「食指が動く」の意味
食指が動く(読み方:しょくしがうごく)とは、食欲が起こることから転じて、物事に興味が湧く、手に入れたいという欲望が出るといった意味です。などと何かを求めることです。食指とは、人差し指を意味します。
何となく意味は知っているけれど、説明が出来ないという方も、この機会に詳しい意味を理解しておきましょう。
食欲や物欲が湧き手に入れようとすること
前述の通り、「食指が動く」とはある物事に興味を引かれる、欲が湧いて手に入れたいと思うことを表します。
辞書を確認すると、次の通り記載されています。
【食指が動く】しょくしがうごく
《鄭(てい)の子公が人さし指が動いたのを見て、ごちそうにありつける前兆であると言ったという、「春秋左伝」宣公四年の故事から》食欲が起こる。転じて、ある物事に対し欲望や興味が生じる。「条件を聞いて思わず—・いた」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
元々は食欲が起きるという意味でしたが、現在では食欲のみでなく、さまざまな欲望や興味が生じて何かを求める様子を指して使われます。
食指とは人差し指のこと
食指は、人差し指を意味します。食べ物を掴む際に必ず使う指であるからです。つまり、食指が動くとは人差し指が動くということ。
確かに、お菓子をつまむときは人差し指と親指で掴む方が多いでしょう。人差し指を使わずに食べようと思うと、少し動きが不自然になってしまうかもしれませんね。
人差し指がどのように「食指が動く」という言葉の成り立ちに関わっているかは、次の章で詳しく解説します。
「食指が動く」の語源は『春秋左氏伝』
食指が動くという表現は、中国の書物である『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』の「宣公(せんこう)四年」の章に登場する逸話に由来しています。
ある日、中国・鄭(てい)の国の子公(しこう)という人物が、君主である霊公(れいこう)の家に招かれました。向かっている途中で子公は自分の食指が動いているのに気づき、「私の食指がこんなふうに動くということは、きっとご馳走にありつけるだろう」と家臣に伝えたといいます。霊公の家に到着すると、実際に豪華なスッポン料理が準備されていたことから、「食指が動く」という故事が誕生しました。
元々は食欲を指して使われていた
前章でご紹介したとおり、食指が動くとは「ご馳走にありつける前兆」という故事から、主に食欲を指して使われる言葉でした。
そこから意味が転じて、現在では食欲だけではなく、何かをしてみたい気持ちが湧いたり、何かを求める気持ちが起きたりする様子を指しても使われるようになりました。
語源となったエピソードよりも幅広い意味で使われるようになった言葉なのですね。
「食指が動く」の誤用に注意!
この言葉は、誤用に注意しなければならない言葉でもあります。デジタル大辞泉の解説によると、実に31.4%もの人が誤った使い方をしてしまっているそうです。
代表的な間違いとしては「食指を伸ばす」が挙げられます。何が間違っているか、即答できる方は少ないかもしれませんね。言葉を正しく使いこなすために、間違いやすいポイントをあらかじめ知っておきましょう。
「触手を伸ばす」と混乱しがち
「食指を伸ばす」という表現は間違いです。
「食指が動く」が「触手を伸ばす」と時に混同されがちであるため、このような誤用が生まれてしまうようです。食指と触手の発音が似ている点も、誤解を引き起こす原因になってしまっているのかもしれません。
触手とは、イソギンチャクやクラゲなどの無脊椎動物の口周りなどにある小突起を指します。これらのいきものが触手を伸ばしてエサを取る様子から、欲しいものを求めて働きかけるさまを「触手を伸ばす」と表します。
両者の意味も類似しているため混乱しやすいですが、食指は伸ばさず、動かすものだと覚えましょう。