き上げること」の意味になります。もちろん建物を建てる場合にも使われますが、「国家を建立する」という風に使用されることも多くあります。「わが国は百年前に建立された」という風に使われています。
けん‐りつ【建立】 [名](スル)築き上げること。打ち立てること。こんりゅう。「国家を建立する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
一方「建立」を「こんりゅう」と読むと、「(寺院などの)建物を建てること」「宗派を立てること」という意味になります。すなわち「けんりつ」には抽象的イメージを含んだ「築き上げる」意味を持ち、「こんりゅう」には仏教的な意味合いに用いるという使い分けがされているのです。
こん‐りゅう〔‐リフ〕【建立】 [名](スル) 1 寺院や堂・塔などを建てること。「寺を建立する」 2 心の中である物事をつくり上げること。 「兄さんは神でも仏でも…権威のあるものを—するのが嫌いなのです」〈漱石・行人〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
ただし、「けんりつ」も「こんりゅう」も、現代では一般的な話し言葉で出てくる単語ではなくなってきています。
それは「けんりつ」は「建築」や「建設」に置き換えられるし、「こんりゅう」は特別にかしこまった儀式などで使われているからです。
現代の若者に「建立」の読み方を聞いても、多くは「けんりつ」とは読めても「こんりゅう」と読める確率はかなり低いと思われます。
「建立(こんりゅう)」の使用実例
2通りの意味を持つ「建立」ですが、「こんりゅう」は寺院の建築と宗派の開闢という意味を持ち、宗教(仏教)的な意味合いが強い熟語といえます。
語感的にも「こんりゅう」にはものものしく厳粛なイメージがある熟語であり、改まったフォーマルな場で用いられる漢字熟語であるといえるでしょう。
それでは、以下に「建立」を「こんりゅう」と発音する場合の漢字の使い方と熟語について解説しましょう。
「建立(こんりゅう)」の使い方
「建立」を「こんりゅう」と読む使い方は、主に硬派な文章に使われることが多く、戦前は文語体の文章によく用いられたようです。 現代では、一般的に使われることは少なく、寺院などが建てられたことなどを示す表現として用いられる言葉といってよいでしょう。 「寺院の建立」のように用いられていることから、寺院に寄進することや寺院が寄進を募ることの意味もあります。 寺院などの建物を建てる行為や寄進行為など、具体的な事象に用いられることが主流ですが、事業の起業やものごとを決心するなど抽象的な意味に使われることもあります。