「弱冠」とは年齢や若さを意味する言葉
「弱冠」とは「じゃっかん」と読み、年齢や若さを意味する言葉です。もともとは20歳の男子を指す、かなり限定的な意味の言葉でした。しかし、現在は20歳の男子の呼称として使われるにとどまらず、年齢が若いという意味でも使われています。
オリンピックの表彰式などで、「弱冠18歳の快挙」というような解説を聞いたことがある人も多いでしょう。
さっそく、辞書にはどのように意味が記載されているか確認してみましょう。
【弱冠:じゃっかん】
1 《「礼記」曲礼上の「二十を弱と曰ひて冠す」から》男子20歳のこと。
2 年が若いこと。「弱冠27歳で代議士に当選した」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
古代中国の制度が由来
「弱冠」は本来、男子の数え年20歳のこと、また成年になることをあらわす言葉として使われてきました。20歳の男子を「弱冠」と呼ぶのは、古代中国の制度に由来しているといわれています。
20を「弱」と呼ぶこと、また元服して冠をかぶる歳ということで、「弱冠」は20歳の男子の呼称として用いられていたようです。
儒教の経典の1つである「礼記(らいき)」には、「二十を弱(じゃく)といい、冠す」と記載されています。
現在は年齢が若いという意味でも使われる
「弱冠」は、現在では20歳の男子だけでなく、年齢が若いことに対しても使われる言葉です。「弱冠」があてはまる年齢に、明確な基準はないとされています。
29歳程度までを指す場合がある一方で、マスコミ業界では18歳から22歳程度まで、または20代まで使用しているといわれています。さらに、13歳から34歳までの幅広い年齢が記載されている国語辞典もあるようです。
「弱冠」という言葉を使うのが適切かどうか判断が難しい場合は、たとえば「25歳という若さ」などと言い換えたほうが無難かもしれません。なお、若さを意味するため「若冠」と間違えやすいですが、誤用しないように注意しましょう。
女性に対して使うのは適切ではないとされる
「弱冠」は、近年は年齢の若さを表現する言葉としても使われるため、女性に対して使われるケースも見られるようになりました。
しかし、本来の言葉の意味が20歳の男子であることを踏まえると、女性に対して使うのは適切でないと考えられます。あえて「弱冠」という言葉は使わず、「若くして」などと表現するのが無難でしょう。
「若干」との違いとは
「弱冠」が年齢や若さをあらわす言葉であることに対して、「若干(じゃっかん)」は物の量や程度がそれほど多くないことや、わずかであることをあらわします。いずれも大きくない数字を表現するという点では同じですが、対象が「年齢」と「物」で異なります。
読み方が同じであること、また「若干」に「若」という感じが入っているため、「若干」を年齢が若いという意味で使ってしまいがちです。
しかし、「若干」の「若」は一般的な意味での若さを指す言葉ではありません。「ごとし(若し)」と読み、「のようである」という意味で使われています。
そして、「干」は1と10に分解することが可能で、「一のごとく、十のごとし」つまり「一のようであり、十のようでもある」という意味です。曖昧ではあるものの、それほど大きくない数量をあらわし、これが「若干」の由来だといわれています。
「弱冠」以外の数え年の名称
「弱冠」以外にも、数え年を表現するさまざまな名称があります。主なものを確認しておきましょう。
・5歳「志学」(しがく)
・40歳「不惑」(ふわく)
・61歳(満60歳)「還暦」(かんれき)
・77歳「喜寿」(きじゅ)
・88歳「米寿」(べいじゅ)
「不惑」や「還暦」、「米寿」は一般的に知られているため、聞いたことがあるという人も少なくないでしょう。
【例文付き】弱冠の使い方
「弱冠」が、現在は年齢が若いという広い意味の言葉として使われていることについては、既にお伝えしたとおりです。
「弱冠17歳にして」を前置きにして、若いにもかかわらず偉業を成し遂げたというように、年齢と功績のギャップを表現する場合に使われることが多いといえるでしょう。
ここからは、「弱冠」を使った例文をご紹介します。
【例文】
・【弱冠】22歳で世界チャンピオンになるという偉業を成し遂げた
・彼は【弱冠】19歳という若さで起業した
・彼は【弱冠】20歳の若さで、資産5億円を所有している
・【弱冠】の青年にしては、とても落ち着いた風情だった
「弱冠」の類語2つ
「弱冠」にはいくつかの類語があります。「若齢」も「若輩」も年齢が若いことをあらわし、「弱冠」と同じ意味で使うことができます。
「弱冠」とセットでこれらの類語を覚えることで、さらに語彙力をアップさせることが可能になるでしょう。ここでは、「弱冠」の類語である「若齢」と「若輩」について解説していきます。
【類語1】若齢(じゃくれい)
「若齢」は「じゃくれい」と読み、年齢が若いことを意味する言葉で、「弱冠」と同じ意味の類語の1つであるといえるでしょう。「若齢」を使った言葉には、「若齢化」「若齢者」などがあります。
「若年」を硬い表現であらわしたものが、「若齢」です。また、「弱齢」と書くこともあることを覚えておきましょう。「彼は【若齢】ながら、将棋の腕は一流だ」というように使います。
【類語2】若輩(じゃくはい)
「若輩」は「じゃくはい」と読み、年齢が若い者と、経験が浅く未熟である者の2つの意味があります。経験が浅いというニュアンスから、「若輩者ですが」などと謙遜の意味で使うことも多い言葉です。一方、他人に使う場合は軽蔑の意味になるため、使い方に注意しましょう。
「若輩者」が、必ずしも年齢が若い者である必要はなく、年齢が若いわけではないが経験が浅い者という意味でも使うことができます。
まとめ
「弱冠」は20歳の男子のこと、また年齢が若いことをあらわす言葉です。もともとは古代中国の制度に由来し、男子の数え年20歳の呼称として使われていましたが、次第に年齢が若いという幅広い意味で使われるようになりました。
「弱冠」以外にも「志学」や「不惑」「還暦」など、さまざまな数え年の名称があります。同じような意味の「若齢」「若輩」などの類語も覚えておくと、幅広く使えて便利です。「弱冠」の由来と2つの意味を抑え、正しく使えるようにしましょう。
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