「梔子」とは?
「梔子」は何と読むかわかりますか? 漢字だと難しく感じるかもしれませんが、多くの人がその香りに魅せられる人気の花のこと。読み方とその由来を一緒に見てみましょう。
読み⽅と由来
「梔子」は「くちなし」と読みます。「巵子」「山梔子」と表されることもありますが、辞書によると、意味は次の通り。
1 アカネ科の常緑低木。暖地に自生し、高さ約2メートル。葉は長楕円形でつやがある。夏、香りの高い白い花を開く。果実は熟すと黄赤色になり、染料とするほか、漢方では山梔子(さんしし)といい消炎・利尿剤などに用いる。名は、果実が熟しても口を開かないことによる。庭木にする。2 「梔子色」の略。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「梔子」の名前の由来は諸説ありますが、一説に「果実が成熟しても実が開かない」ために「くちなし」となったとされます。平安時代初期の「古今和歌集」の歌にも「山吹の 花色衣 主や誰 問へど答えず くちなしにて」(素性法師)という歌があります。他に「クチナワ(ヘビ)しか食べない果実」という意味が変化して、「くちなし」という説も。また「嫁にもらうくちなし」と言って、女の子がいる家は植えてはいけない風習もあったようです。
「梔子」の花言葉は?
「梔子」の花言葉は、「とても幸せです」「私は幸せ者」「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」など、ポジティブなものばかり。「梔子」の芳醇な香りと「幸せ」のイメージはぴったりです。白一色の「梔子」は西洋では「天使が地上に降ってきた花」といわれ、とても縁起のよい花といえます。アメリカでは男性から女性にダンスのお誘いとして贈られる花で、甘い香りが女性の喜びや幸せを表しているとか。花言葉の「とても幸せです」はここから付けられたといわれています。
一方、日本では、名前の由来になっている「実が熟しても口が開かない」様子から「音をあげない」「まっすぐに黙々と努力する」と吉花とされる一方で、「くちなし=くちがない」と疎まれる習慣も…。「死人に口なし」という言葉もあるため、怖いイメージをもつ人がいたのかもしれません。
「梔子」の特徴
園芸植物としても人気の「梔子」。その特徴と育て方を見てみましょう。
植物としての「梔子」の特徴
「梔子」の花が咲く季節は6~7月。6枚の花びらをもつ白い花は、咲き始めの頃は真白、咲き進むに従ってクリーム色がかり、最後はカスタードクリームのようなまろやかな色に。ウェディングシーンでのブーケとしても人気が高いようですが、花びらは傷付きやすく、花は短命なので切り花には向いていません。
園芸植物として庭に植えられることも多く、1メートル前後、大きくなると2メートルほどになり、生垣としても愛されます。葉は艶やかで濃い緑色。果実は漢方としても使われます。
種類も様々で、少し小ぶりな「コクチナシ」「ヒメクチナシ」、八重咲きで香りの強い品種、花が黄みをおびた品種、葉が丸みをおびている品種も。独特の甘くてエキゾチックな香りには、リラックス効果があるともいわれています。
「梔子」は日本では静岡より西、海外では中国、台湾、インドシナが原産。19世紀にアジアからヨーロッパに渡ったとされます。ヨーロッパではこの純白の甘い香りのする花が気に入られ、香水の原料となったり、様々な香り付けに利用されたようです。
「梔子」の育て方
「梔子」は、園芸用としても育てられることが多い植物。育てるときには何に注意すればよいのでしょうか。
植え付ける時期や土は?
「梔子」の植え付けは真夏と真冬を避けた、春か秋の気候の良い時季に。通気性、保水性が高く、肥沃な土壌を好むので、植え付け前に腐葉土をたっぷりとすき込み、肥沃な土壌を作りましょう。鉢植えの「梔子」は市販の培養土を使えばOKです。
剪定のタイミングは?
花が終わった直後に剪定すると「梔子」の花を翌年も楽しむことができるように。花後に生長した枝の先端に、翌年の花芽がつくためです。翌年も香りの良い花を楽しむなら、早めに剪定をしましょう。風通しも良くなるので、高温多湿による蒸れ対策にも効果的です。
肥料を与えるときは要注意
過肥すると病害虫の被害にあいやすいため、肥料は控えめに。花が終わった後のお礼肥として緩効性肥料を適量与えるとよいでしょう。「梔子」の病害虫による被害には、すすを被ったように葉が黒ずむ「すす病」や「オオスカシバの幼虫による虫食い」などがあるため、注意が必要です。
「梔子」は何に使われる?
「梔子」は花を愛でるだけでなく、古くからその実が活用されてきました。どんな風に使われてきたかを説明します。