「おすすめ」の漢字はお勧め・お薦め・お奨めの3つ
「おすすめ」という言葉は、「おすすめ」と平仮名で表記したり、「オススメ」と片仮名表記したりすることが一般的です。しかし、本来は漢字で表記できる言葉で、意味によって次の3つに使い分けられます。
いずれも音は「おすすめ」で、相手に何かをするように働きかける点でも同じですが、利用する状況や意味が異なります。それぞれの「おすすめ」について例文を通して見ていきましょう。
「お勧め」を使う状況と例文
「お勧め」は、相手に対して行動やものをすすめるときに使います。「勧誘」という言葉からもわかるように、自分が経験したことを相手もするように働きかけるときに使われることが多いです。たとえば、次のように使います。
・ドライヤーを〇社のものに替えたら、髪の毛にツヤが出るようになった。お勧めだよ。
・このお店のフレンチフライは、お勧めだよ。単品でも食べたくなるほどおいしい。
自分のお勧めだけでなく、相手のお勧めについて話題にすることもあります。
・どのドライヤーがお勧めですか?
・お母さんがお勧めだっていうから行ったのに。思ったほど面白い映画じゃなかった。
なお、自分が相手に勧めるときの「お勧め」は謙譲語ですが、相手が勧めるものについての「お勧め」は尊敬語です。
「お薦め」を使う状況と例文
「お薦め」は、人や物を選ぶときに使います。「推薦」という言葉からもわかるように、優れている人や物を他人に選ぶように進言するときに用いられることが一般的です。たとえば、次のように使います。
・どれか1冊だけ無人島に持っていくなら、この本がお薦めです。
・チームリーダーには、〇〇さんをお薦めします。年齢はチームで一番若いですが、統率力があり、実績も優れています。
「お奨め」を使う状況と例文
「お奨め」は、すすめるときだけでなく、励ますときや助けるときにも使う言葉です。「奨励」という言葉からもわかるように、優れた点を模範として、同じように行動するように人に促す際に使われることがあります。たとえば、次のように使います。
・疲れているときでも、毎日トレーニングをすることをお奨めする。続けることで自信も体力もつくはずだ。
・どの予備校に行くか迷ったら、〇〇がお奨めだ。実際にわたしも〇〇で現役合格した。
“おすすめ”の意味を示す敬語表現
「おすすめ」という言葉は、自分のおすすめを相手に伝えるときは謙譲語、相手のおすすめを尋ねたり紹介したりするときは尊敬語になるため、いずれにしても敬語表現です。しかし、単に「おすすめです」というと、丁寧ではあるもののぞんざいな印象になるかもしれません。
より丁寧な敬語にするためにも、「おすすめです」以外の使い方を覚えておきましょう。おすすめや類似する言葉を使った敬語表現としては、次のものが挙げられます。
それぞれの使い方やニュアンスについて見ていきましょう。
おすすめします
「です」は助動詞で、名詞や副詞などの後につけて、断定の意味を示します。「である」や「だ」の丁寧表現のため、相手に対して失礼にはなりませんが、語調が強い印象を与えるため注意が必要です。
一方、「します」も助動詞ですが、尊敬の意味を示します。そのため、目上の人やビジネスシーンで「おすすめです」というのが憚られるときでも、「おすすめします」なら、受け入れられやすいでしょう。
・こちらの商品をおすすめします。
・髪のまとまりが気になるときには、このトリートメントをおすすめします。
ただし、尊敬の表現であっても、あまりにもしつこく「おすすめします」と連呼するのは、押し売りのような印象となってしまうかもしれません。ここぞというときに1、2回、静かなトーンで「おすすめします」というほうが効果的でしょう。
おすすめいたします
「いたす」は「する」の謙譲語で、聞き手に対する敬意を示す言葉です。「いたします」の形で使われることが一般的です。そのため「おすすめいたします」といえば、相手に対する敬意を丁寧に示し、目上の人やビジネスシーンでも失礼な表現にはならないでしょう。
ただし、何度も熱い調子で「おすすめいたします」というと、押し売りのような印象になってしまうかもしれません。程度をわきまえ、ここぞというときに静かなトーンで「おすすめいたします」と伝えましょう。
・どちらにするか決めかねるときは、直感で選ぶことをおすすめいたします。
・こちらの商品をおすすめいたしますが、合わないと思われるときは、お好きなものをお選びください。
ご提案いたします
「おすすめ」は、基本的には自分がよいと思うものを相手にすすめることです。相手から見れば、意見を押し付けられているともいえるため、場合によっては使わないほうがよいこともあります。
押し付けがましくならないように意見を伝える言葉として、「提案」を使ってみてはいかがでしょうか。「提案」に、聞き手に対する敬意を示す「いたします」をつなげて「ご提案いたします」と表現すれば、相手も負担なくこちら側の意見を聞いてくれるかもしれません。
・〇〇社の食器洗い乾燥機をご提案いたします。おしゃれな方にはぴったりのデザインです。
・オールホワイトの着こなしをご提案いたします。難易度は高いですが、今年らしいコーディネートです。
推奨いたします
「お奨め」の意味で「おすすめ」を使うときは、「推奨」に「いたします」をつなげて「推奨いたします」と表現してみてはいかがでしょうか。
・艶やかなお姿に加賀友禅を推奨いたします。
・マスクのご着用を推奨いたします。
漢字を正しく使い分けよう
おすすめは平仮名や片仮名で表記することが多いですが、ニュアンスごとに漢字を使い分けられます。
しかし、いずれも人に何かをすすめるという意味は同じのため、使い分けが難しいと感じるかもしれません。間違った漢字を使う恐れがあるときは、平仮名・片仮名表記のほうが無難でしょう。
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