「手前味噌」とは自分で自分をほめること
「手前味噌」とは自分で自分をほめることです。
【手前味噌:てまえみそ】
自分で自分のことをほめること。自慢。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
自分で自分をほめる前に「手前味噌ですが」というひと言を入れることによって、自慢のニュアンスを和らげる効果があるため、ビジネスだけでなく、日常会話でもよく使われています。謙遜する気持ちをさりげなく表現できる便利な言葉といえるでしょう。
「手前味噌」の由来は自家製味噌の自慢
「手前味噌」の由来となっているのは自家製味噌の自慢です。もともと味噌は中国古代の食品である「醤(ひしお)」が起源とされる食品で、平安時代には貴族の間で食されていました。
鎌倉時代になって、武士の間で味噌汁として日常的に食事のメニューに組み込まれるようになった経緯があります。さらに室町時代になって大豆の生産量が増加したことに伴って、農民の間で自家製味噌が造られるようになりました。
「他の家の味噌よりも自分の家の味噌が美味しい」と自慢したことから、手前味噌という言葉が生まれたとされています。
「手前味噌」の使い方
「手前味噌」という言葉は通常、会話の前置きの言葉として使用されます。「手前味噌ですが」「手前味噌ながら」といった表現をされることの多い言葉といえるでしょう。
【例文】
・【手前味噌ながら】当社が開発したドローンは高性能なので、スポーツやコンサートの空撮をするのに最適です。
・【手前味噌ですが】私の長女は語学の才能に秀でており、五カ国語を自在に話すことができます。
「手前味噌」の間違った使い方
「手前味噌」という言葉が間違った使い方をされるケースがあります。特に多いのは「手前味噌ですが」という言葉を「つまらないものですが」という言葉と混同してしまう誤用です。
「手前味噌ですが」と言いながら、訪問先の人に菓子折やお土産を渡すのは明らかな誤りなので、注意してください。「手前味噌ですが」はあくまでも自慢をする場合の前置きの言葉です。
手前味噌を使う際の注意点
手前味噌を使う際の注意点を4つご紹介します。誤用せず正しく使えるよう、チェックしておきましょう。
手前味噌は「身近なもの」ではない
「手前」という言葉から、「身近なもの」「簡単なもの」という意味で使ってしまいがちですが、手前味噌の手前は距離ではなく「自分」を表しています。そのため、「手前味噌で恐縮ですが、近所で人気の和菓子です」など、身近なものという意味合いで使うのは誤用です。
他者に対しては使わない
「手前味噌」は「自分」に対して使う言葉です。家族や同じ組織に所属している人、物に対して使うこともできますが、社外に向けてなどあくまで他者から見た時に「自分」と同じ括りになる場合に限られます。そのため、他者の業績や他社製品などについて語る場合には使えない表現ですので注意しましょう。
卑下する表現としては使わない
「手前味噌」は自分で自分のことをほめることを表す言葉ですから、自分を卑下する表現と組み合わせて使うことはできません。自社製品や自分の自慢となるアピールポイントとともに、クッション言葉として使うようにしましょう。謙虚な気持ちも一緒に伝えたい場合は「手前味噌で恐縮ですが」と伝えると良いでしょう。
自慢のしすぎには注意する
「手前味噌」は自慢する時に使える表現ですが、自信満々さが強く押し出されてしまうと「手前味噌」をつけることがかえって相手に嫌味な印象を与えてしまうこともあります。客観的な事実をもとに伝えるよう心がけましょう。
「手前味噌」の類義語3つ
手前味噌は「自慢する」という意味の語句であり、たくさんの類義語があります。その中でもよく使われるのは「自画自賛」「自慢」「うぬぼれ」の3つです。
いずれも「自画自賛になりますが」「自慢になってしまいますが」「うぬぼれかもしれませんが」など、会話の最初に使うことで、自慢話を和らげる効果があるという点でも共通しています。それぞれの意味と例文をご紹介しましょう。
自画自賛
「自画自賛」とは自分で描いた絵を自分でほめることから転じて、自分で自分をほめるという意味の語句です。「自我自賛」と書くのは誤りなので、注意してください。
「自画自賛」は手前味噌とほぼ同じ意味ですが、「手前味噌」と違って言葉そのものの中に謙遜のニュアンスがない点が違います。
【例文】
・彼はいつも【自画自賛】ばかりしているので、彼の話を聞く時は別のことを考えるようにしています。
・【自画自賛】となってしまいますが、私の畑で育てたメロンほど甘みのあるメロンは他にはないと思います。